推手の時推していくと、その圧力を脚下に落とせない。 站樁
功をしてもらっても腕に触ってみると、萎えていて腕と背中が繋
がっていない。 逆にガチガチに固まって仕舞って鉄の塊のよう
になっている。 套路を打っている時動きを阻害すると、その時
点で動きが止まってしまう。
これらは心や身体が、いわゆる「太極拳モード」に入ることな
く太極拳(站樁功・套路・推手)をしているようにしか見えませ
ん。
「太極拳モード」に入るというのは、
①、心も身体も鬆が出来ている。
②、五体が繫がれていて掤勁が備わっている。
③、身体に外圧が掛かると、脚底下が得られる。
が出来る状態になることをいいます。
「太極拳モード」に入るには、次の四つの事をします。
①、膻中のツボを下げる。
②、関節(特に肩関節)を拡げる。
③、お腹を寛げる。
④、足首を緩める。
これらの一つでも出来ていなければ、目的が達成出来ません。
四つ共出来ている必要があります。 大きく大きく息を吸って大
きな溜め息を吐く事で、一瞬にして四つのことが出来ますので試
してください。 上品に溜め息を吐くのではなく、鏡を見て膻中
がストンと落ちるように、また肩がストンと落ちるように溜め息
をついてください。
「太極拳モード」を阻害する要因としては
①、身体を固める。
②、腕の力を使う。(いわゆる腕力のこと)
③、踏ん張って足首を固める。
④、肩関節を縮める。(肩が揚がる)
「太極拳モード」に入ることを、最低でも太極拳(站樁功・套
路・推手)をしている間は保ってほしいのですが、出来れば生活
をしている常時このモードに入ることをお勧めします。 普段か
らこのモードが備わっている人は、「あの人は功夫(カンフー)
が身に付いている人」になります。
馬長勲老師口述の本「太極拳を語る」において、”黙拳”を語っ
ている箇所の一節に『私が先生の家に行くと奥様が言った「そこ
に坐って、話をしないで。 先生が『黙拳』が終わってから話な
さい」。 楊先生は横になって黙拳をしていた。 奥様が言わな
かったら、私は昼寝をしていると思っただろう。 先生は毛布を
掛けて、横向きに横たわり、ゆったりとしておられた。 実際こ
れで拳を練習しているのだ! この時、あなたが先生を少し押し
たら、あなたはきっと遠くに飛ばされたに違いない。ーーーーー
中略ーーーーーこれは「合手勁」で「会う」とその感覚がある。
それは一種の勁の路で練習していない人には理解できない。
(訳注:「合手勁」とは体中が動くこと、一動全動のこ
と・・・・・馬駿先生の解説)というくだりがある。
これぞ横になりながら「太極拳モード」に入っていることの現
われです。
「人が触れるか触れないうちに、飛ばされる。」と言うことの
メカニズムがこれです。
ご精進を!!