不況で強くなる企業に投資する──「セクター1位を買う」という生存戦略

投資で迷った時に、私は「そのセクターの時価総額1位を買う」というシンプルな基準を使うことがあります。
これは単なる“安心感”の話ではなく
世界経済が不安定になった時に生き残るための戦略
でもあります。
なぜセクター1位が強いのか。
その理由を、実際の企業例を交えながら整理してみたいと思います。

■ 不況になると「強者がさらに強くなる」構造が働きます
世界経済が悪化すると、企業間の格差はむしろ拡大します。
理由はシンプルで、資本力の差が経営判断の自由度を決めるからです。
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資金調達力
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設備投資の継続力
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人材確保力
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M&Aを仕掛ける余力
これらはすべて「規模の大きい企業」が圧倒的に有利になります。
過去の実例を見てみましょう。

■ 【例1】リーマンショック後のトヨタとスバル
大企業は“不況で攻める力”を持ちます
リーマンショックで世界中の自動車需要が蒸発した時、 トヨタも赤字に陥りましたが、財務基盤が強固だったため倒産リスクは低い状態でした。
一方、スバル(富士重工)は単独での生き残りが難しい状況に追い込まれました。
その結果として起きたのが、
トヨタがスバルを子会社化するという“強者の動き”です。
不況で弱った競合を取り込み、 景気が戻った時には より巨大で強力な企業として復活しました。
これは典型的な「強者が不況でシェアを奪う」構造です。

■ 【例2】クアルコムとインテル
規模が逆なら、そもそも買収は成立しません
昨年、クアルコムがインテルを買収するという報道が出たことがあります。
しかし現実的には、企業規模がまったく釣り合っていません。
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インテル:売上・資産・設備投資、すべてが桁違い
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クアルコム:技術力は高いものの、規模はインテルの半分以下
この関係では、 「小が大を飲む」買収は不可能です。
つまり、不況になればなるほど、 生き残るのは“規模の大きい側”であり、吸収されるのは“小さい側” という構造がより強く働くのです。

■ 不況でも攻められる企業の例(セクター別)
輸送用機器 → トヨタ
銀行業 → 三菱UFJ
保険業 → 東京海上
半導体材料 → 信越化学
卸売業(総合商社)→ 三菱商事
いずれも「不況でも攻めに転じられる企業」であり、 セクター内で時価総額トップ、かつ財務健全性が高い企業です。

■ なぜ信越化学だけ「化学」ではなく「半導体材料」と書いたのか
セクターの1位を買うという戦略は、場合によっては使いにくいこともあります。
例えば、上記の信越化学は本来「化学セクター」に分類されます。
しかし化学セクターは範囲が広すぎて、同じカテゴリにしてしまうと投資判断がブレやすいのです。
化学セクターには、
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汎用素材
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機能材料
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電子材料(半導体向け)
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医薬・バイオ
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農薬・肥料
など、まったく異なるビジネスモデルが混在しています。
信越化学はその中でも 「半導体材料」 に特化しており、 株価の動きも「化学」ではなく 半導体業界の構造的成長 に連動します。
だからこそ、 化学セクターの1位として扱うより、「半導体材料のトップ企業」として扱う方が投資判断として正確 という理由で、あえてセクター名を変えて書きました。
こういったことが、意外に多くあるのです。

■ 化学以外にも「セクター1位戦略」がとりづらい分野がある
化学は典型例ですが、同じようにセクター分類が粗すぎて 「1位を買う」戦略が機能しづらい分野は他にもあります。
● 情報・通信
通信キャリア、SIer、ソフトウェア、ゲームなどが全部同じ扱い。 → 事業内容がバラバラで、1位=代表企業にならない。
● 小売業
コンビニ、スーパー、EC、アパレル、ドラッグストアなどが混在。 → 業態ごとに成長性が違いすぎる。
● サービス業
ホテル、外食、人材、教育、広告など“何でも入る”雑多セクター。 → セクター分類として粗すぎる。
● 電気機器
家電、FA機器、電子部品、半導体装置が全部同じ扱い。 → 需要ドライバーが全く違う。
こうしたセクターは、 用途別・需要別に再分類しないと、1位を買っても本質を外す可能性が高い という特徴があります。

■ まとめ:セクター1位戦略が有効なシチュエーションは?
セクター1位を買う戦略は、 「不況で生き残る企業に乗る」という意味で非常に合理的です。
ただし、 セクターの定義が広すぎる場合は、1位を買っても本質を捉えられない。
化学、情報・通信、小売、サービス、電気機器などは、 事業内容があまりにも多様で、同じセクター内でも需要ドライバーが全く違います。 こうした“雑多セクター”では、用途別・需要別に再分類し、 その中の「真の1位」を選ぶ方が精度が高くなります。
一方で、 セクターの定義がはっきりしている場合には、この戦略は非常に強力に機能します。
たとえば、
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輸送用機器(自動車)
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銀行業
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保険業
といったセクターは、事業構造が比較的明確で、 「そのセクターの1位=構造的な勝者」であるケースが多いです。
こうした明確なセクターでは、“迷ったら1位を買う”というシンプルな戦略が、不況でも高い生存率と回復力をもたらす という強みが発揮されます。
また付け加えると、余力のある場合には、1位に加えて、成長力の高い2位や3位を持つというのが分散投資として効果が高いと思われます。
皆さんが投資する際に参考になれば。




