
長期投資では株は下がったほうが嬉しいみたいなことを前回書いたのですが、長期投資前提のインフルエンサーはよく同じことを言う一方で、市場の暴落を残念がったりもします。
これって矛盾しているじゃんって一見思うのですが、これは半分正解で半分間違い。
なぜなら暴落にはいくつかの種類があるからです。

ケース1
実体経済とは全く無縁で思惑のみで下落するケース。
瞬間的に下げて短期間で戻るフラッシュクラッシュなんていうッ形で現れたりする下げですね。
去年の8月の日経の4400円の下げなんかは、日銀植田総裁の利上げ発言が、株価が過熱気味なポジションにあったこともあり、景気悪化の思惑が膨らんで下げた意味合いが大きく、ファンダ的に見れば、何で下げたの?という意味のない下げ。
こういう下げは長期投資するうえでは、欲しい株が安く、つまりは利回り高く買える、下がって嬉しい下げになります。

ケース2
経済の悪化をネタに売り仕掛けられて下落するケース。
機関の売りが、個人のパニック売りを巻き込んでオーバーシュートして実体経済以上に下げます。
2022年にシリコンバレーバンクが破綻したのを契機に、一部の銀行が連鎖破綻。
金融不安が広がって、金融株を中心に下落しました。
これは一部セクター(このケースでは金融株)においては実体の悪化を伴っていますので、1のケースとは違って持ち株の金融株については実際の業績悪化を伴ってダメージ喰らう可能性がありますが、市場が全体的に必要以上に下げてくれるなら嬉しい買い場になります。

ケース3
実体経済が大幅に悪化し長期で株が下げ続けるケース。
実体経済が大幅に悪化するため、下げ幅も大きくなって下げる期間も長期化します。
影響は限定的と思われていたリーマンブラザーズの破綻が、世界経済に大きく影響を及ぼしたリーマンショックのような下げ。
これですら長期で見れば買い場ではありますが、回復の前に持ち株が紙切れになるようなリスクや、そこまで行かずとも持ち株が減配や無配転落になる可能性が出てきます。
インカムを狙っている投資で配当がもらえないのならそれは意味のない投資になってしまいますから、こういう下げになってくると、長期投資であっても起こってほしくない下落と言えます。

ケース4
経済が順調なのに、政策のミスなどで経済を悪化させるケース。
どこかのおじいちゃん政治家のわけわからん思い付き政策で経済を悪化させる場合、例えば変な関税とか、馬鹿な関税とか、頭悪い関税政策なんかですね。
関税政策抜きにしてもリセッションの可能性は米国に既にありました。
ただそれをパウエルFRB議長がソフトランディンクさせようと頑張って、それがどうやら実を結ぶかもという雰囲気になっている中での、今回の関税です。
ケース2で済む可能性が高かまっていたものが、ケース3になるかもしれない。
端的に市場の乱高下はこういう不安の表れです。
ケース3になる可能性がある下げは、当然長期投資においても望まない下げです。

このように下げるにしてもいくつかパターンがあるのですが、その多くが1や2のケースで、3のケースについては5年に1度や10年に1度の割合で訪れます。
1や2についてはもう、毎年のように訪れますから、これらの下げの多くは買い場ということになります。
問題は今の下げが1~3の中でどれなのか?というのが多くの場合後になってわかるということ。
1や2の下げというのは、ある意味下げ相場を作りたい機関投資家の演出に、個人投資家が騙され、結果として下落すると、今度は信用で売買をしている投資家のロスカット(追証)が始まり、下げを加速させていきます。
信用の追証というのは、大体30%の下落で始まります。
多くの信用取引をしている投資家は、追証が発生する前に損切しようと動き始めるので、20%を過ぎて下げ始めたころから値動きが加速していきます。
実感として去年8月も今の相場も、大体そんな感じですよね?
これは、急激に何かが悪化して下げたわけではなく、下げのチキンレースが行われているだけなのです。

しかし演出されたチキンレースと思っていたところが、そうではなかったということが時としてあります。
リーマンショック時なんかも、当初多くのアナリストが、これは全体に波及するようなものではなく限定的と言っていましたからね。
なので、1や2だったと後でわかったのに買えなかった、という機会損失をしないように、まずは買うこと。
そして、下げている間にも時間の分散をして買い、気付いたら1でも2でもなく3のケースだったとしても、それでも買い下がれるような余力を計算しながら買うことが大事です。
とは言え8月の下げのようなフラッシュクラッシュでは、大きく下げたその日がセリングクライマックスということもあり、下げたのを見てから買いの検討を始めたのでは買いそびれてしまいます。
なので、大体の目安としてこの辺まで下げるようなら買い向かおうと事前に決めておくことが大事です。

例えば目安の一つは、上記した30%の下落です。
追証発生に怯える信用取引組が、損切ラインに据えるのが-30%とすれば、実際に売り逃げるのは-30%よりも手前です。
ですから、日経が25%下がったら買い向かうとか、その程度のラインをターゲットに据えて置き、狙った個別株の値段は見ずに買う。
もしくは買いのターゲットは、日経平均PERの13倍程度からというのも一つのラインです。
日経平均の動きを長期で見ると、通常PER13~16倍のレンジで動いており、強気相場の時には17倍程度まで上がる一方で、経済ショックでは11倍程度まで売り込まれます。
ですから、ケース1や2のような下げであればPER13倍程度で下げ止まる可能性が高いと想定して、この辺をターゲットに据えるわけです。
算出方法については
株価=PER×EPS
ですから、当日の日経平均EPSがわかれば、それにPER11~16の数値を代入すれば、株価の算出が出来ます。
日経平均のEPSはネットで検索すれば当日の物が出てきます。
僕の場合はこちらを使っています↓
フラッシュクラッシュの起きる場合には、じっくりと考える時間がないことがありますから、こういうベンチマークの水準を頼りに買うというのは一つの戦術です。

で・・・
問題なのはケース4ですよね。
一個人が人為的に経済を悪化させようとしている(本人にその気がなくても)のは非常に問題で、これが元で株価が下落し、それが長引いてケース2で済んだはずの経済が、ケース3に変わってしまうなら、これほど馬鹿なことはありません。
就任当初はウクライナ戦争を終わらせてノーベル平和賞を狙っているとか言われていましたが、彼のためにはイグノーベル経済学賞を新設してあげる必要があるかもしれません。
さておき
市場ではこのところ、ベッセントプットという言葉も生まれ始めているようですが、ベッセントさん、パウエルさん辺りに頑張ってもらうしかないようですね。
