娘と頭を突き合わせて、カルトをじっくり見てみる。日本のレストランみたいに
母に「何か食べたいものある?」と聞けないのが少し辛い。迷っているとギャル
ソンがやって来て「本日のお勧めはいかがですか?」と言う。お勧めは「子羊の
ソテー」と「×××のサラダ」。せっかくメニューが日本語でもギャルソンはフラン
ス語か英語なので、私はしっかりと分からないままに〝それ”を頼んだ。
前菜には母が気に入っていたキッシュ。そして「一度食べてみたい。」
と言う娘のためにエスカルゴ。そうだっけ?彼女は前に一度も食べたこと
なかったろうか。もう、忘れかけている私。飲み物はミネラルウオーター
を頼むと「Vittel」(ヴィッテル)を持って来た。飲んでみて、慣れてし
まったのかエビアンと変わらないように思う。前は硬水がきつくて好きじ
ゃなったはずだが。
このミネラルウオーター、1本で4.80€(約670円)。
どこもこんなものだが、高い
まず、エスカルゴ。大丈夫だった。普通に美味しい。3人で12個を頼ん
だから、母にも「食べて、食べて。」と勧める。ところが母はニヤニヤし
て「やめとく。」と言う。「えっ、なんで?美味しいよ。」と言っても頑
として食べようとしない。「とりあえず、1個食べてみなよ。」と言った
ら、おずおずとフォークを出した。そして食べてから、もう絶対いらない
と首を振る。「へんだねぇ、一番最初にパリに来た時にも食べたはずだけ
ど。」と私が言っても、また苦笑。「えっ、カタツムリだから?まさか、
そう?」と聞くとかすかに頷いた。ありゃー、そうですか。「食用のカタ
ツムリだから、庭にいる小さいのと違うんだよ。」と言っても無駄だろう
と、思った。
ニンニク・パセリバターのエスカルゴ
12個で17€(約2,380円)
もう一つの前菜、キッシュ・ロレーヌ。
野菜たっぷりが母のお気に入り
食べ終わった頃に出てきたメインを見て、私は勝手に“これは子羊のセ
ットに付いて来たサラダ”と勘違いする。だからいつまで待っても、子羊
が来ない。ギャルソンを呼んで、今度は英語オンリーで会話。そしてやっ
と分かった。出て来て、既にほとんど食べてしまっているこの料理名は「brandade」(ブランダード)だった。
南フランス、ランドック地方の名物。マッシュしたポテトの中に「何だ
ろうね、これ。」「そうだね、何か入っているよね。」「お母さん、分か
る?」「蟹じゃないし、もしかして帆立?」と口々に言っていたが。入っ
ていたものは料理の名前を聞けば、即分かる。鱈だ。北海道名物の鱈。ど
うりでただのポテトじゃない旨さだった。「お母さん、鱈の味が分からな
かったの?」と聞きたいところを我慢する。間違ったのは私だ。これにも
野菜がたっぷりなので、ただのサラダかと勘違いしてしまった。ブランダ
ードねぇ、久しく食べてなかったから名前も忘れかけていた。子羊はギャ
ルソンが「フィニッシュ。」と言うのだから、もう終わりらしい。人気が
あるのだろうか。食べてみたかった。
疑心暗鬼で食べなきゃ、もっと美味しく感じたかも
肉類を食べていないので、なんとなく満ち足りた気分から遠い。そこで、
またカルトを持ってきてもらった。そしてガッツリと行くことにする。牛
のフィレ肉を注文。その際に「一つで。」「小さいから二つがお勧め。」
と私とギャルソンで意見が食い違う。かなり強引。まぁ、3人だからなん
とかなるだろうと2皿を頼んだ。出てきたお皿は予想した通りに、多過ぎ
た。フィレだからいいだろうと思ったが、1つにした方がみんなの満腹度
が丁度良かったのにと悔やむ。しかも日本のフィレのように超柔らかいわ
けでもない。母にナイフで小さく切って渡しながら、肉を呑み込めるか心
配だった。なんとか食べ切って、会計に。ギャルソンが「デザートは?」
と聞くからお腹がいっぱいのジェスチャーをする。もう!デザートも楽し
みにしていたのに、って気持ち分かります?と言いたかった。
これは一皿分。あまりにも多いのでポテトは堂々と、
ナプキンに包んでお持ち帰りにした
アルコールを飲めない私達は(母は飲めるが要らないと言うので)、途
中で飲み物を追加した。これがまた、すごく素敵だった。しかもミントは
とっても元気の良い葉を使っている。名前も面白い。全体的に、ブラッセ
リ-の料理としては100点満点の70点を付けたいと思う。肉が固いのはフラ
ンスだからと割り切れば、どの料理も外していない。星付きのフレンチの
ようにはいかないが、ごく普通に美味しい。
レモンとミントを使った「Aqua Lemon」(アクア・レモン)
本当にフレッシュ!
こちらのネーミングは「Vitamine C」(ビタミンC)
ちょっとふざけている?