パーキンソン病に対する手術の効果について | ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」

さて、何回か話を続けてきて、途中になっていたパーキンソン病の話を続けます。


今回はパーキンソン病に対する手術の効果についてです。


手術が脳に電極を挿し込むものであることはこの間書いた通りです。


その手術にどのような効果があり、

そしてどういった患者さんに対して有効かを、書きたいと思います。


というのも、この手術は、


全てのパーキンソン病の方に対して有効な訳ではないからです。


どんなパーキンソン病の症状も良くすることのできる、

魔法の治療では決してありません。


しかしながら、

適応をきちんと考え、適した患者さんがその手術をうければ、、


きちんとメリットを享受することができる、そういう治療です。


では、

どういった方にこの治療が有効か、


それを書いていこうと思います。


まず大前提として必要なのは、

パーキンソン病の治療薬が有効な状態でなければなりません。


治療薬はドーパミン製剤というものが基本ですが、


この治療薬に対して反応性のある患者でなければなりません。


そうでなければ手術による電気刺激治療も効果がないからです。


薬は効くけれども、

薬が切れてしまうと症状が強くあらわれ、そして薬の有効な時間もも次第に短くなってしまっている、


そんな方にこの治療は効果があります。


というのも、

この治療は薬が効いていない、いわゆる”オフ”の時の症状を改善するのが主な効果だからです。


逆に、

この電気刺激治療を行ったからといっても、


薬が効いている時、つまり”オン”の時に薬のマックスの効果以上の上乗せの改善効果があるわけではありません。


あくまで、薬が効いていない時の症状を底上げして、

いわば、常に薬が効いているような状態にするのが、


この電気刺激治療の効果です。


ただ、全体的に底上げの効果はありますので、

電気刺激を行えば、薬の量を減らすことはできます。


つまり、薬と電気刺激で得られる効果のマックスは、

電気刺激を行ったとしても薬だけでも、かわらないのですが、


電気刺激を行う分、薬の量を減らすことは出来るのです。


薬を減らすことにどのようなメリットがあるか?ということですが、

実はこれも、この電気刺激治療が行われる一つの適応のなのです。


というのも、

薬は量が増えると、


体が意図せずに動いてしまう、ジスキネジアなどの副作用を起こすからです。


他にも幻覚を見たり、他にもさまざまな精神症状を起こすこともあります。


電気刺激を行うことによって、薬の量を減らし、

副作用を減らす、というのも目的の一つなんですね。


薬はきくんだけども、

どうも副作用が出てしまって、


という患者さんもこの治療の良い適応と言えるでしょう。


あとは、

この電気刺激を行うための手術、


行う時に大切な要素として、タイミングがあります。


というのも、さきほど書いたとおり、


この治療は薬が効くうちに行わなければならないからです。


パーキンソン病は症状が進行すると、次第に薬も効かなくなっていきます。


そうなってからではこの電気刺激治療も効果が薄いということになります。


あくまでそうなる前の底上げとして治療を行い、

生活の質を上げることが目的ですので、


遅すぎては意味がないのです。


また、体に機械を埋め込むというリスクがある以上、

そのメリットを最大限長期間得られる患者が受けるべき治療です。


そういったことを考えると、

パーキンソン病発症から10年程度まで、


また、

できれば70歳以下で治療を受けるのが望ましい、と考えられています。


だから理想的には、

60歳くらいで発症した方が、70までに手術を受けると良い!


ということになりますよね。


近年発表された研究結果でも、

発症後7年以内に手術が行われた場合の方が、


明らかにメリットがあることが示されています。


75歳を過ぎてから、この手術、というのは、

やはり推奨されるものではありません。


そういった訳で、

やはりこの手術は適した患者さんに適したタイミングで行わなければ、


メリットが十分に得られないのです。


ただ、マッチしている方にはやはりとても有効な治療であることも間違いないのです。


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