除脳硬直、瞳孔散大は,もう手遅れか?? | ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」

8月は何故か例年になく異様に忙しくて、
随分更新が遠のいてしまいました。

今回は、

見慣れない単語の並んだタイトルかもしれません。



除脳硬直という言葉を知っていますか?



恐らく、
一般的には見慣れない言葉だと思います。

瞳孔散大に関しては、
まだ一般的にも浸透している言葉かもしれません。



これは読んで文字の通り、
眼の瞳孔が開き、散大した状態のことを言います。



除脳硬直という状態はどういう状態か?
というと、

両手はまるでリレーの選手がバトンを受け取るときの体勢のように反り返り、
両足はつま先までぴんと伸びた状態で、

全身の伸筋郡に力が入った状態です。



痛みなどの刺激に対して、この姿勢をとると、
除脳硬直あり、となります。



これは、
言葉で説明するよりも絵で見た方が分かりやすいかもしれませんので、

下記にグーグル検索で拾ってきた一般的なイラストを載せます。

ある脳外科医のぼやき


一目見て、
異常な状況ということは分かると思います。

隣の画像にある除皮質硬直は、除脳硬直よりも少し程度の軽い状態です。




この除脳硬直がなぜ重要か?



というと、
両側の瞳孔散大と並んで、この徴候が、脳幹上部の機能不全を表すものだからです。



脳幹という部位は生命維持に関しても、
覚醒に関しても極めて重要な脳の部位です。

言葉でこの部位を言い表すのならば、
大脳と脊髄を継ぐ連結路の部位と言うと、

場所のイメージがしやすいかもしれません。



ここがやられてしまうと、
文字通り、生命を維持できなくなります。

脳幹は、中脳、橋、延髄、と上から順に3つの部位に分かれますが、

たとえば延髄には呼吸の中枢がありますし、
この脳幹の中に網様体と呼ばれる覚醒に関して重要な部位もあります。

上部脳幹がやられてしまうだけでも大抵のケースでは、
いわゆる植物状態のように、目を覚ますことがなくなってしまいます。

そして、
下部脳幹までやられてしまうと、呼吸が止まり、
人工呼吸器なしでは生きていけなくなります。




脳死という言葉は、大脳に加えてこの脳幹の機能も停止し、
呼吸も止まった状態のことです。


今回の除脳硬直と両側の瞳孔散大という所見は、
この上部脳幹の機能不全を表すので、

脳の状態が極めて危ない、まさに瀬戸際の状態にあることを意味するのです。

たとえば、
大脳に出血をきたしたり、大きな腫瘍が出来たりして、

脳幹部を圧迫し、脳幹部に障害を来たしつつあるときにこのサインが見られます。




さて、
そこで今回の本題は、

この瀬戸際のサインが出た時点で、もはや手遅れなのか?否か?

ということです。

次回に続きます。

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