脳脊髄液の驚くべき機能 | ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」

先日、ナショナルジオグラフィック誌発の、
かなりインパクトのある研究結果がニュースになっていました。

それは、
脳脊髄液の機能についてですが、

この研究成果によると、あくまでマウスでの観察結果ですが、
脳脊髄液が脳神経の老廃物の除去など、

脳の洗浄作用を持っているということが明らかになったのです。

以前から脳脊髄液は脳の周りを循環して、
神経細胞に栄養を与えたり、老廃物を除去する、

といったような仮説はあったのですが、
ただ拡散によって脳脊髄液が循環していると考えられていました。

しかし、
この研究は、脳脊髄液が単に拡散だけではなく、
ポンプのように高速に脳の周りを循環し、脳をきれいに保っていることが示されたのです。

その仕組みは、
グリア細胞と呼ばれる細胞にあり、

この洗浄システムを発表者達はグリンパティックと名付けたようです。

これらの細胞によって血液から脳脊髄液が吸い出され、
また、排出も行う事でポンプとなり、脳脊髄液を回しているということです。

また、このシステムは頭蓋内が密閉されていないと、
きちんと働かないことも分かっているようです。

脳の洗浄システムということで、
脳神経細胞に老廃物のたまることによって発症するアルツハイマーとの関連も疑われる、

とのことです。

さて、
このニュースを読んで僕は少し不安になりました。

というのも、
脳外科医が行う開頭手術や脳脊髄液のシャント手術が、

このシステムに影響を与えないはずはないからです。

本来くも膜下を循環する脊髄液ですが、
たとえば動脈瘤の手術ではくも膜を切開します。

そうすると、くも膜の外にも髄液が漏れて、
硬膜内で留まるという状況になりますが、

こういった変化がこの自浄システムに悪影響を与える可能性は否定出来ません。

出来るだけくも膜下でタイトに脊髄液が回っていた方が効率がいいことは、
なんとなく想像できます。

また、
くも膜下出血のようにくも膜の下に出血をきたすような病気、
または脳室内に出血を起こす病気そのものが多大な影響を与えることも間違いないでしょう。

さらには、
そういった病気によって水頭症を来す理由も、
このポンプの障害ということになるのでしょう。

脳脊髄液減少症による影響や、
髄液を腹腔に流すVPシャントなどの影響も気になります。

まだまだ、
今後の研究結果がどうなるのか、目がはなせません。

また、

この脳の自浄システムによる老廃物の除去に、
もしも脳外科の手術が多大な影響を与えると分かった場合、

出来る限り影響を最小限にするような手術法の確立が必要となるのでは、と思います。


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