絵本で、安心して気持ちが話せる「場づくり」の担い手を育む -130ページ目

絵本で、安心して気持ちが話せる「場づくり」の担い手を育む

~絵本で、安心して気持ちが話せる場づくりの担い手を育む~
NSプロジェクト代表
絵本道®マイスター
更家 なおこ

絵本道文庫

~フーシーとまりとおひめさまー2~

 

 歩き続けるうちに、一つの村に着いた。もう夕方になっていた。

フーシーは村の広場まで行くと、澄んだ声で歌を歌った。

それは、人の心の奥の方まで心地よくしみわたった。

 

 畑仕事を終えて帰ろうとしていた村人、夕食の支度を

していたおかみさん達、それに子どもが大ぜい広場に

集まってきた。フーシーは皆に取り囲まれると、ひざを折って

ふかぶかとおじぎを一つした。

「さあて、お集まりの皆さん方、ただ今より、あたしが

まりを投げてみせましょう。」

「何だ、こんな小さな子が何をしようっていうんだ。」

「どうせ子どもだましのお手玉さ。それより、さっきの歌を

もう一度聞かせておくれ。」

 

口々にさわぐ大人の声に耳をかさず、フーシーは赤いまりを

1つ、ぽーんと空へ投げた。2つ、3つ、まりは夕焼けの空に

とけ込む様にはずんだ。

「なかなかうまいじゃないか。」

「いいぞ、その調子。」

 

 さわいでいた人々も、フーシーのまりさばきにすっかり

見とれてしまった。次は青いまり、そして緑のまり、またたく間に

まりは7つになった。村人の中では、もう誰もしゃべる者が

いなかった。ただ、あんぐりと口を開け、フーシーの踊るような

まりの動きを目で追っていた。

 

 ついに8こ目のまりが加わった。

息を殺していた人々が、どっと歓声を上げた。

「8つだぞ、まりが8つだ。たいしたもんだ。この子は天才だぞ。」

ところが、本当の見せ場はこれからだった。

8つのまりの調子に、フーシーの歌が加わった。そして

歌の調子にあわせて、ワルツになったり、タンゴになったり

色とりどりのまりたちが、すばらしいダンスを始めた。

人々は、歌声とまりにあわせて肩をゆすって踊り出し、

フーシーの芸に心も体も酔いしれた。

 

 8つのまりの踊りで人々を十分に楽しませた後、

フーシーは1つ、また1つとまりをポケットにしまい、

最後の8こ目をわざと地面にほうった。すると、

子どもたちがすかさずそれを受取ろうと手を伸ばした。

でも、子どもたちは何も触れなかった。

 8つ目のまりは、キジネコの口に見事に収まっていた。

村人は喜び、心から笑った。

 

 フーシーは、村人の家に一晩泊めてもらい、手厚く

もてなされた。

 

                                    つづく

 

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絵本道文庫~フーシーとまりとおひめさまー1~ | 絵本で、安心して気持ちが話せる「場づくり」の担い手を育む (ameblo.jp)