海外旅行に行ってからというもの、

溜まった仕事を片付けるのに精一杯だったり

ひさびさに子どもが発熱して

一週間保育園お休みになったりして

本が読めない日々が続いています。。

(調子悪いお子との自宅保育、、しんどい!!)





本が読めない日々が

続いているのが悔しくて、、

無理矢理夜更かしして読書を。

直木賞作家で敬愛する作家さんのひとり、

西加奈子さんの乳がんサバイバルエッセイです。



西さんは2021年、留学先のカナダで

乳がんの告知を受けます。



コロナ禍まっただなかで医療は逼迫し

救急外来で9時間待ち(!)という状況のなかで

西さんは闘病生活を送ることになり、



病院や薬局の手違いで

治療が後回しにされそうになったり

薬が手に入らなかったり

日帰りで(!)乳房全摘手術を受けたりと

さまざまなトラブルや試練に見舞われますが



カナダの医師・看護師のカジュアルさに救われたり

患者は「受け身でいてはいけない」と

教えられてカルチャーショックを覚えたり、

カナダの友人たちがたくさん手助けしてくれたりと

大変な日々のなかでも

ちょっとした笑いや新鮮な驚き、温かい繋がりが

あることが綴られています。



医師や看護師との会話は実際は英語だけれど

西さんは軽やかな関西弁で和訳していて

それが「大変な日々のなかの明るさ」を

際立たせています。



だけどそれは軽率なものではなく

「カナコなら大丈夫やで!」という

力強いエールが込められた関西弁で、

西さんはあらゆる人からパワーをもらい、

抗がん剤治療、乳房全摘出手術、

そして放射線治療を乗り越えていきます。



もちろん真摯に病と「自分」に

向き合う姿も描かれていて、

西さんは何度も「自分は弱い」と語ります。



「ああ、自分は一人では何も出来ないなぁ。弱いなぁ。日々、そう思った。そしてそれは、恥ずかしいことでも忌むべきことでもないのだった。ただの事実だった。

私は弱い。

私は、弱い。

日々、そうやって自覚することで、自分の輪郭がシンプルになった。心細かったが、同時に清々しかった。」(62ページ)



西さんとまるきり同じ状況ではないので

おこがましいかもしれないけれど、

わたしも似たようなことを感じていました。



母になり、育児と仕事の両立がうまくいかず

夫とも衝突して孤立してしまったとき

自分の弱さをつくづく感じました。



うまくいかない。

一人じゃ何もできない。

体力的にも精神的にも経済的にも弱い。



だからこそ、そばで支えてくれる夫や母の

ありがたさが身に染みるし、

弱いわたしのそばで一生懸命に生きている子が

より愛おしく大切に思えて



自分の弱さに落ち込むのではなくて

それを受け入れて、身近な人への感謝とともに

大切なものを守るために

できることを頑張ろう、、



といった感じで自分の頭の中が「シンプル」に

なった感覚がありました。



弱いことは悪いことではないんですよね。

だって誰もが年老いたり何かがあって

「弱い」立場になりうるのだから。



むやみに落ち込む必要はないし

感謝さえ忘れなければ

誰かから助けられていることに卑屈になったり

遠慮する必要はなくて、

弱さを受け入れて「じゃあ自分ができることは何?」

と考えて行動すれば良いだけで。



弱さを自覚することで

「たくましさ」や「生きる力強さ」が

生まれるのかもしれないなぁと

読みながら考えさせられました。



弱い自分を全世界に開示して、

そして受け入れていく過程を綴った西さんは

ほんとうにたくましくて強い人だと思いました。



「20代の頃、年を取るのが怖かった。若さがすべてだ、おばさんになったら終わりだ。私たちの世代はそんな風に叩き込まれていた世代だった(中略)。

でも、自分が年を重ねておばさんになった今、何を怖がっていたんだろう、と思う。誰が私たちを脅していたんだろう。おばさんになったからといって、自分の喜びにリミットをつける必要はない。」(53ページ)



この引用も好きな一文で。

老いという弱さを恐れる必要が

どこにあるんだろう?と

ハッとさせられました。



わたしも西さんのように

老いや弱さに自覚的でいて、

ショックを受けて泣くときがあっても

最終的にはありのままの自分を

ほがらかに受け入れられる人間でありたいです。



本作では西さんの闘病生活のなかで

日本とカナダの文化の違いが

随所で語られています。



カナダの医療体制のいいかげんさ、

それに反した日本の医療のきっちりさ、

日本人の丁寧だけど距離を感じる態度、

カナダで出会う人たちの温かさ、

自分を大切にするカナダ人と

自分を犠牲にしがちな日本人、

時間に厳しい日本と、ゆるめなカナダ。



そのどちらにも良し悪しがあって、

どちらにも文句や苦言を呈しながら

その違いには「日本の狭さ/カナダの広さ」が

関係しているのではないかという

西さんの考察に目を見張りました。



「日本の芸術は、まさに狭さの賜物だ。そもそも狭いスペースにも保存しておける掛け軸や屏風絵、欄間の存在は日本ならではの様式ではないだろうか。(中略)

決して雄大とは言えない国土で、日本人は深みのある美、そしてその背後にあるものを見つけることに、非常に長けている。」(211ページ)



たしかに日本は狭くて窮屈で

輪を乱さないように自分を犠牲にしがちで

だからこそわたしは一度海外に住んでみたい

という思いがあるのですが



逆にそれが「深みのある美」につながる

「陰翳礼讃」的な魅力にもなる

ということを改めて考えさせられ、

忘れかけていた(笑)日本の良さについても

思いを馳せる一冊となりました。



自分の身体も住む場所も、

当たり前にあるからこそ軽視しがちなもので、

本作はそのふたつをじっくり見つめる

良いきっかけとなった一冊でした。



ひさびさにじっくり読書ができて

大満足です・・!!



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