WUTHERING HEIGHTS THE SHADOW CABINET

 

2006年リリース 4枚目

多国籍プログレッシブメタル

 

 曲リスト

  1. Demon Desire
  2. Beautifool
  3. The Raven

  4. Faith - Apathy Divine Part I

  5. Envy

  6. Snow - Apathy Divine Part II

  7. Sleep

  8. I Shall Not Yield

  9. Reason...?

  10. Carpe Noctem - Seize The Night

  11. Shadow Of A Gypsy (Bonus Track)

デンマーク出身のソングライターでギタリストのエリック・ラヴン・クリステン率いるプログレッシブメタルバンドの4作目。

前作リリース後アメリカの『PROG POWER FESTIVAL』に出演する際にギタリストのヘンリック・フライマンとキーボード奏者のルネ・ブリンクが他のプロジェクトで忙しくなるため脱退、急遽メンバーを揃えなくてはならなくなった。

エリックはデンマークのメロスピバンド『MANTICORA』に所属するマーティン・アレンダル(Gt)とスウェーデンのネオクラメタルバンド『PLATITUDE』の元メンバーであり現『MANTICORA』のサポートメンバーアンドレアス・リンダール(Key)とスウェーデンのプログレメタルバンド『MAYADOME』の元メンバーで現『LOCH VOSTOK』のティッディ・モラー(Ba)に参加を要請。

元々はそのフェスに出演するための臨時メンバーだったがリハーサルで観客の反応が良かったためエリックはパーマネントなバンドにすべきと判断し本作のレコーディングを始めた。

前作同様フォーク(民謡)音楽の要素を取り入れたプログレメタルという路線は変わらないが今作は更にアグレッシブかつ疾走感が増し、シンフォニックなアレンジもあるなどダイナミックなアルバムとなっている。

そしてニルス(Vo)の表現豊かで熱い歌声は音楽をより深みのあるものにしている。

1曲目「Demon Desire」は性行為についての曲で男性は生殖のため生物学的にプログラムされた性欲の奴隷であり、そのことが人間関係や世界の出来事を混乱させているとエリックは解説している。

バックでピアノの音が鳴り響く疾走パワメタ曲だ。

2曲目「Beautifool」の歌詞の内容は世の中がいかに美しい人達に憑りつかれているか、世界を動かしているかをテーマにしており、彼らは何がクールで何がクールじゃないかも決められるし、みんなが彼らのようになりたいという夢を持つとエリックは語る。

3曲目「The Raven」はカラスについての歌で、北欧神話ではカラスには邪悪な力があると思われていてカラスは恐れられている。

この曲には自分と違っているからといって他人を見下げてはいけないという意味も込められている。

4曲目「Faith - Apathy Divine Part I」は二部構成の曲の第一部で今の堕落しつつあるように思える社会では何に対してもFaith(信念、信仰))を維持するのは難しいことを歌っている。

ヴァイオリンの音が哀愁を漂わせる。

5曲目「Envy」は自分より上手くやっている人達を妬む気持ちを歌っている。

我々は常に自分以外の何かになりたいと渇望してるが、それは本当に良いことなのか、現状に満足し心の平和を見出すべきだと問いかけている。

この曲はエリックの商業主義社会に対する嫌悪感から生まれたという。

6曲目「Snow - Apathy Divine Part II」は二部構成の2曲目で信念についての曲だ。

横たわって雪の中に消えてしまえたらどんなに楽だろうというイメージで詩的に描かれており、同時に本当の信念を失うことについても書いている。

我々は悪事をやり過ぎたのでもう神を失ってしまった、神は我々ともう関わりたくないんじゃないかとエリックは語る。

7曲目「Sleep」は眠りについての詩的な曲だ。

ストレスや悩みが多いと人間の闇の部分を増大させるので、少し休み精神面のバッテリーを充電することが大切だと言う。

8曲目「I Shall Not Yield」は自分の人生のため、障害になりそうな物には立ち向かい、人間らしくあるために闘わなくてはいけないことがテーマだ。

9曲目「Reason...?」は10曲目に入る前のイントロだ。

何故いつも微笑んでいない人達がいるのかを説明している。

そしてこの曲は『MEAT LOAF』や『AIR SUPPLY』で有名なアメリカの作曲家ジム・スタインマンへのトリビュートにもなっている。

10曲目「Carpe Noctem - Seize The Night」はこのアルバムの鍵となるテーマを歌った曲で、どんな事が起ころうと、それを自分に有利な方向に利用すべきだ、闇のパワーのせいで嫌なことばかり起こっているような気がするかもしれないが、そのパワーを自分の強さに変え目的に向かって進めというテーマが込められている。

元々この曲は新作のタイトルトラックになる予定だったが後でアルバムタイトルを変えたという。

日本盤ボーナストラックはデンマーク出身のプログレロックバンド『ACHE』の2作目「GREEN MAN」収録の「Shadow Of A Gypsy」のカヴァーだ。

ちなみにヨーロッパ盤には「MIDNIGHT SONG」という曲が収録されている。

今作はテクニカルかつ熱苦しいほどにパワー溢れるアルバムで、バンド史上最も勢いがある傑作名盤だろう。

プログレメタル、民謡風メタル、パワーメタル好きにおすすめの傑作アルバムだ。

次回作

 

好きな曲ベスト3

Demon Desire

Beautifool

Carpe Noctem - Seize The Night