【社説】敦賀原発2号機 不適合なら廃炉は当然だ
西日本新聞 8/5(月)
重大事故の危険性を排除できない以上、再稼働を認めないのは当然である。
日本原子力発電が再稼働を目指す敦賀原発2号機(福井県)について、原子力規制委員会は再稼働の前提となる新規制基準に適合しないと結論付けた。
新規制基準は原子炉などの重要施設を活断層の上に設置することを禁じている。敦賀2号機は原子炉直下に断層があり、これが活断層の可能性があると判断した。
新規制基準に不適合となった原発は初めてだ。規制委は2日に原電の村松衛社長から意見を聞いた上で審査の終了を決めた。
原発依存度を低減するにしろ、原発を活用するにしろ、安全が最優先である。いつ動くか分からない活断層の上に原発がある現状は極めて危険だ。原電は結論を受け入れ、廃炉を決断すべきだ。
当の原電は廃炉を否定し、追加調査をして再稼働を求める方針だ。原電の考えを支持する電力会社もある。再稼働さえできればいいというような姿勢では、国民の理解は得られない。
敦賀原発の敷地内には活断層「浦底断層」が確認され、枝分かれするように複数の断層が延びている。
審査の焦点は、2号機の原子炉の北約300メートルで見つかった「K断層」の活動性や連続性だった。
原電がボーリング調査などを基に活動性や連続性はないと主張したのに対し、規制委の審査チームは明確な証拠がないと退けた。
原電は2015年、規制委に審査を申請した。審査の過程で、原電の資料に千カ所を超える誤りやデータの無断書き換えが発覚するなどの問題が相次いだ。ミスを繰り返す原電に、厳格な安全管理が必要な原発事業者の適性があるのか疑わしい。
審査上の問題も浮かび上がった。規制委の有識者調査団は13年に原子炉直下にある断層を活断層と評価した。原電がこれを認めなかったため、規制委が今回の結論を出すまでに10年以上かかった。貴重な時間と膨大な労力を浪費しただけだ。
新規制基準への適合審査は事業者が提出した資料を基に進める。資料が不十分だったり、意図的に改ざんされたりすれば、危険性を見落としてしまう恐れもある。
事業者任せにせず、規制委の主体的な調査を検討すべきではないか。「安全最優先」の最後のとりでである役割を自覚してもらいたい。
原電の役割も問われる。所有する原発は2基で、東海第2原発(茨城県)は防潮堤の施工不備などで再稼働が見込める状況ではない。
活断層に近い立地を考えれば、敦賀3、4号機の増設計画は好ましくない。廃炉作業中の東海原発(茨城県)で蓄積した技術を他の原発の廃炉に役立てるなど、事業を再構築すべきだ。