今年以降の原発再稼働について 上岡直見(環境経済研究所代表)
4つ(島根・柏崎刈羽・東海第二・女川)の沸騰水型(BWR)が予定されているが長期間停止によるトラブルが予想される
電力会社にとっても原発は廃炉が最も合理的な選択
◎ 2024年度以降に、事業者が再稼働を表明している原発は、西から島根(中国電力)・柏崎刈羽(東京電力)・東海第二(日本原電)・女川(東北電力)である。
これらは福島第一原発事故以降に長期間停止していた炉の初稼働である。いずれも夏の電力ピークを口実に夏前の再稼働を表明していたが、軒並み予定が遅延して夏前に稼働する見込みはない。
◎ 島根は対策工事の遅れで8月を12月に延期した。
柏崎刈羽は今年夏を表明し、「点検」の名目で5月に燃料装荷を強行したものの、能登半島に近く自然災害に対する地元の不安が大きいため同意の見通しが不明である。
東海第二は防潮堤工事のミスが露見し見通しが立っていない。
女川は今のところ目立ったトラブルはないが対策工事の遅れで当初2月としていた予定が9月に延びている。いずれにしても夏のピークには間に合わない。
◎ これら4件の特徴は、いずれも沸騰水型(BWR)という点である。
これまで福島第一原発事故以降に再稼働済みの炉はすべて加圧水型(PWR)である。
双方の特徴を大まかに示すと、BWRでは核燃料に触れた水の蒸気が直接タービンを回す。これに対してPWRでは核燃料に触れた水(一次系統)が蒸気発生器(熱交換器)に通され、別の水(二次系統)を蒸発させてタービンを回すという二段階になっている。
◎ 軍用の原子力艦船はすべてPWRである。
これは核燃料に触れた水の蒸気が直接タービンを回すBWRの方式では乗員の放射線防護が困難なので、蒸気発生器で放射線との縁を切って熱だけを蒸気に移すPWRのほうが安全性が高いと考えられるからである。
しかしPWRのポイントとなる蒸気発生器は、しばしば漏洩を起こすなど、構成が複雑になる分だけトラブルも増える要因にもなっている。
◎ 推進側がこれまでPWRを優先して再稼働を推進してきたのは、西日本を中心にPWRを運用する九州電力・四国電力・関西電力は、東京電力と違って直接事故の当事者ではなく、福島からも遠いため再稼働への社会的な抵抗が少ないことが理由と推定される。
しかしこれからBWRを再稼働するにあたって、BWR固有の技術的内容がどれだけ考慮されているかは疑問である。
◎ これから再稼働するBWRは、長期間停止していたことによるトラブルが予想される。
もともと福島第一原発事故前でもトラブルでしょっちゅう停まっている。
ただちに大事故につながらなくても、そのたびにバックアップの火力発電所を稼働しなければならず、ピーク対応としても使いにくく、安定電源でもないし、脱炭素にもならない。
電力会社にとっても廃炉が最も合理的な選択である。