私が音楽を担当したFC用ゲームソフト「美少女麻雀塾其の一」のオリジナルサウンドトラックが完成しました!
まず2023年4月29日に名古屋で開催されたゲームインパクト主催のゲームレガシーVol.2会場にて先行リリース決定しました。
https://www.gameimpact.info/gamelegacy2/
その後はゲームインパクトのオフィシャルサイトにて通販となります。
https://www.gameimpact.info/mahjyan1/
美少女麻雀塾其の一ORIGINAL SOUNDTRACKの内容は、FC用オリジナルBGMが8曲、新規に制作したFMシンセサイザーアレンジVer.が6曲、作曲で使用したNintendo Switch + KORG Gadget2のソフトウェアFM音源「Chiang Mai」で作ったFM音源Ver.の8曲を収録しました。
全22曲で収録曲時間が約45分と、とてもボリューム満点な作品になりました。
価格は¥2,500です。
今までリリースしてきた音楽作品の中で収録曲が多く、そして価格も市販の音楽CDと同じくらいです(笑)
注目はFMシンセサイザーアレンジです。
80年代を感じさせるFM音源サウンドにPCMリズムマシンのドラムサウンドによるSYNTHWAVEな音楽。
FC用BGMはどれも曲が短いので、FMシンセサイザーアレンジはゲームを知らなくても、曲単体で聴けるようにフルコーラスで仕上げました。
試聴動画も公開されております。
では、FMシンセサイザーアレンジの解説です。
全て実機のFMシンセサイザーを使っております。
FMシンセサイザーとは、FM(Frequency Modulation)方式のシンセサイザーでして、一般的には周波数変調方式、または周波数乗算方式とも言われます。
2つの周波数を掛け合わせる事で音色を作るのがFM音源です。
周波数を発信する発信器をオペレーターと言い、その搭載するオペレーターの数が多いほど、より複雑な音色を作る事が出来ます。
実際に使用したFMシンセサイザーが、こちらです。
YAMAHA DX7
YAMAHA TX802 2台
YAMAHA TX81Z 2台
YAMAHA DX21
YAMAHA DX100
YAMAHA EOS B200
YAMAHA V50
YAMAHA PSS-780
YAMAHA SY77
YAMAHA MODX7
KORG opsix
これらのFMシンセサイザーを、曲ごとに選んで使いました。
特にYAMAHA DX7は、今年5月で40周年ですので、全6曲に使用してます♪
FMシンセサイザーの選択は、仮アレンジが決まってからですね。
仮アレンジは、YAMAHAシーケンサーQY700の内蔵XG音源で作ります。
その後で、各パートをFM音源に差し替えます。
実はこれ、FMシンセサイザーの寿命を伸ばすための気配りなんです。
特に液晶ディスプレイは、電源入れている間、バックライトは点きっぱなしです。
バックライトにも寿命があります。
なので、FMシンセサイザーで音色が決まったら、なるべく翌日にレコーディングします。
こうして、FMシンセサイザーやサンプラーの使用時間を必要最小限に抑えます。
ドラムサウンドは全6曲ともYAMAHA RX11のドラムセットをAKAI S6000V2でサンプリングして鳴らしております。
スネアドラムはS6000V2内蔵エフェクトのゲートリバーブを加えて、SEGAの体感ゲーム「OUT RUN」のBGMで使われているスネアドラムのようにエディットしてみました。
あと、今回からミキサーはYAMAHA DM2000V2を導入しました。
本体の音声入力は24chありまして、この24chに対しては内蔵エフェクトを加える事が出来ます。
更に拡張スロットには音声入力を16ch増設しましたので、拡張音声入力にはエフェクター内蔵機種を接続しました。
その結果、音声入力は全部で40chが入力可能となりまして、うちの所有するシンセサイザーは全部DM2000V2に接続してあります。
2曲目からぶっつけ本番で使い始めましたけども、3曲目からDM2000V2の内蔵エフェクトを使うようになりました。
あと、今回からレコーディングにはSONIC MAXIMIZERを使いました。
マキシマイザーと言う名前が入っていますけど、これはエンハンサーです。
倍音成分を増幅するエフェクトでして、音の輪郭を強調します。
その結果、音がクッキリします♪
ミキサーからの音声出力をSONIC MAXIMIZERに通してレコーディングするのです。
曇っていた音が明るくなりますよ!
1.STAGE BGM 1
まずイントロのバックでゴニョゴニョ鳴ってる効果音はYAMAHA MODX7です。
FM-X音源のスマートモーフ機能を使ってます。
異なる複数の音色を取り込んで分析した結果から1024個の音色を自動形成してタッチパネル上に展開、指でなぞる事によって滑らかに音色を切り替える事が出来ます。
レコーディングの時は、タッチパネルを指でなぞりながら収録しました。
左chで鳴っているカッティングギターはYAMAHA TX802のプリセット音色です。
シーケンサーに音符を入力する時も、ストロークノUP/DOWNを意識してます。
声はCASIO CT-S1000Vと言うボーカルシンセサイザーを使ってます。
喋らせたいセリフをスマートホンやタブレットで使える専用アプリに入力してCT-S1000Vに転送すると、鍵盤で発音させる事が出来ます。
声のレコーディングは、実際に鍵盤で演奏して収録しました。
2.STAGE CLEAR BGM &CUTSCENE BGM
イントロがSTAGE CLEAR BGMのアレンジ、それ以降はCUTSCENE BGMのアレンジになっております。
実はイントロのメロディーの音色はFM音源ではなく、試しにiPD音源のCASIO VZ-8Mを使ってます。
FM音源は周波数変調ですけど、iPD音源は位相変調です。
FM音源で言うところの、周波数比1:1で変調するような感じです。
iPD音源と言わばければFM音源のような音色に聞こえるでしょう(笑)
将来はFM音源とiPD音源を混ぜたアレンジをやりたいと考えております。
あと、曲の最初と所々で鳴っているシーケンスフレーズにKORG opsixを使いました。
3.TITLE BGM
原曲は短いので、原曲部分をAメロにして、BメロとCメロを新規に作りました。
メロディーとピアノとベースの音色はSEGAのQUARTETの音色をFMシンセサイザーに移植して鳴らしてます。
ベースはYAMAHA DX7、ピアノはYAMAHA TX802、メロディーはYAMAHA MODX7です。
4.STAGE BGM 3 & MISS BGM
当初はSTAGE BGM 3とMISS BGMとで別々のアレンジにする予定でした。
しかし途中で2曲くっ付けられる事に気が付いて、間奏部分をMISS BGMにして1曲にまとまりました。
面白い試みとして、ベースを2パートにしました。
低音部と高音部に分けてます。
低音部はYAMAHA DX7、高音部はYAMAHA TX81Zです。
低音部は8分音符を規則的に演奏、高音部は16分音符を混ぜたファンキーなフレーズを演奏してます。
間奏部分のオーケストラヒットはYAMAHA RX7のプリセット音色です。
たぶんYAMAHA DX7で作ったものをサンプリングした感じのFM音源オーケストラヒットでしょうか。
5.STAGE BGM 2 &ENDING BGM
元々はテスト用で作った曲だったので未使用で終わると思ってたんですけど、急きょENDING BGMに採用さて、更には開発途中でSTAGEが増えたので、STAGE BGMとしても使われました。
FM音源の音色はSEGAの体感ゲーム「OUT RUN」のBGM"SPLASH WAVE"を真似た音色を作って、イントロもSPLASH WAVEっぽくしました。
6.GAME OVER BGM
たった4小節しかない曲でしたので、この4小節をイントロとCメロにして、AメロとBメロを新規に作りました。
イントロと間奏には笛や琴の音色を使って和のテイストを含ませております。
メロディーとベースはYAMAHA PortaSoundシリーズのPSS-780を使いました。
しかしベースの音色の低音が足りなかったので、YAMAHA DX7のベースの音色を重ねて低音部をカバーしております。
メロディーの音色にはPSS-780に内蔵のコーラス機能を加えて、音に広がりを付けつつ、KORG D3200にレコーディングした後から更にディレイを加えました。
あと、間奏部分のコーラスオーケストラには、Roland S-50を使いました。
BONUS TRACKに収録した8曲も、実はFM音源Ver.です。
Nintendo Switch用KORG Gadget2の中に、1つだけChiang Maiと言うソフトウェアFM音源があります。
Chiang Maiは、ちょっと変わったFM音源です。
実はKORGも80年代にFMシンセサイザーを作っております。
YAMAHAの4オペレーターFM音源チップを使っているのですが、2オペレーターの組み合わせを2系統出力にして、アナログシンセサイザーのような操作で音色を作れるようにしたのです。
その80年代のKORG製オペレーターFMシンセサイザーを、KORG Gadget2のChiang Maiでは2オペレーターで出来るようになったのです。
どうなっているかと言うと、フィードバック付き1オペレーターFM音源が2系統出力となってます。
更にオペレーター出力波形も4種類から選べるようになりました。
そしてここがChiang Maiの凄いところ。
フィードバックする時に周波数比を設定出来るのです!
正数次倍音はもちろん、非正数次倍音も出来ます。
エフェクターやフィルターも使えるので、1オペレーター2系統ながら、4オペレーター並みの音色が作れるのです。
KORGらしいFM音源ですよ♪
そんなChiang Maiで作ったFM音源Ver.は、私がもう1つやりたかったアレンジなんです。
FM音源で麻雀ゲームと言えば、Nichibutsu(日本物産)です。
美少女麻雀塾のBGMを、Nichibutsu麻雀ゲーム風にアレンジしました(笑)
一応OPL系FM音源YM3526やOPL2系FM音源YM3812で鳴らす事を想定しながら作りました。
音色もNichibutsuサウンドを意識して作りましたので、雰囲気出ているかと思います。
全曲のレコーディング、ミキシング、マスタリングはKORG D3200を使いました。
パソコンは一切使ってません(笑)
今時MTR(マルチトラックレコーダー)で仕上げる人は少ないかと思いますけど、MTRの良いところは、ツマミとフェーダーで直感操作出来ることです。
パソコンのDAWソフトでもフィジカルコントローラーを付ければ同様に使えます。
波形編集もDAWソフトのほうがやり易いです。
実機MTRでの波形編集は苦行ですね(笑)
でも実機は操作してて楽しいんですよ♪
DAWソフトは楽なんですけど、これに依存してしまうと、他の方法で音楽が作れなくなってしまいそうで、危機感があります。
今回は私が主導で音楽制作が出来ましたので、実機MTRでも良かったと思います。
これがもし依頼者主導の場合は、修正が多くなりがちなので、修正や編集が容易なDAWソフトを使います。
いろんな方法で音楽を作れるほうが、いろんなケースに対応出来ますね!
実はこの記事を作っている最中は、次の依頼制作に取り掛かってます。
今度はパソコンでMUCOM88と言うサウンドドライバーでMML(ミュージック·マクロ·ランゲージ)を使って演奏データを作っております。
MMLは10代の頃に富士通FM77AVで3年間ほど使った事があるので、MMLでも音楽は作れます。
FMシンセサイザー研究家を名乗っているからには、どんなFM音源でも、どんな制作環境でも対応出来るように、日々勉強ですよ(笑)
さて、このMUCOM88で作った音楽が、どのような形で世に出るのか?
その時はまた記事で紹介しようと思います♪