沖澤のどか&N響 寄港地、左手、夜想曲 | 今夜、ホールの片隅で

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東京在住クラシックファンのコンサート備忘録です。

🔳NHK交響楽団 第2014回定期公演(6/14NHKホール)

 

[指揮]沖澤のどか

[ピアノ]デニス・コジュヒン*

[女声合唱]東京混声合唱団♯

 

イベール/寄港地

ラヴェル/左手のためのピアノ協奏曲 ニ長調*

(アンコール)チャイコフスキー/「こどものアルバム 24のやさしい小品」より 教会で*

ドビュッシー/夜想曲♯

 

平日のN響定期Cプロ。開演前の室内楽は、フルート(甲斐雅之)&ファゴット(水谷上総)&ハープ(早川りさこ)によるジョリヴェ「クリスマスのパストラール」。この編成のためのオリジナル作品で、短い4つの楽章から成るしみじみと高雅な曲。何故この時期にクリスマスかと言えば、同期入団の水谷さんと早川さんが定年を迎える卒業記念に、今年の12月定期で採り上げる予定だったが、開演前の室内楽が来季から無くなることになり、最後の機会となった6月定期に急遽繰り上げたそうだ。

 

本編には沖澤のどかがN響定期初登場。休憩無しの約80分だが、独奏ピアノあり、女声合唱ありの、変化と陰影に富んだプログラム。イベール「寄港地」は、先月ノット&東響による演奏をニコ響で視聴したばかり。N響だけあってさすがにノット&東響ほどはっちゃけはしないのだが、こちらも内在するエネルギーはかなりのもの。この曲のキレキレの終わり方を聴くと、「ラ・ヴァルス」も沖澤さんで聴いてみたくなる。

 

ラヴェルの左手協奏曲は、ソリストのコジュヒンが得意とするレパートリーとのこと。なるほどパワフルかつクリアな演奏で、混沌とした曲想の中でもピアノがオケに埋没することが無い。久しぶりに聴いたこの曲、ニ長調とは思えない異形の協奏曲だと改めて思う。アンコールはてっきりフランス物かと思ったら、終演後の掲示にはチャイコフスキーと。「光と影」で言えば「影」寄りの、開演前のジョリヴェにも通ずる匂いを感じた。

 

ピアノが下げられ、下手手前に合唱席が設けられて、ドビュッシー「夜想曲」。この曲も先々週にカーチュン&日フィルで聴いたばかり。最も違いを感じるのは「シレーヌ」で、女声合唱の人数が日フィルの時の半分ほどしかいない。どこまでが人の声で、どこからがオケの音なのか、溶け入るそのあわいが精妙に描き出される。この楽章に限らず全体的にサウンドの間口が広く、各セクションから色んな音が聞こえてくるという印象。「寄港地」ではなく「夜想曲」を最後に置いた並びもいい。