山田和樹&モンテカルロ・フィル フレンチ・プロ | 今夜、ホールの片隅で

今夜、ホールの片隅で

東京在住クラシックファンのコンサート備忘録です。

🔳モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団(5/28サントリーホール)

 

[指揮]山田和樹

[ピアノ]藤田真央*

[オルガン]室住素子**

 

ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲

ラヴェル/ピアノ協奏曲 ト長調*

(アンコール)矢代秋雄/夢の舟*

(アンコール)矢代秋雄/24のプレリュードより 第9番*

サン=サーンス/交響曲第3番 ハ短調「オルガン付き」**

(アンコール)F.シュレーカー/舞踏劇「ロココ」より 第3番マドリガル

(アンコール)ビゼー/「アルルの女」第2組曲より ファランドール

 

バーミンガム市響の音楽監督としてのシーズンが始まったばかりの山田和樹が、芸術監督兼音楽監督の肩書を持つモンテカルロ・フィルを率いての来日ツアー。2種類あるサントリーホール公演のうちフレンチ・プロを聴く。チケット購入後に来季ベルリン・フィル定期へのデビューが決まったヤマカズだが、そのメイン曲も「オルガン付き」とのこと。会場は真央君人気もあってかほぼ空席が見当たらない大盛況である。

 

「牧神」の冒頭、女性奏者が吹くフルートの、気張らない素朴な響きがいい。オーボエもクラリネットも、木管のソロがみな「笛」っぽい音がする。そのカラッとした耳触りの心地よさ。

 

ラヴェルのピアノ協奏曲、藤田氏は今回が初弾きだそう。通り一遍の演奏で聴くとサクサク進んであっという間に終わってしまうこの曲だが、この日の演奏はソロ、オケ共に、非常に聴き応えがあった。特に第1楽章のゆったりした部分の味わいが濃厚で、細部までしっかり味の染み込んだラヴェル(曲中に山田氏が指揮台を降りて弦を煽る場面も)。ソリスト・アンコールは、山田氏がセコンドに座りスローな連弾で1曲、藤田氏の速弾きで1曲。終演後に確認したら、どちらも矢代秋雄作とは意外だった。

 

「オルガン付き」は2019年1月にも山田&読響で聴いている。当夜は極めて精妙な弦の響きで始まったが、最終的には「パワフル!」のひと言に尽きる力演。フランスのオケ以上にフランス的とも言われるモンテカルロ・フィルだが、何をもって「フランス的」と聴くかは人それぞれだろう。色彩感という意味ではデュトワ&N響による同曲の方がよほどあった気もするが、この日の演奏からはサウンドの彩度よりも強度が前面に感じられた。終盤は力の入る長い相撲を観ているような心持ちで、このコンビの侮れない剛腕ぶりが発揮されていたように思う。

 

プレトークの予告通りアンコールは2曲で、こちらも緩急メリハリを利かせた選曲。1曲目の拍手を遮るように2曲目を振り始めたり、2曲目が終わる前から拍手を要求したり、捌き方が完全にヤマカズの世界で、オケとの関係性の良さが伝わってくる。関係ないけど何故かふと、小澤さんのことを思い出した。

 

終演後は指揮者のソロ・カーテンコールかと思いきや、オケのメンバーも三々五々戻ってきてステージ上が賑やかに。撮影が禁止された客席を、逆にステージから楽しそうに撮っていた。