シナリオ【逃避行】 6 | Novel & Scenario (小説と脚本)

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5月30日にビデオコンテを公開しました。

 

 


 

●隠れ家・サクのいる部屋

 

サクが森に降る雨を見ている。そばに荷物がある。山賊に襲われたとき山道に散らばった荷物。手下たちがあとから拾い集めたもの。

 

カイの声「昨夜は眠れましたか」

 

サク「(振り向く)」

 

カイ「(部屋の入口に来ていて)姫はまだ休まれてる」

 

サク「そう」

 

 

 

 

●雨・インサート

 

カイの声「以前はよくしゃべるお子でした」

 

 

 

 

●隠れ家・サクのいる部屋

 

カイ「いつからあんな風かは――」

 

サク「いや、会った時はもう」

 

カイ「そう――」

 

サク「話したそうにはするが――よほど怖い思いをしたのか」

 

カイ「――(うなずく)これからサク様は、どうなされるおつもりで? 自分の隠れ家に戻られる?」

 

サク「うん――」

 

カイ「隠れ家というのは――あなたも誰かに追われて?」

 

サク「(背を向け森を見る)そこはもう追手たちに見つかってるはずで」

 

カイ「そう――」

 

サク「ほとぼりが冷めたころ戻るか、別の場所を探すか」

 

カイ「姫のために、ご苦労をかけました」

 

サク「いや」

 

カイ「お礼をしたいがこんなありさまで、たいしたことはできない。しかしここにはいくらでもいて下さい」

 

サク「うん――」

 

カイ「できれば我々の力になって、一緒に戦ってもらえるとありがたい。姫はあなたを信頼してる」

 

サク「――」

 

カイ「我々の戦いに巻き込んでしまうが」

 

サク「――」

 

 

 

 

●ノアの部屋

 

ノアが色鮮やかな服に着替え、キナに櫛で髪をすかれている。

 

カイの声「よくお似合いだ」

 

ノア「(声の方を見る)」

 

カイ「(入ってきて)南方の商人から奪ったものです。お父様に見せたかった」

 

ノア「(服の柄を見る)」

 

時間飛んで、

 

カイ「今のところ色よい返事は(と首を振る)サク様は自分のこともまったく話されない。今までのこと――姫様には話されましたか」

 

ノア「(首を振る)」

 

カイ「どんな人物なのか」

 

ノア「――」

 

カイ「今後を迷われるのは当然。無理に引き留められない」

 

 

 

 

●隠れ家・外観(夕方)

 

雨がやみかけ。

 

 

 

 

●隠れ家・広間

 

夕飯を食べている老若男女。ノアも食べている。サクを探すがいない。

 

キナ「(気づいて)サク様ですか?」

 

ノア「(うなずく)」

 

キナ「お部屋です。ひとりで食べたいと」

 

ノア「――」

 

 

 

 

●サクのいる部屋

 

サクがひとりで食べている。コンコンとノック。振り返る。

 

部屋の入口にノアがいて柱を軽く叩いたところ。

 

サク「おお、あんたか。見違えた」

 

ノア「(苦笑して自分の服を見る。部屋に入る)」

 

サク「お姫様とはね」

 

ノア「(座る)」

 

サク「だいぶ粗末に扱った。みんなには内緒に頼む」

 

ノア「(微笑でうなずく)」

 

サク「とにかく、ここなら安心だ。仲間がいてよかった」

 

ノア「――(サクを見る)」

 

サク「まだ言葉は?」

 

ノア「(口をひらいて話そうとするが、喉でつまるように出ない)」

 

サク「いいんだ。無理しなくていい。いいんだ」

 

ノア「――」

 

サク「ここにいれば、そのうち戻る、きっと」

 

ノア「――」

 

サク「あんたの仲間たちは、いずれ復讐するつもりらしいが」

 

キナの声「姫様」

 

サクとノアが見る。

 

キナ「(部屋の入口にいて)急にいなくなるから(安堵し)探しました。こちらだったんですね」

 

ノア「(うなずく)」

 

キナ「心配しました。お話を?」

 

ノア「――」

 

サク「いや、終わった。もう行きな(とノアに言う)」

 

 

 

 

●隠れ家・広場(昼前)

 

晴天。春の陽気。鳥のさえずり。

 

男たちが馬にまたがり出ていく。女たちは水場で洗濯など。

 

子供たちは遊んでいて、一方に気づき動きをとめる。サクが愛想なく通過していく。

 

馬小屋の掃除や大工仕事をしている老人たちもサクを気にして見送る。

 

サクは森の中に消えていく。

 

洗濯物の干し場で女たちが話す。

 

女A「毎日毎日どこ行くんだろ」

 

女B「ねぇ。気味悪い」

 

キナ「よして」

 

女A「あ(と気づく)」

 

ノア「(キナの陰にいて目を伏せる)」

 

女A「姫様がなんで洗濯なんか」

 

女B「私らがやりますよ」

 

女A「いえあの人はなんにも話さないでしょ。口を利かない人はやっぱりねぇ。あ(とまた気づく)」

 

キナ「バカ」

 

ノア「(その場を離れる)」

 

キナ「ノア様」

 

ノア「(サクの消えた森に向かう)」

 

女A「怒らせた?」

 

キナ「あとで謝っとく」

 

 

 

 

●森の中

 

ノアがサクを探して歩く。いない。見晴らしのいい高台に登り一方に気づく。草地を歩いているサクが遠くに見える。ノアが急いで下りる。

 

 

 

 

●草地

 

サクがどんどん進む。ノアが追いつこうと草をかき分けて進む。草に足を取られて転び小さな悲鳴。それに気づいたサクが振り向く。草むらで起き上がるノアに気づいて戻り、

 

サク「どうした」

 

ノア「(サクを見る。足を引きずって向かう)」

 

サク「(怪我を見て)あーあ(ひざを擦りむいている。おぶうためにかがむ)」

 

 

 

 

●小川のそば

 

手拭いのような布で傷口を巻き、応急処置を終えたところ。

 

サク「あの馬を探してる。鞍が付いたままだし、追手の印がある。見つからずに鞍もはずれて、野馬になってればいいが。遠くに行ってれば」

 

ノア「(そうだったのか、とうなずく)」

 

サク「このまえ聞きかけたことだが、あんたも仇を討ちたいのか」

 

ノア「――」

 

サク「しかし何十人の敵じゃないだろ。国を治める者なら――隠れ家のあの人数ではかなわない」

 

ノア「――(目を伏せる)」

 

サク「これから仲間を集めるにしても、たくさんの人間がまた死ぬ。それをとめられるのはあんただけだ」

 

ノア「――(目が泳ぐ)」

 

サク「恨みはわからない。だからとめられないが――よく考えた方がいい(ノアをおぶうためにまたかがみ)行こう」

 

 

 

 

●隠れ家

 

ノアをおぶったサクが帰ってくると、山賊たちが広場にいて今日の略奪品を広げ盛り上がっている。

 

キナがふたりに気づいて向かう。ノアの傷を見る。サクがそのままかついで住居の方へ。

 

それに気づいたカイが「どうした」とキナを呼ぶ。

 

 

 

 


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