シナリオ【友情結婚】 4 | Novel & Scenario (小説と脚本)

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このシナリオは小説の下書きとして書かれたものです。シナリオ全文はホームページでも公開中です。


 

●街路樹のある道(午後)

 

英司の車が走ってくる。11月。樹々が色づいている。

 

 

 

 

●英司の車・車内

 

英司が運転し渚が助手席。ふたりとも緊張した顔。

 

 

 

 

●大橋不動産

 

大橋勝枝「(老眼鏡をして書類を見ている。来客に)いらっしゃ(と顔を上げて気づき)英司さん(と席を立つ)」

 

英司「(来店し)こんちは。ご無沙汰してます」

 

渚「(あとから来て)こんにちは」

 

勝枝「あ、水谷さんとこの、渚さんね」

 

渚「ええ、ご無沙汰して」

 

勝枝「聞いた聞いた、英司さんのお母さんから。『ホント?!』って私驚いて、でも嬉しくて嬉しくて。渚さんのお母さんとも話して」

 

英司「ヘヘヘ、そんなわけで、これお詫びと言っちゃなんですが(と菓子折りを渡す)」

 

勝枝「いいのにそんな気ぃつかわなくて。まぁ座って、座って」

 

 

 

 

●英司の実家前

 

英司の車が来る。停車して英司が降り、続いて降りた渚に「ここ」と教える。

 

渚「へぇ(と見上げる。ドアのあく音で玄関を見る)」

 

英司の母「(笑顔で)いらっしゃい。車の音したから来たかって」

 

英司「ああ、ただいま」

 

渚「ご無沙汰してます」

 

母「いらっしゃい。遠いとこ疲れたでしょう」

 

渚「いいえ」

 

母「入って入って(英司に)お昼ご飯は食べた?」

 

英司「ああ、いらないよ(と入る)」

 

 

 

 

●玄関内

 

母「(中に向かって)お父さん、お父さん来た。なんで出迎えないんだろ」

 

英司「足は? 治ったの」

 

母「とっくよとっく。あ、このスリッパね」

 

渚「ありがとうございます」

 

母「あと鍵カチャッと。お父さん(と上がっていく)」

 

 

 

 

●リビング

 

母「(入ってきて)ほら来た。なに突っ立ってんの」

 

父「(ただ立っていて)ああ」

 

英司「ただいま(と来る)」

 

父「おお」

 

英司「足もう全然?」

 

父「ああ、治った」

 

英司「そう(振り向いて)こちら水谷さん(父に紹介)水谷渚さん」

 

渚「(来て父に)水谷です。はじめまして(一礼)」

 

父「ああ、英司の父です(一礼)」

 

渚「お休みのところすみません。お邪魔して」

 

父「いやぁ、どうぞどうぞ」

 

英司「見合いの写真は前に見たよね。座って(と渚を見る)」

 

渚「あ、これ、つまらないものですが(と紙袋から土産を出す)」

 

英司「ああそうだ、忘れてた」

 

父「ありがとう(受け取る)」

 

母「(キッチンでお茶の用意をしていて)いいのに手ぶらで。どうぞ座って」

 

渚「はい」

 

テーブルにお茶が置かれる。時間経過。4人が座っている。

 

母「最初はどうかって思ったの。こんな綺麗な人ウソでしょって」

 

渚「いいえ(謙遜)」

 

母「英司に釣り合わない。でも大橋さんがとにかく一度って猛プッシュだったから。そこまで言うならって。会ってみたら全然気取らない人で」

 

渚「はぁ(苦笑)」

 

母「すぐ気に入っちゃった。なのにこの子が気に入らないようなこと言うでしょう。私粘ったの。でもま、並んだらコンプレックス感じちゃうのはわかるし、諦めて。結局それがよかったのかな。時間置いてまた会えて。結婚式の二次会だっけ。いつの話?」

 

英司「えーと(渚を見る)」

 

渚「9月」

 

英司「そう9月。9月に」

 

母「じゃあまだ2ヶ月?」

 

英司「あぁ、まぁ」

 

母「ずいぶん急ね」

 

英司「いや、何度も会ったよ、そのあいだ何度も。話が超合ってね」

 

母「お見合いじゃそうでもなかったのに?」

 

英司「だから違うじゃない、ああいう場所とふたりで会うんじゃ」

 

母「そお?」

 

渚「違いました。すごく弾んで」

 

母「でも2ヶ月で、家まで来てくれるなんて」

 

英司「そりゃ黙ってるのは心苦しいからさ、報告だけはって、わかるでしょ。とりあえずの報告よ」

 

母「ふーん」

 

渚「はい」

 

母「父さん聞きたいことは? ないの? いつもおしゃべりなのにずっと黙って」

 

父「しゃべり過ぎなんだよ母さんが」

 

母「あら私のせい? じゃあ黙るけど。どうぞ。聞きたいこと聞いて」

 

父「そんなン言われたら聞きにくくなんだろ」

 

母「どっちにしたって文句言う」

 

英司「やめてくんないかな喧嘩。みっともない(と苦笑)」

 

 

 

 

●英司の実家前

 

英司「(玄関のドアをあけ出てくる)」

 

母の声「まだ全然話し足りないんだけど」

 

渚「(出てきて後ろに)すみません」

 

英司「また今度ね」

 

母「(出てきて)今度っていつ」

 

英司「彼女の両親待ってるから」

 

母「何も今日じゃなくたって」

 

英司「こっちが先ってだけで、なんか言われるかもしれないし」

 

母「そお?」

 

渚「そんなことないけど」

 

英司「こういう時間差はなるべくね、ない方があとあと」

 

母「そうかな」

 

英司「じゃあ父さん、また」

 

父「(最後に出てきていて)ああ、わざわざありがとう。渚さんも」

 

渚「いいえ、今後もよろしくお願いいたします」

 

母「ほんとほんと、英司のことよろしくね」

 

 

 

 

●街路樹のある道

 

英司の車が走ってくる。

 

睦美の声「(先行して)やさしそうなお父さん」

 

 

 

 

●英司の車・車内

 

英司「(運転しつつ)あぁ、あれ美人で緊張してたんじゃないかな」

 

渚「まさか(苦笑)」

 

英司「でもちょっとあせったね。危ないとこあった」

 

渚「うん――」

 

英司「これは外せないってことは、グイグイ来て。困ったり迷った時は、お互い目で合図して」

 

渚「わかった」

 

 

 

 

●渚の実家・水谷家

 

両親が玄関から出てきて笑顔で「いらっしゃい」

 

前の道路に車を停めて降りた英司が「はじめまして、杉浦です」と父に挨拶する。母には「ご無沙汰してます。その節は」と挨拶。両親が「いいえ」「どうぞ」と招き入れる。

 

 

 

 

●水谷家内

 

テーブルに紅茶とケーキ。4人が座っている。英司は固くなっている。

 

父「そう、優秀なんだな」

 

英司「いいえ」

 

母「お仕事安定してるのはいいけど、英司さんご長男でしょう」

 

英司「はい」

 

母「渚はひとりっ子だし、どうだろって最初はね。でも大橋さんがぜひぜひって」

 

英司「あぁ、そうですか」

 

母「杉浦さんのお宅、ご実家が隣りの市だって言うから。大橋さんのお店がある駅ね」

 

英司「ええ、それで母とは、昔から知り合いで」

 

母「近いからいいかって。ついでにご挨拶してきたら? 杉浦さんのお宅(と渚を見る)」

 

渚「あ(英司を見る)」

 

英司「いや、実はさっき、こちらの前に寄ってきて」

 

母「そうなの?」

 

渚「うん」

 

父「先に?」

 

渚「いいじゃないどっちが先でも」

 

英司「あ、うちの方がこれから、夕方なんか用事があるらしく、それずらせないってんで仕方なく、ささっと切り上げて」

 

父「そう」

 

渚「そう(うなずく)」

 

母「一度両家で集まらないと」

 

渚「まだ早いよそんな」

 

母「(英司に)そうなの? 結婚とかってあれじゃない?」

 

英司「あ、いえ、勿論真剣なおつき合いのつもりですけど」

 

母「でしょう? 相手の親に挨拶するってのは。具体的にいつの予定? 式とか入籍」

 

渚「やめてよ。そんな圧かけないで。黙ってるのがやで言いに来ただけなんだから」

 

父「そうだよ。はじめて来てくれたんじゃないか」

 

母「でも早い方がいいでしょう。この子35よ。子供だって早い方がいいし」

 

父「よせって」

 

母「自分がいつも言ってるんじゃない。他人の孫がうらやましいって」

 

父「いま言うことじゃないだろ」

 

母「ずるいのよ私に嫌なことばっかり言わせて」

 

渚「もうやめて。みっともないと呆れちゃうよ英司さん」

 

母「そお? やんなっちゃう?」

 

英司「いいえー」

 

渚「なるなる。結婚なんてどんどん遠くなる。油断しないで」

 

 

 

 

●夜道

 

英司の車が走ってくる。

 

 

 

 

●英司の車・車内

 

運転している英司。助手席の渚。ふたりとも疲れてぐったりしている。これからを思って憂鬱。

 

渚「ごめんね、なんか」

 

英司「いやぁ、思ったより話すお父さんで、ほっとした」

 

渚「しんどくなったんじゃない?」

 

英司「初日はこんなもんでしょ。だいじょうぶ、想定内」

 

渚「うん――」

 

睦美の声「(先行して)おかえり」

 

 

 

 

●渚と睦美のマンション・玄関

 

渚「(帰ってきたところで微笑し)ただいま」

 

睦美「お疲れさま。どうだった?」

 

渚「ま、なんとかかんとか」

 

睦美「そう」

 

渚「心配ないよ(微笑で部屋へ)」

 

睦美「(見送る顔に)」

 

明の声「(先行して)うまくいったのそれで」

 

 

 

 

●英司のアパート

 

英司「(スーツの上着をハンガーにかけつつ)いったさそりゃ。誰だと思ってんの」

 

明「(テレビゲームの手をとめていて)誰よ」

 

英司「余裕に決まってんじゃん。任せとけ」

 

明「へぇ(ゲームを再開)」

 

ジングルベルが先行し、

 

 

 

 

●夜の街・情景

 

クリスマスに彩られた街。ツリーやイルミネーション。

 

 

 

 

●渚と睦美のマンションの最寄駅

 

改札そばに英司と明がいる。睦美が来て合流する。

 

 

 

 

●渚と睦美のマンション・通路

 

睦美を先頭に明と英司が来る。ケーキの箱や買い物袋を持っている。睦美が「ここ」とドアを指さす。

 

 

 

 

●渚と睦美のマンション・室内

 

リビングに飾られた小さなツリー。

 

キッチンで3人が料理をつくっている。パーティーの準備。

 

玄関のドアがあいて渚が帰ってくる。明が気づいて「おかえんなさい。お邪魔してます」

 

ロウソクに火が灯されたケーキ。

 

「メリークリスマース」の掛け声でシャンパンを抜く4人の笑顔。

 

料理を食べる。プレゼントを渡し合う。

 

 

 

 

●町の夜景

 

ジングルベルが遠のき、

 

 

 

 

●渚と睦美のマンション

 

明が窓から外を見ている。

 

睦美「(そばに来て)英司さん寝ちゃった」

 

明「ああ、ジジイだから、すぐ疲れんだ」

 

睦美「ひどーい(苦笑)」

 

ソファーで英司が眠っている。

 

明「仕事どうした?」

 

睦美「年内のつもりだったけど、引きとめられて。来年の2月、遅くとも3月いっぱいで」

 

明「そう。次の予定は?」

 

睦美「全然。しばらく休んだらって渚は」

 

明「渚さんの店、手伝うってのはナシなの?」

 

睦美「いつでも来てとは言われてるけど、さすがにここと仕事と一緒はね」

 

明「まぁね」

 

睦美「実際そうなったら彼女もやりづらいだろうし。お店が不景気とかなったら、勿論手伝うつもりだけど」

 

明「そう」

 

渚がキッチンで食器を洗っている。

 

明「いいマンションだね」

 

睦美「家賃はそれなりに」

 

明「折半?」

 

睦美「うん――渚の方がちょっと多め」

 

明「なるほど。これから平気?」

 

睦美「これから?」

 

明「あのふたりが結婚したら、睦美ちゃんはここでひとり暮らしってテイ?」

 

睦美「あぁ――」

 

明「高いのにって親に心配されたり」

 

睦美「確かに」

 

明「いや俺も、ひとり暮らしのテイなのに新居に越すと、もし親が来たいなんて言った時――そんなこと今までなかったけど、社会人になってからは」

 

睦美「うん」

 

明「物がふたり分あるのにひとり暮らしって通用するか」

 

睦美「うん――」

 

明「そのとき英司は退避するにしても、結婚したら簡単に実家ってわけいかない。まえ話したみたいにビジネスホテルとか」

 

睦美「ここに来ればいい」

 

明「迷惑かける」

 

睦美「それは誰の場合もそう。私の親が来てもそうだし、ふたりのどっちかの親が新居に来ても」

 

明「迷惑で済めばいいけど――」

 

睦美「うん?」

 

明「急な病気とか怪我とか、あり得るでしょ。事故とか。今までもそうだけど、これからも」

 

睦美「まぁ」

 

明「独身じゃまず親に連絡が行く。それきっかけでひとり暮らしの嘘も、それ以上もバレないかって」

 

睦美「うん――」

 

明「考えといた方がいいんじゃって」

 

睦美「どうする?」

 

明「だから、その――」

 

睦美「結婚?」

 

明「俺らもやっぱ進めた方が――どうかな?」

 

睦美「うん――」

 

明「そうすっと睦美ちゃんたちは、ここじゃなく新しい部屋を探すってことになるんだろうけど」

 

睦美「そうね、明君とここで住むってのは」

 

明「不自然。転がり込むみたいで」

 

睦美「でも結婚して、新居に越すなら」

 

明「睦美ちゃんは家賃の心配されない」

 

睦美「何かあっても」

 

明「まずは自分らで動ける」

 

睦美「うん――」

 

明「いかにも同居してる風に、荷物とか着替えとか、ふたりもそうだね、細かいとこは詰めるにしても、なるべくふたりと同時進行の方がいいんじゃって。前向きに、考えてもいいんじゃって」

 

睦美「――わかった」

 

 

 

 


このシナリオは小説の下書きとして書かれたものです。シナリオ全文はホームページでも公開中です。


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