「一度見た映画や漫画は二度と見ない、読まない」という知人がいました。
自分は逆で「気に入ったものを何度も見る人、読む人」ですから不思議がられました。
「え、だって結末わかってんですよね?」「わかってるのにまた見て面白いスか?」「もっと別の見た方がよくないスか?」
なるほどなるほど。
しかしたくさん見てもすごく気に入るものってなかなかありませんね。
週に2~3本映画を見てた時期はあったけどそのうち見る熱さえなくなりました。またイマイチだろう、と期待しなくなって。
人に聞かれれば「あれも見たこれも見た」と多少自慢にはなったけど、数を誇っても空しいし。少しも夢中になってないんですから。お気に入りの映画を何度も見る方がずっと心は満たされます。
その知人にとってはおそらく結末が大事だったんでしょう。どんな話か。その把握が目的で、わかれば終わり、済んだもの。
でも自分のようなタイプは結末だけでなく、過程や細部、全体を楽しんでるんだと思います。
初見はストーリーを追うのに精一杯。それを把握してからまた見ると、キャラクターの感情の微妙さに目が行く。それを踏まえてまた見ると、今度はその感情表現のうまさ、ストーリー運びの巧みさに気づく。噛めば噛むほど味が出る。
勿論それは気に入ったものの場合ですけど。ほとんどは一度見れば十分。深掘りしたいと思えず興味をなくす。
でもバチッとハマッたものは何度も楽しめますね。微妙な違いなんでしょうけど。自分の中で「間違いない」となったものは、安心してストーリーに乗れるし酔える。
その体感を欲してるんだと思います。最後はどうなる、という結論じゃない。
絶叫マシンが絶対安全、最後はスタート地点に戻るだけ、とわかっていても、またスリルなりを味わいたくて乗るように。
作る側はおそらくそれを望んでいるでしょう。
初見で面白いと思われたいのは当然ですが、できれば繰り返し楽しまれたい。
そのためにあえてややこしくする、一度ではわからないようにする、なんて手も見ます。
まぁ2時間の映画などはリピートしてもらうのもなかなかハードル高いですから。
その点じゃ音楽はいいですね。1曲だいたい3~5分ぐらい? お手軽です。
音楽はもうリピートされるのを前提に作られるものしょう。一度きりでいい、最後まで聞かれれば満足、という歌手や音楽家はほぼいなくて、繰り返し聞かれ、覚えられ、口ずさんでほしい、歌われたいものだと思います。
4分程度の曲でも繰り返し聞かれ、それが大勢の人になら無限の時間を生む。
何度も耳にされることで馴染み、その時期の記憶と共に刻まれ、時を経て聞いた時に親しんだ頃を思い出させる。無限の広がりを生む。
それは何度も繰り返されてこそ。
4分の音楽と、2時間の映画と、読了に半日かかる小説じゃ当然違います。またリピートに耐えうる魅力を持ったもの、そこまで自分とマッチするものは滅多ない。そして作る側が望んでも、無理に応える義理はない。
それでも「繰り返し見ない」「二度と読まない」とスタンスを固めちゃうのはもったいないなぁと思います。
まぁ好き好きですが。他人に左右されないのが本当の趣味ですもんね。