2階の窓から差し込む日差しは強く、彼の瞬きの回数は自然と増えた。マクドナルドは4階建てのビルで、2階は喫煙ができたので彼らはその窓際のカウンターに座った。彼はタバコを吸わないが、連れである彼女が吸うのだ。
細長いタバコを片手で取り出すと、彼女は忙しげに口にくわえ、火を点けた。彼は彼女の顔を覗き込んだが、何を考えているか何も読み取れなかった。彼女は窓から見える大きな通りを見ていた。
通りにはたくさんの人が往来し、その誰もが勇ましく歩いているように見えた。ひとつの目的に邁進するように。迷う事なく、疑う事なく。
不意に彼女は彼に顔を向け、思い付いたように言った。
「私はね、3日同じことを悩み続けられない。解決しなくてもね。3日目には気持ちが晴れちゃう」
彼女はタバコを揉み消し、コーラを飲んだ。コーラの容器の周りにはたくさんの水滴が付いていた。彼は汗みたいだなと思った。
「僕は何日も悩み続けちゃうんだ。しっくりくる答えが見つからないと悩みは終わらない。困ったもんだよ」
彼は彼女にそう言うとアイスコーヒーを飲んだ。彼の手にもしっとりと水滴が付いた。彼女はポテトをモグモグと食べながら、適当な言葉を探しているようだった。
「でもさ、悩みなんてひとつじゃないでしょ。いくつもあるのにそんなに悩んでたら体が持たないよ。どうしてんの?」
「確かに体が持たないよ。でも離れられない。すべての悩みは解決できるまで答えを考えつづけるんだ」
「いやぁね、そんなの。私はそんな性格ごめんだわ」
彼女はポテトとコーラを交互に口にした。しばらくそうした後、またタバコを吸った。彼はアイスコーヒーを飲み続けた。
しばらく彼らは黙然と眼下に横たわる通りを見詰めていた。彼はたくさんの人が行き交っている中で、ひとり佇む女性を見つけた。黒いロングコートに白いバックを持った、髪が長くまだ若い女性だった。
その女性は時計を気にしながら、誰かを待っているようだった。往来の左右をみながら、誰かを探していた。もうずいぶん待っているようで、ときおり座ろうかどうか迷うような動きもしていた。
ポテトを食べ終わった彼女はまたタバコを手に取って、彼に言った。
「でも私は、すべての悩みは自分で解決できる訳じゃないと思う。おしまいにすることはできても、進展することは自分ひとりじゃできないこともあるよ。時間や人、偶然が解決してくれることもあると思うの」
「時間や人、偶然が解決してくれるまで僕はどうすればいい?」
「気にしないで待ってればいんじゃない」
彼は彼女に笑顔で頷いた。ふと気付くと通りの女性は佇んでいた場所にいなかった。背が高く、品の良いダッフルコートを羽織った男性と腕を組ながらスキップするように歩き始めていた。
彼の隣に座る彼女は再びテーブルに置いていたタバコに火を点けて、煙を大きく吸い込んで吐き出した。彼はその煙に目をすぼめた。そして、煙の中で消えて行くその女性の後ろ姿を彼は見詰め続けていた。