ザワツク心の翳りは、何度も揺り返して、
絢子を苦しめた。
止まった時間に置き去りにされて、
周りから取り残されたように思えて、
孤独で苦しい時。
容赦無く忍び寄ってくる、
悪夢の影に怯えて、
体が震えてどうしようもない時。
幸せを感じれば感じるほど、
一瞬で何もかもが、
消えてなくなりそうな予感に怯える時。
宏の歌ってくれた子守唄を、
絢子は口ずさんだ。
☆*:.。. おやすみ 怖い夢 見ないように .。.:*☆
お空にぽっかりお月様
夜の帳も降りてきて
星もお空に散らばって
そろそろ眠る時間です
小さな花ハンカチを
小さな枕の下に入れ
君が 夢に 彷徨わないように
君が 夢から戻れるように
君が 怖い夢見ないように
朝 目が覚めて
優しい眠りから
起こされるように
明日が来るのを
喜べるように
ゆったりした気持ちになるまで、
繰り返し、繰り返し、
宏が、歌うように、
絢子をなだめてくれたのと、
同じリズムを、刻めるようになるまで。
悲しいことは、夜の中に眠らせて。
優しい朝を迎えられるように。
青くシンと寝しづまる夜の空気に、
迷いごとを全て解き放って、
緩やかに目を覚ませるように。
飛び立つ時を待つ鳥のように、
明日を迎えられるように。
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