絢子は、その日以来、
クマのぬいぐるみを大切にしてきた。
淋しかったり、切なくて仕方のない時、
抱きしめて眠った。
優しい気持ちになれた。
その一方で、
受け止められないプレゼントもあった。
折り合いをつけようとする人が、
絢子は苦手だった。
その場しのぎの関係を、
埋め合わせようとするかのように、
服やバックを買ってくれようとしたり、
高価な宝石類を、
プレゼントしてくれたりする。
絢子の誕生日に、
贈り物を用意してくれた人がいた。
ピンクのリボンのかかった箱を開けると、
可愛い花のペンダントがあった。
絢子は、赤い花の可愛いらしさに、
釘付けになった。
でも、
どうしても受け取る事が出来なかった。
プレゼントを仕舞い直して、
贈り主のポストに返した。
それ以来、その人には、会っていない。
ペンダントを身につけて、
鏡の前に立った時、
どうしようもなく、
何かがズレている感じがしたのだ。
ペンダントが、
絢子に身につけて欲しくないと、
嫌がっているみたいで、
身の置き所がなくなってしまった。
「わたには、ふさわしくない」
と絢子は呟いていた。