昔から、テレビに映る食べ物に強く影響されてしまう。

それは、ドラマだろうがバラエティーだろうがニュースだろうがCMだろうが、関係ない。

そこに映し出される食べ物が、無性に食べたくなってしまう。

特に、深夜に見せられる食べ物は、その影響が倍増してしまい、まるで拷問のようだ。

 

 昔、昭和の時代、正月が来ると必ずテレビで、あるCMが流れた。

「おせちもイイけどカレーもネ!」

というキャッチ・フレーズでお馴染みだったレトルト・カレーのCM。

 

 子供にとって、おせち料理はあまり嬉しくない。食べれるものは、玉子焼きとか栗きんとんぐらい。うんざりしているところへ、テレビからカレーのCM。母に「カレーが食べたい」と言うと、「じゃあ作ってあげる」と言う。ちがうんだなあー。テレビに映っているレトルト・カレーが食べたいのだ。しかし、当時はレトルト・カレーは高級品で、滅多に買ってもらえることはなかった。もちろん、母の手作りのカレーもオイシイのだが、そのカレーを食べながら、頭の中ではレトルト・カレーを夢見たものだ。

 

 因みに、当時のレトルト・カレーは、ニュー・モダンの最先端であり、「ボン・カレー」と「ククレ・カレー」の2種類しかなかった。どちらも庶民には中々手が出せない、憧れの食べ物だった。

 

 先日、深夜に何気にテレビをみていると、そこに映し出された食べ物は「モスバーガー」。

あ~、モスバーガーかあ、しばらく食べてないなあ~、うわ~ウンマソウだなあ~、タマランなあ~、食べたいなあ~。

この年になっても、やっぱりテレビに映し出される食べ物には、ものすごーく弱いのだった。

 

 翌日、夕べ観たモスバーガーが忘れられず、頭の中にチラついていた。

しかし、八ヶ岳山麓の森の中の我が家から一番近いモスバーガーは、隣の韮崎市に有り、車で信号の無い山道をけっこうなスピードで走っても片道40分以上かかる。往復するだけで1時間半を要するのだ。

 

 モスバーガー買いに行くのに1時間半はないよなー。めちゃくちゃ遠いじゃん。メンドクサー。遠すぎるんだよねえ。それに今時ガソリン代だってバカにならないしさー。有り得んよな。などと、ブツブツ言いながら、車のエンジンをかけていた。

 

 猛スピードで山道を下る。やがて山間から平地に下り、韮崎の繁華街が見えて来る。あ、あった! モスバーガーだ! そそくさと店内に入り、いざ注文。めったに買う事が無いモスバーガー、この際だからたっぷり買っちゃおう。モスチーズバーガーにテリヤキバーガー、ポテトにチキンに・・・。一人でそんなに食べれるものか。欲張りすぎだぞ。

 

 オーダーしたメニューがギッシリ詰まった袋を受け取り、なぜかドキドキしている。キョロキョロとあたりを確認し、ササッと車に乗り込みホッと一安心。ものすごいミッションを成功させたスパイの気分。トンボ帰りの車の中の自分は、満面の笑みである。

 

 自宅に戻り、お皿に広げ、さあ!食べよう! お供は、ビールでもワインでもなく、コーラにした。やっぱりハンバーガーにはコーラが似合うネ。うーん、旨い! コレコレ! あー、大満足。

 

 

 やっぱり、食べたいと思ったものを、その時に食べるっていうのは、最高の贅沢だ。

 

 子供の頃、レトルト・カレーが食べたいのに母の手作りカレーを食べさせられた。よくよく考えれば、母の愛のこもった手作りの方がよっぽど贅沢なのだろうが、レトルト・カレーが食べたかったのに食べれなかったという悔しい記憶は、いつまでも消えずに残るものだ。

 

 

 子供の頃と違って、歳を重ねた今では、おせちの料理のすべてが嬉しく、日本酒と共に美味しくいいただく。

でも、この歳になっても、やはりテレビの誘惑には勝てないのだった。

で、悔しい記憶を残さないように、ガマンせずに大人買い。

 

  「おせちもイイけどモスバーガーもネ!」