チーズフォンデュと聞くと、小洒落た西洋料理という響きがある。一昔前、誰が仕掛けたのか知らないが、なぜかこのチーズフォンデュが大流行した。名古屋にも高級レストランを気どったチーズフォンデュの専門店などが出来、ソムリエと称するスタッフが、ワインの薀蓄を垂れて接客をしていた。更に、輸入品の専用鍋や、専用の金串などがセットになった、家庭用チーズフォンデュ・セットなるものが飛ぶように売れたというから、日本人はお目出度い。オシャレで流行の最先端にいるつもりの人々は、ワインを取り揃えて、嬉しそうに毎週末にホーム・フォンデュ・パーティーを開いたことだろう。
でも、よくよく考えれば(よくよく考えなくても)、蕩かしたチーズにパンを浸けて食べるだけの、いたってシンプルなビンボくさい食い物なのだ!笑。事実その歴史は、スイスを中心にイタリア、フランスにまたがるアルプス山岳部の貧しい住民が、パッサパサに硬くなったパンを、なんとか食べるための手段として考案したものと伝わる。ようするに、ハイジが、オンジやペーターやその婆さん達と、ビンボくさい山小屋で毎晩食っていたアレだ。日本文化で例えるなら、飯に味噌汁をぶっかけた汁かけゴハンを、一心不乱にザブザブ食うのと同じレベルの食い物ということになろう。
まあ、貧乏人のヒガミはこれくらいにしておいて、つい先日、深夜のテレビで芸人がキャンプをする番組をやっていた。キャンプ・ブームとかで、ここ数年この手の番組はやたら多い。その中で、誰でもすぐに出来る、キャンプでカンタン、チーズフォンデュ!というのをやっており、そのカンタン・レシピを紹介していた。ふ~ん、なるほど、カンタンだなあと、ボンヤリ観ていたのだが、観終った後、よし!今度の休みにやってみようという気になっていた。散々チーズフォンデュをバカにしたような事を言っておきながら、結局テレビに乗せられる自分も、負けず劣らずお目出度いヤツなのであった。
さて、その休みの日にやってみたチーズフォンデュはどうであったか、というと・・・。大失敗であった。なんで失敗しちゃったのかなあ。テレビのレシピは分量などの説明はなく、いたってカンタンにこうやるだけ!という説明だったので、見様見真似でテキトーにやればイイと思ったのだが、チーズは蕩けているものの、口に入れるとザラザラして不味いのだった。コリャ失敗だ!う~ん、カンタンとは言え、やっぱりちゃんと食べた事がないものを作るのって難しいのね。決してチーズフォンデュという食べ物自体をバカにしていたわけではないが、やはり、その国、その土地、その民俗の、歴史的な食文化というものは、想像以上に奥深いものであるという事を思い知らされた夜であった。
久々の失敗にガッカリして、ヤケ酒ワインを飲み続ければ、約束通り欠伸の時間はやってくる。
悔しさは残るものの、チーズフォンデュを再チャレンジするつもりは、ない。
我々は分相応に、飯に味噌汁をぶっかけて、ザブザブ食うことにしよう。


