土壌硬度とレタスの成長の関係を検証する | あなたも農業コンサルタントになれる

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  わけではない / by 岡本信一

土壌硬度とレタスの成長の関係を検証する

 

前回からの続き。

【結論】

1. 保存性については台風による著しい品質劣化のため、明確な結果が得られなかった。

2. 栽培過程における成長速度が速すぎても遅すぎても保存時の劣化(重量の減少速度)が早い。

3. レタスの成長速度はほぼ70%が土壌硬度(土壌の硬さ)に依存する。残りの30%程度(特に成長後半)は圃場の温度や日照などの環境条件の影響を受けていると考えられる。2.から保存性を左右する栽培条件は土壌硬度と推測できる。

 

【結論3の根拠】

1. 今回、保存性が栽培条件のどういった要素に一番強く影響を受けるかを明確にするという目的のために、以前に実施した調査から、土壌硬度(土壌の硬さ)と収穫するタイミングが複数のパターンに分類できるように試験区設計(図3-1)を行った。(仮説)

図3-1:試験圃場の試験区設計

補足・・試験区は「慣行区(向かって左半分)」で黄色5、白色5の10試験区、「適正区(向かって右半分)」で赤色5、緑色5の10試験区を設定した。

 

そのために、試験圃場(圃場名:消防機庫約10a)の半分に、通常の本圃づくりにプラソイラーを畝に対して垂直・ランダム(等間隔ではない)に入れる工程を加えることで、土壌硬度が区画内でばらつくようにした。比較上そこを「慣行区」とした。一方、通常の本圃づくりをした残り半分を「適正区」とした。更に「慣行区」「適正区」から各10試験区の計20試験区を設定し、定植後から1週間ごとに試験区内のレタスをサンプリング調査した。各試験区の土壌硬度の分布パターンとそこから予測できる成長速度と終端株重量を図3-2、3-3に示す。なお、その他の栽培条件(品種、定植日、肥培管理、防除等)は試験区内で同じである。

 

図3-2:試験区ごとの土壌硬度の分布パターン

(全体:上、サンプル出荷区:下)

 

補足①・・赤・緑・白・黄は試験区を指す。パラメータ①、②は土壌硬度データから作物の成長に関係する代表的な要素を抽出したもの(Agsoil社)。プロットされている点の分散が小さければ作物の成長速度は均一であるが、分散していると成長速度はばらつく。

補足②・・土壌硬度分布:土壌の深さに対する硬さの変化のこと

<岡本注>現在土壌硬度分布は4つのパラメータで表している。そのうちの2つのパラメータを抽出したグラフ。土壌硬度のサンプル出荷というのは、保存性の調査のためにサンプルを出荷した場所である。

 

図3-3:試験区ごとの成長速度と終端株重量予測

(全体:上、サンプル出荷区:下)

 

 

補足・・赤・緑・白・黄は試験区を指す。パラメータは4種類あり、その関係によって成長速度と終端株重量が決まる。

図3-2のプロット位置に比べて成長速度や終端株重量がばらついているのは他のパラメータの影響を受けている。

<岡本注>縦軸は、終端株重量で上であればあるほど重く大きい。横軸は、成長スピードである。右にゆくほど早い。基本的には成長速度が早いほうが大きくなる傾向にある。

 

 

2. 各試験区の土壌硬度の分布パターンから計算した終端株重量の70%、80%、90%になる予測日を表2に示す。各試験区は同一圃場内にあり定植日・品種・肥培管理・生産者は同一条件であるが、土壌硬度の分布パターンの違いから成長速度にばらつきが出ている。参考に農研機構で開発したレタスの収穫予測シミュレーションで計算した収穫予測も併記した。

 

表2:各試験区の成長速度予測から計算した

終端株重量の70・80・90%になる予測日

 

参考・・黄色塗りつぶし試験区より第一グループ(早出し)、橙色塗りつぶし試験区より第二グループ(通常)としてサンプル出荷

<岡本注>土壌硬度分布の違いにより、約一週間程度の違いが出ている。レタスでは多くの場合、土壌硬度の不均一によりこの違いが出ているのである。

土壌硬度分布と初期のレタスの成長データがあれば、どの時期にどのような大きさになるのか予測が可能である。多くの作物で同じような予測が可能である。

そのためには十分な量のデータの測定を行い、解析が必要となる。現在その解析はAgsoil株式会社が行っている。

 

3. 各試験区で実施したサンプリング調査で測定した株重量の変化を、2.で計算した予測値と比較した。(図4)結果、計算値と実測値がほぼ誤算の範囲に収まっていることがわかる。

補足・・終端値は実測値から計算した近似値で終端株重量のこと。また成長速度は青の凸型カーブのピーク数値のこと。

どの試験区も共通して成長初期は回帰線と実測値はほぼ一致しているが、生育後半は環境条件(温度や日照など)の影響を受けるため回帰線とのずれが生じている。

 

<岡本注>

図4は数が多いのでブログの一番最後に列記する。

 

4. 1.2.よりレタスの成長速度は、明らかに土壌硬度の影響を受けており、同じ品種を同じ日に定植しても土壌硬度の分布パターンによって成長速度が変わるため、収穫予測もブレが生じる。3.より収穫予測がどの程度ぶれるかは、土壌硬度の分布パターンからおおよそ予測することが可能である。

5. 今回の試験では台風の影響で保存性試験に使用するレタスサンプルの品質が著しく悪かったため、もう一つの要素である収穫する時期によって保存性に有意差があるかどうかを確認することが出来なかった。ナラサキ産業様の試験結果(表1)から、少なくとも収穫予測日を超えている第二グループのサンプルの株重量10%減少日数がいずれの条件でも第一グループよりも短いことから、収穫のタイミングによって保存性が変わることは想像できる

 

図4:サンプル出荷試験区の成長速度と終端株重量と実測値比較

<岡本注>オレンジは、予測値で、青い○は実測値。以前見ていただいたように、5回目の測定では大きな出来の違いが出来ていたが、予測値と実測値はかなり近い。なお終端重量になったレタスで実測値で前回より小さいものもあるが、これは、一回の測定で持ち帰り糖度の測定を行うために違う個体であるためである。

青い線は成長スピードである。頂点が最も早い時期であり、この山が緩やかか急か、または高いかによりその成長の仕方が大きく違うということになる。見ていただくとわかるが、この山の大きさはかなり違いがある。


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