このままで
二択だった。生きることを許されるか、許されないか。見た目は平凡そのものの、見知らぬ中年の男が気紛れに決めるだけ。その決定は実にあっさりと下った。自分は、後者だった。その決定を受け入れるのに必要な時間は、そんなにかからなかったと思う。ただ、戸惑いはあった。こんなにも簡単に決まるのか、と。理不尽だの何だのは感じなかったように思う。狼狽えた、というのが一番近かったかも知れない。そうか、自分は死ぬのかと。けれど、自分はどうしても嫌だった。狼狽えたのは、これが一番の原因だと思う。首を切断されて殺される、と知っていたから嫌なのだ。想像力だけは逞しいから尚更嫌なものだ。首にノコギリでも何でもいい、とにかく刃物が当てられて、ギコギコと肉が削られるのだろう?痛い、とかそういうレベルじゃないだろう。そんなの、考えるだに恐怖だ。頭を撃ち抜くでも心臓を撃ち抜くでも何でもいい、とかくさっさと殺して欲しい。痛いのは大嫌いだ。そんな考えが顔に出ていたのだろう、顔馴染みの人物が助け舟を出してくれた。ここにあるタブレット2粒、こいつを飲めば麻酔がかかったみたくなる、と。その内死ぬから、痛みも感じなくて済む。殺される前に死ぬかもな、と。飲めば確定する。自分が死ぬことが。もしかしたら、首を切られずに済むかもしれない?そんな筈がある訳ない。男が既に判断を下したのだ、自分は死ぬ人間だと。それなら、もう自分に残された道は無いのだ。2粒、飲み込んだ。効果はすぐに現れた。一度、心臓が大きく跳ねた。身体の奥の方に熱を覚え、視界が大きく歪む。ふらついた。頭がぼんやりする。感覚が麻痺してきたらしい。浮遊感?だろうか。確かに、これなら痛みも感じなさそうだ。安心した。このまま死ねるなら、それがいい。呼吸がしにくくなってきた。しかし、痛みや苦しみはそこまで大きくない。視界も感覚も、痛みも苦しみも何もかもが、遠くぼんやりしている。このまま、-----結局、死にやすい死に方を求めてるのな。