「前世療法」という言葉を聞いたことがある方もあると思います。
アメリカの精神科医ブライアン・ワイス博士が、1986年に著書「前世療法」を出版し、世界的にも知られるようになりました。
前世と聞いて、胡散臭いものを感じる方も多いでしょう。それまでにも同じようなオカルト的な本は、数多く出版されていました。
なぜ、ブライアン・ワイス博士の著書が有名になったのでしょうか。
それは、ブライアン・ワイス博士がもともと通常の科学的な精神医学の研究者であり、精神薬理学と脳科学の分野で国際的な権威であって、そもそも前世などという「非科学的」な領域を全く疑っていたからです。
ところがある日、博士の前にこれまでの常識を覆すような患者が現れたのです。
アメリカの精神科医ブライアン・L・ワイス博士は、ある神経症の女性にある催眠療法を行っていました。
催眠療法は、過去のトラウマなどが原因となり不安感やうつ状態になっている方の治療として行われるものです。(日本の医療機関では殆どされていません)
ワイス博士は、いつものようにその女性に退行(現在から幼児期まで記憶を遡っていく)させるために催眠を行っていたところ、なんと記憶が前世まで退行してしまったというのです。
もちろんワイス博士はすぐに信じる筈もなく、ありもしないことをそれっぽく語っているのだと考えました。 そりゃそうですよね。もしあなたの友人がいきなり前世のことを詳しく語り始めても書物で読んだ知識を言ってるだけとか、それとも頭が変になったのかと感じると思います。
その患者の女性は、催眠療法で3歳まで退行しました。そこで彼女を襲ったひどい事件がありました。 実の父親から性的虐待を受けていたことを思い出したのです。その辛い記憶を掘り起こしながら、ワイス博士はトラウマ治療を行っていきました。
通常はそれでかなり症状は軽くなるはずでした。ところが、その後も彼女はひどい症状を訴えたのでした。息が出来なくなる恐怖、水や暗闇への恐れ、閉所恐怖への不安感、恐怖感が彼女の生活を脅かしていたのです。
ワイス博士は悩みました。3歳より前に彼女の身に何が起こったのだろうと。
そこで2歳まで退行させましたが、何も出てきませんでした。その後、ワイス博士は言いました。 「あなたの症状の原因となった時まで戻りなさい」と。
「アロンダ…、私は18歳です。建物の前に市場が見えます。……時代は紀元前1863年です。…その地域は不毛で、暑くて、砂地です…」
ワイス博士はびっくりして何が起こったのか分かりませんでした。 そして、さらに彼女に何年か先に進むように指示します。
「私の髪は金髪です。…私は25歳です。私にはクレアストラという名前の女の子がいます…」
その後、ワイス博士は彼女の症状の原因となった事件を探し始めます。どうやら洪水か津波がその村を襲ったかのようでした。
彼女は続けます。
「大きな波が木を押し倒してゆきます。…とても冷たい。子供を助けないと。でも、だめ…水で息がつまってしまった。息ができない、飲み込めない…塩水で。赤ん坊が私の腕からもぎ取られてしまった」
診察室の女性は、苦しそうに息をして、突然、ぐったりします。
「雲が見えます…私の赤ん坊も一緒にいます。村の人たちも…私の兄も」
その人生が終わったかのようでした。
ワイス博士は精神医学のあらゆる事例を思い浮かべ目の前の現象を説明しようと考えますが、どうしても説明できませんでした。そしてそれはある種の記憶に違いないと考えます。
ではどこから来たものか?
困惑の中、ワイス博士は更に催眠療法を続けていきました。
転生輪廻はあるのだろうか…
ワイス博士は転生輪廻に関する科学論文を読みあさります。
ある学者の論文では、転生輪廻の記憶を持つ2千人以上の子どもの例を集めていました。一度も習ったことのない外国語を話す能力を持った子どもなどです。
博士は次第に強い興味を抱くようになります。
博士が催眠療法を行っていたその女性(キャサリン)にはスチュワートという恋人がいました。二人はとても惹かれ合うのですが、いろいろギクシャクした問題もありました。 スチュワートがウソをついたり約束を守らなかったりと、彼女をひどく扱うのにスチュワートには逆らえなかったのです。
さらにキャサリンは喉にできたできものを取り除く手術をするのをきっかけに、とても強い恐怖心を覚えるようになりました。
その原因が明らかになるのです。キャサリンが催眠の中で話し始めました。
「私は少年です。…オランダです。1473年頃です。私は今、港にいます。…母が土鍋で料理をしています…」
その後、その少年は他の男性たちとカヌーに乗って敵地を偵察に行きます。そこで敵に出遭います。
キャサリンは突然喉を鳴らして叫び始めます。敵が後ろから襲ってナイフで喉をかき切ったとキャサリンは語ります。
死ぬ瞬間、少年(キャサリン)は敵の顔を見ます。それがスチュワートだったのです。現在とは違う顔をしていたが、同一人物であることが確かだったのです。
少年は21歳の生涯を閉じました。
ワイス博士はキャサリンの催眠を続けいくにつれ、次第に彼女が本当に前世のことを語っているのではと確信するようになっていきます。キャサリンも前世でのトラウマを語ることで、彼女を悩ましてきた様々な症状が治っていったのです。
何度か繰り返す催眠の中で、マスターという精霊たちが彼女を通してワイス博士にメッセージを送り始めます。 マスター達の世界は幾つかの次元に分かれていて、その魂の進歩の度合いによっていく次元が変わってくるのです。
その世界に行くまでに(この現世で)多くのことを学ばねばならない、そして自分の欠点に気がつかねばならない、もしそれを怠ると、次の人生に、その欠点を持ち越すことになるというのです。
その他のメッセージは次の通りです
『自分で溜め込んだ悪癖は肉体を持っている時にだけ取り除くことができる。もし争いの癖を取り除こうとしなければ、次の転生に持ち越される。』
自分と同じ波長をもつ人と魅かれ合うのは当然で、そうでない人たちと付き合うことも必要。我々は直観力を与えられているので、それに抵抗せず従うべき。それに抵抗すると危険な目に遭う。
人はみんな平等には作られていない。前世で徳を積んだ人は他の人よりも大きな力をもっている。
どう受け取るかは個人の自由です。私はこの本以上に「死ぬ瞬間」の著書で有名な精神科医キューブラー・ロスが書いた唯一の自伝「人生は廻る輪のように(邦訳)」に強い感銘を受けました。
「死ぬ瞬間」があまりにも有名になり過ぎたため、彼女が死の専門家であり、それが彼女の代表作ととらわれがちですが、実は彼女が最も伝えたかったことは「人生は廻る輪のように」の中に入っているのです。
書いてある内容はワイス博士の著書の内容にとても似ています。世界的に有名な実績のある精神科医が同じ結論に達しているのです。
この世に偶然ということはない、と。繰り返し彼女は述べています。