新型コロナウイルスの今年に入ってからの全世界死者数がすでに昨年通年の死者数を上回っているという記事をWall Street Journalが配信している。で、日本全体と東京についても調べてみた結果が下の表。データの出典は日経のこれや東京都発表のこれ。
全世界(累計) 日本全体(累計) 東京都(累計)
感染者数 死者数 感染者数 死者数 感染者数 死者数
2020.12.31時点 82,835,540 1,867,226 231,271 3,243 60,177 627
2021.06.15時点 176,272,503 3,812,116 776,565 14,083 167,416 2,183
2021.1.1以降の累計 93,436,963 1,944,890 545,294 10,840 107,239 1,556
これで見ると日本全体でも東京都で見ても感染者数、死者数共に見事なくらい増えている。日本全体の死者数はすでに去年の3倍、東京都でも2.5倍弱。コロナウイルスの第3波、第4波の影響がいかに大きかったかがわかる数字である。
さて政府は、「緊急事態宣言」から「まん延防止等重点措置」へ移行、オリンピックも観客を入れて強行開催するつもりのようだが、第5波があるかないかどんな判断でいるのだろう。
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個人的にはオリンピックやるやらずにかかわらず、これから第5波が始まる、いや始まっている、その可能性はかなり高いと思う。その理由は以下。
問題の第一はウイルスの変異株に対する評価。感染力とか重症化率、死亡率といった危険性で、最初イギリスで発見された変異株(アルファ型)はそれ以前の従来型より1.6倍の感染力と言われたが、今年に入って世界で猛威を振るっているインド型改めデルタ型変異株はさらにアルファ型の1.7倍の感染力と言われている。つまり最初のウイルスの2.7倍の感染力で、これは1人の感染者から平均2.7人に
感染することを意味し、感染の倍々ゲーム(かそれ以上)が始まるという事を意味する。日本ではまだデルタ型の発見は少ないが、それでも徐々に増えつつある。というかこれからどんどん増えるだろう。
更に悪い事に、このデルタ株については非常に懸念される研究結果が昨日6月16日付で日本医療研究開発機構(AMED)からプレスリリースとして発表されている。長いタイトルで 「ウイルスの感染力を高め、日本人に高頻度な細胞性免疫応答から免れるSARS-CoV-2変異の発見」 という。
これによるとデルタ型ウイルスの特徴であるL452R変異が、日本人の6割が持つ細胞性免疫「HLA―A24」から逃れる、つまり免疫機能が働かない株であり、しかも感染力も増強しうるというのである。このプレスリリースは「日本人あるいは日本社会にとって、他の変異株よりも危険な変異株である可能性が示唆されます。」と締めくくっている。
問題の第二はワクチン接種の遅さである。ファイザー社のワクチンは従来株よりは少し効果が落ちるというがそれでもデルタ株にも効くという話だが、感染の広がりの速さに接種は追いつけるのだろうか。アメリカ・カリフォルニア州やニューヨーク州はワクチン接種率が70%に達して、様々な規制が解除、経済が本格的に再稼働を始めようとしている。日本はというと65歳以上高齢者接種が全員予定通り行われれば7月末時点で終わり、全人口の27%程度、しかし職域接種は各企業ともまだ計画書の段階で厚労省の許可を待って準備開始、実際に始まるのはまだ先、しかも大手企業でも1万回とか2万回程度で接種率向上への効果は軽微。そうでなくても1日100万回は絵に描いた餅になっている。接種率が70%になれば日本も安全と言えるかどうかは不明だが、一応のメドとして考えるとすると、9月か10月になれば「安全」といえる状態になるだろうか。
せめてそのころまでオリ・パラ延期なら国民の合意も得られそうだが、秋はオリ・パラなんて言ってられない。首相の任期も衆院選挙も?計算だけが先にたつ、菅首相の行く手に待つは天国か地獄か。