東京スパイ大作戦に東京ジョー、そして東京暗黒街 | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

『東京スパイ大作戦』(1945年/監督:フランク・ロイド)は、ジェームズ・キャグニー主演のスパイ・サスペンス。

東京クロニクルの記者ニック(ジェームズ・キャグニー)は、大金をつかんでアメリカに帰国する仲間の記者オリーを見送りに行きますが、船室は荒らされオリーの妻が殺されています。オリーから連絡がはいり、急いで帰宅。オリーは拳銃で撃たれていて、ニックに日本の世界征服計画書を渡すと息をひきとります。この計画を世界に報せようとするニックの前に、謎の女アイリス(シルビア・シドニー)が現れ……

太平洋戦争前の日本が舞台ですが、日本ロケは行われておらず全てハリウッドのセットです。製作年度から考えて日本でのロケは無理だったでしょうね。田中義一首相が世界征服の計画を立て、その秘密を知ったキャグニーを殺そうとするが失敗し、東條と山本に後を託して神棚の前で切腹するというトンデモ映画です。田中や憲兵隊長が、細くて吊上がった目をした米国マンガに出てくる悪い日本人そのまんまなのが笑えます。キャグニーの日本語レベルは、現在の外人俳優の日本語レベルと同じ程度。

ところで、田中義一の世界征服計画というのは、1927年に書かれたと云われている“田中上奏文”がモデルになっています。「支那を征服せんと欲せば、まず満蒙を征服せざるべからず。世界を征服せんと欲せば、必ず支那を征服せざるべからず」という文句で始まるとされ、中国の新聞に掲載されたものが英訳されて世界中の注目を集めました。戦後の東京裁判でも問題にされましたが、結局“田中上奏文”の存在は否定されています。

 

『東京ジョー』(1949年/監督:スチュアート・ヘイスラー)は、ハンフリー・ボガート主演のラブ・サスペンス。

第二次大戦中、空軍パイロットとして活躍したジョー・バーノン(ハンフリー・ボガート)が8年ぶりに日本へやって来ます。ジョーは戦前の東京で“東京ジョー”というナイトクラブを経営。現在は旧友の伊藤(テル島田)が経営を引き継いでおり、伊藤から別れた妻トリーナ(フローレンス・マリー)が再婚して幸せな生活をしていることを知らされます。しかし、木村男爵(早川雪州)がジョーの前に現れ、トリーナが戦時中に反米放送していたことを種にジョーを脅迫。トリーナを戦争犯罪人にしたくないジョーは、木村の条件をのんで海外逃亡をしていた戦争犯罪人を韓国から密入国させますが……

日本を舞台にしていますが、殆どがハリウッドのスタジオ撮影。主人公(ハンフリー・ボガート)が冒頭で東京の街を行くシーンはスクリーン・プロセスで、東京ロケはスタンド・イン(顔が映らない)によるものです。責任とってのハラキリや、GHQの日本人情報部員の名前がカマクラゴンゴロウカゲマサ(鎌倉権五郎景政)という笑える箇所はありましたが、全体としてはおかしな内容じゃなかったです。早川雪州は、戦時中はパリで暮らしており、この映画がハリウッド復帰第1作。他にも多くの日系俳優が出演していま~す。

 

『東京暗黒街・竹の家』(1955年/監督:サミュエル・フラー)は、ハリウッド映画には珍しく、日本で43日間にわたってロケをした作品。

富士山麓で列車強盗が起こり、兵士が殺されアメリカ軍の兵器が奪われます。警視庁のキタ警部(早川雪州)とアメリカ憲兵隊ハンスン大尉(ブラッド・デクスター)が捜査を開始。数日後、東京の工場が襲われ、逃げ遅れたウェッバーが仲間に撃たれて死にます。ウェッバーを撃った拳銃と兵士が殺された拳銃が同じワルサーP38だったことから、ハンスン大尉はウェッバーの所持品を徹底調査。ウェッバーの軍隊仲間で刑務所から出獄したスパニア(ロバート・スタック)という男が日本にやってきます。ウェッバーが密かに結婚していたマリコ(シャーリー・ヤマグチ=山口淑子)からウェッバーがパチンコ屋で働いていたことを聞き出し、パチンコ屋を脅迫。パチンコ屋はサンディ(ロバート・ライアン)率いるギャング団の隠れ蓑で、サンディはスパニアの素性を調べ、仲間にしますが……

ロバート・スタックは、アメリカ憲兵隊の潜入捜査官で山口淑子と愛しあうようになるという役どころ。スタックはそれほど活躍せず、ロバート・ライアンが思い違いをして自滅していくという内容でサスペンスアクションとしては褒められたものではありません。東京に鎌倉の大仏が出てきたり、芸妓が着物を脱ぐとレビューガールになって踊るといった珍品ぶりを愉しめばいいのです。ロバート・ライアンの手下に、キャメロン・ミッチェル、デフォレスト・ケリー、ハリー・ケリー・ジュニアなどがいて、傍役陣は豪華で~す。