無宿人御子神の丈吉 | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

“無宿人御子神の丈吉”は、「木枯し紋次郎」でヒットをとばした笹沢左保の股旅小説を原田芳雄主演で映画化したシリーズです。

『無宿人御子神の丈吉・牙は引き裂いた』(1972年・東宝/池広一夫)

旅先で足の生爪をはがし、破傷風になるところを茶屋の女・お千加(北林早苗)に救われた旅人の丈吉(原田芳雄)は、しつこく言い寄る国定忠治の舎弟・九兵衛(南原宏治)と長五郎(内田良平)からお千加を救い、お千加と所帯を持って堅気になります。細工職人として幸せな生活を送っていましたが、商品を納めに行く途中で九兵衛一家に見つかり、左手の薬指と小指をつぶされます。治療を終え、家に戻ってみると妻子は嬲り殺しにされており、様子を探っていた九兵衛の子分を捕まえて白状させたところ、犯人は国定忠治・九兵衛・長五郎とのこと。お千加の赤いシゴキを帯に巻き、九兵衛一家に殴り込みをかけますが、一家にワラジを脱いでいた疾風の伊三郎(中村敦夫)との闘いで傷を負い、谷川へ落下。傷の養生をしている湯治場で、湯治客のお絹(松尾嘉代)をならず者たちから救います。伝三郎(阿藤海)を首領とするならず者たちが仕返しに湯治場を襲撃。居合わせた天狗の親分と呼ばれる旅人(峰岸隆之介)が情け容赦なく伝三郎を斬り殺しますが、人質にされていた旅籠屋の娘も殺されてしまいます。お絹から国定忠治が巳之吉(菅貫太郎)一家にいると教えられますが、それは九兵衛が仕掛けた罠で……

天狗の親分というのが実は国定忠治で、旅籠屋の娘を見殺しにする冷酷な面もあって、結構ミステリアスな存在。国定忠治は丈吉の妻子殺しに係わっているのか、疾風の伊三郎との対決はあるのか、続編を期待させる内容です。

アイパッチをした黒づくめの伊三郎は原作には登場しませんが、笹沢左保の別の股旅小説「北風の伊三郎」とよく似たキャラで、白い着物に赤いしごきの丈吉との対比がオシャレでしたな。

 

『無宿人御子神の丈吉・川風に過去は流れた』(1972年・東宝/池広一夫)

妻子を殺された御子神の丈吉が、仇の長五郎(井上昭文)を狙って榎松一家の花会に乗り込むが逆に捕まります。韮崎の重三郎親分(内田朝雄)によって命だけは助けられ、その後、重三郎親分の家出した娘お雪(中野良子)と係ることになるんですな。前作で片目をつぶされた怨みを持つ巳之吉(菅貫太郎)が丈吉を襲い、その戦いに巻き込まれてお雪は死にます。丈吉はお雪の遺髪を届け、重三郎親分から長五郎が国定忠治(峰岸徹)と松戸の助三郎(安部徹)のところにいると知らされ……

続編ということで、国定忠治や疾風の伊三郎(中村敦夫)が登場しますが、中途半端な扱いで、いてもいなくてもいいような存在です。長五郎も前作の内田良平から井上昭文に代わり、気に入らないなァ。

内容もエピソードを盛り込みすぎて、全体的に厚みがありません。女優との絡みも、前半の中野良子、後半の市原悦子と2話分のテレビドラマを観た感じね。前作が期待を持たせる内容だっただけに、しっかり作って欲しかったで~す。

 

『無宿人御子神の丈吉・黄昏に閃光が飛んだ』(1973年・東宝/池広一夫)

妻子を殺した3人の男のうち、2人は1部と2部で復讐したので、いよいよ国定忠治と対決かと思いきや、忠治が登場しません。忠治に頼まれて御子神の丈吉(原田芳雄)を殺しに来た風車の小文治(夏八木勲)との対決と友情の物語。

小文治は腕を風車のように回しながら閃光のように出刃包丁を投げる必殺技があります。だけど、労咳を患っており、先は長くないのね。ヤクザになる前は百姓で、その時に惚れた名主の娘お春(小川節子)に再会し、悪親分の下初雁の唐蔵(鈴木瑞穂)の手から守ろうとするのですが……

話の中心は風車の小文治で、丈吉は喀血した小文治を助けたことから、唐蔵との争いに巻き込まれるんですな。悪ヤクザに乱暴されそうになったところを丈吉に救われ、丈吉に纏わりつく鳥追い女お八重(安田道代)は、いてもいなくてもいい存在。復讐物語から同じ作者(笹沢左保)の『木枯し紋次郎』と同じ巻き込まれ型になっています。主人公を二人にしたことからアクションシーンが分断(継ぎが悪い)され、間延びしてますね。

シリーズとして続けようと考えたのかもしれませんが、平凡な出来(テレビ時代劇と大差なし)で観客は映画館に足を運びませんよ。