砦の29人とブラック・ライダー | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

西部劇で黒人が主演するようなことはなかったのですが、シドニー・ポワチエがその殻を破りました。それが『砦の29人』と『ブラック・ライダー』です。

『砦の29人』(1966年/監督:ラルフ・ネルソン)は、インディアンとの戦いを描いた正統派西部劇。

レンズバーグ(ジェームズ・ガーナー)は、友人のマカリスター少尉(ビル・トラバース)に呼ばれてクリール砦に行く途中で、アパッチに追われているエレン(ビビ・アンデルソン)を救います。エレンの夫グレンジ(デニス・ウィーバー)はクリール砦の貨物輸送人。砦に着くと、レンズバーグはマカリスターから妻だったインディアン娘の頭皮を渡されます。マカリスターはそれをコンチョ砦で保安官から手に入れたとのこと。新兵や食料・弾薬補給のために輸送隊がコンチョ砦へ出発するのでレンズバーグは同行することにしますが、エレンが夫から逃げ出してアパッチ部落に向かったことを知ってアパッチ部落へ。エレンは1年以上もアパッチの虜になっており、子どもを産んでいたんですな。隙を見はからってエレンとその子を連れ出したレンズバーグは、部落に子供や老人を除いて男の姿がないのに気づき、アパッチが輸送隊襲撃のために出発したと考え……

広大な荒野でガーナーがビビを救う、冒頭シーンのロングショット撮影にまず引きつけられます。アパッチと騎兵隊の攻防も迫力ある映像で展開しグッド。インディアンに対する偏見と差別といった厳しい切り口も見せており、見応えのある西部劇といえます。ニール・ヘフティの軽快な音楽もグッド。

シドニー・ポワチエが元騎兵隊員で野生馬を騎兵隊に売るカウボーイ役で出演。砦の司令官から調教した馬でなければ金を払えないと言われて、輸送隊に同行して売った馬の調教。ガーナーからビビを預けられ、アパッチ相手に大活躍。この作品以前の西部劇では黒人が活躍することはなかったのですが、ポワチエの存在により、以後の西部劇で黒人が活躍するのが当たり前になりました。

 

『ブラック・ライダー』(1972年/監督:シドニー・ポワチエ)は、白人にとって優等生的黒人俳優だったシドニー・ポワチエが監督・主演した西部劇。

西部へ移住する黒人幌馬車隊ガイドのバック(シドニー・ポワチエ)は、黒人を南部に連れ帰って小作人にしようとする悪党ディシェイ(キャメロン・ミッチェル)一味に狙われています。ディシェイの待伏せを何とか逃れ、疲れはてている自分の馬と、巡回牧師ルサフォード(ハリー・ベラフォンテ)の馬をコッソリ交換。ルサフォードは怒ってバックを追いかけます。ディシェイはルサフォードが引いているバックの馬を見て、バックの居所を教えたら500ドルやると勧誘。ルサフォードは黒人幌馬車隊でバックを見つけますが、バックが幌馬車隊にとって、なくてはならない人物とわかり……

ラストの悪党一味との戦いで、弾丸を使い果たしたポワチエたちの救援に駆けつけるのが、騎兵隊でなくインディアンというのが70年代からの西部劇を特徴づけていますな。スパイク・リーのような強烈な黒人視点に立った作品ではないですが、安手の低俗なブッラックスプロイテーション映画と異なり、良質な黒人娯楽映画に仕上がっています。

口琴を中心とした音楽や、二連式(横型でなく縦型)の散弾拳銃などの小道具にも工夫があって楽しめます。ただ、演出面では切れ味が今イチで、まどろっこしいところもあるんですけどね。ポワチエは相変わらずの優等生ヒーローで面白みはありませんが、ベラフォンテがこすからいが義侠心のある巡回牧師をユーモアたっぷりに演じて良い味を出していま~す。