橋蔵の若さま侍捕物帖(1) | 懐古趣味親爺のブログ

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1936年から1968年まで書き続けられた城昌幸の“若さま侍捕物手帖”を原作とする“若さま侍”は、映画では黒川弥太郎・坂東鶴之助(5代目中村富十郎)・大川橋蔵が、テレビでは夏目俊二・市川新之助(12代目市川團十郎)・林与一・田村正和が演じていますが、極めつけは大川橋蔵。橋蔵の“若さま侍捕物帖”は1956年の「地獄の皿屋敷」から62年の「お化粧蜘蛛」まで10本あります。

『若さま侍捕物帳・魔の死美人屋敷』(1956年/深田金之助)は、「地獄の皿屋敷」「べらんめえ活人剣」に続くシリーズ第3作目。

山城屋の娘おいくが土蔵の中で矢に刺された死体で見つかります。おいくは将軍の愛妾おえんの方に仕える奥女中で、妊娠して逃げ帰っていたことが目明しの小吉(星十郎)の捜査で判明。小吉から話を聞いた若さま(大川橋蔵)が現場を調べ、発見者のおいとの婚約者・文次郎が何かを隠していることに気づきますが、文次郎も何者かに殺されます。おえんの方の使いで出た奥女中のおみよ(丘さとみ)が、おえんの方の父親・阿部伊代之助(竜崎一郎)の下屋敷に連れ込まれるのをスリの伝三(山茶花究)が目撃。伝三がそのことを小吉に知らせ、阿部家用人・忠弥(江原真二郎)が屋敷からおみよを篭絡するために連れ出すのを若さまが目撃します。事件の黒幕である伊代之助の兄(岡譲司)は、何かと邪魔をする若さまを配下のお蝶(千原しのぶ)の色仕掛けで仲間に引き入れようとしますが……

密室殺人の謎は簡単に解かれ、事件の陰謀も簡単にわかります。妊娠しない愛妾の代わりにお附き女中の子を身代わりにして権力を握ろうとする無茶な計画なんですよ。襲ってくる敵をスイスイかわし、最後は大立ち回りで悪党成敗という、お気楽娯楽時代劇で~す。

 

『若さま侍捕物帖・深夜の死美人』(1957年/監督:深田金之助)はシリーズ5作目。

大工の棟梁・政五郎(加藤嘉)が殺され、政五郎に娘おあい(若水美子)との結婚を反対されていた旗本の次男坊が犯人と岡引き・遠州屋小吉(星十郎)はにらみますが、おあいも殺されます。船宿・喜仙でお糸(星美智子)相手にノンビリ酒を楽しんでいた若さま(大川橋蔵)が、小吉の頼みで捜査に乗り出すのね。骨董屋の金正(薄田研二)から絵図面を掏り取ったおゆみ(浦里はるみ)を助けたことから若さまは覆面の一団に襲われます。覆面の一団は、森田市郎兵衛(阿部九洲男)と三郎兵衛(富田仲次郎)の道場の門弟。政五郎の祖先が久能山東照宮の宝蔵を造ったことがわかり……

橋蔵が東映の一枚看板になるのはこの作品の後で、5作目までは1時間程度の添え物扱いでした。しかし、橋蔵のキャラと相まって“若さま侍捕物帖”はヒットシリーズとなったので、以後はA級映画に昇格。

 

『若さま侍捕物帖・鮮血の人魚』(1957年・東映/監督:深田金之助)は、シリーズ5作目。A級昇格し、傍役陣がレベルアップしています。

両国の川開きの日、素晴らしい花火が打ち上げられ、船宿の娘・お糸(星美智子)と花火見物をしていた若さま(大川橋蔵)は、強力な火薬が使われていることに気づくんですな。同じように気づいた人物が二人いまして、一人は火薬の発明者の江川了巴(進藤英太郎)、もう一人は廻船問屋・利倉屋(岡譲司)でした。花火職人、花火屋の番頭、花火職人を海で助けたという漁師が連続して殺されたことを目明しの小吉(星十郎)から知らされた若さまは、背後に大きな陰謀があることを直感し、捜査を開始します。

ネタを明かすと、江川了巴が尾張藩家老(坂東蓑助)と共謀して、九鬼家の遺臣が暮らす人魚島で秘密裡に火薬を製造していたんですな。その島から逃げ出した花火職人と関係者が江川了巴一味に殺されたのね。江川了巴は病気静養している尾張藩主(伏見扇太郎)を幽閉して尾張家を乗っ取り、強力火薬と九鬼家の遺臣を使って幕府転覆を計画していたんですよ。若さまは尾張藩主と密かに会って脱出させ、人魚島に乗り込んで九鬼家のお姫さま(大川恵子)を説得して反乱を止め、江川了巴の陰謀を砕くので〜す。

江川了巴一味や、強力火薬を手に入れようとする利倉屋一味から若さまは邪魔者として狙われ、チャンバラはたっぷりあるのですが、大川橋蔵のチャンバラはフニャフニャで見てられません。橋蔵のチャンバラが見られるようになったのは、『新吾十番勝負』以後ですね。内容的にも殺陣にも見るべきところはないのですが、東映時代劇全盛時の明るいムードがあふれていて、私は好きだなァ。

7作目以降は次回で……