うたかたの恋とみじかくも美しく燃え | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

ヨーロッパの二大心中事件の実話をもとに映画化したのが『うたかたの恋』と『みじかくも美しく燃え』です。

『うたかたの恋』(1936年/監督:アナトール・リトヴァグ)は、オーストリア皇太子と貴族の娘の心中事件を映画化。

19世紀末のウィーン、オーストリア皇太子ルドルフ(シャルル・ボワイエ)は学生たちが訴える政治改革に賛同していましたが、政治の実権は宰相ターフェ(ジャン・ドビュクール)が握っており、ルドルフはベルギー王女と政略結婚させられます。政治活動を封じられたルドルフは、鬱屈たる英気のはけ口を酒と女に求め、若い武官たちと日夜酒色に耽溺。そんなある夜、遊園地にお忍びで遊び行ったルドルフは、酔漢にからまれている令嬢マリー(ダニエル・ダリュー)を助けます。ルドルフは汚れを知らぬマリーに強く惹きつけられるんですな。マリーも皇太子と知らず、ルドルフを好きになります。劇場で再会した二人は互いの素性を知りますが二人の気持ちは変わりません。ルドルフはマリーの純真無垢な強い愛情を知り、ローマ法王に妻との離婚を申請。しかし、父王の強固な反対と、ローマ法王の請願却下によってあえなく挫折。しかも、マリーと永遠に別れることを命じられます。二人は宮廷舞踏会で心ゆくまで踊り、雪のウィーンを後に、遠いマイエルリングの山荘で死にます。

シャルル・ボワイエの身体から発する気品、ダニエル・ダリューの純真な美しさ、美男・美女の悲劇をロマンティックに謳いあげたメロドラマ。特にラストのシークェンスは、ドラマティックな盛り上げがすばらしく、印象に残るものになっています。皇族王族関係のスキャンダルは御法度だったので検閲で上映禁止になり、日本で公開されたのは戦後の1946年。私は未見ですが、後年(1968年)にオマー・シャリフとカトリーヌ・ドヌーブ主演でリメイク(監督はテレンス・ヤング)されています。主人公二人のイメージが合わず、この作品には遠く及ばないと云われていま~す。

 

『みじかくも美しく燃え』(1967年/監督:ボー・ヴィーテルベリ)は、19世紀に起きた近衛隊中尉と綱渡り芸人の心中事件をもとにしたメロドラマ。

1889年のスウェーデン。サーカスの綱渡り芸人エルヴィラ(ピア・デゲルマルク)と妻子を持つ伯爵スパーレ(トミー・ベルグレン)は熱烈な恋をしますが、道義的にも身分的にも許される時代でなく、二人は隣国デンマークへ駆け落ち。スパーレは近衛隊中尉だったことから脱走兵となり、捕まれば投獄されます。田舎のホテルに偽名で泊まり、愛の日々を過ごす二人。スパーレの同僚で親友でもあるクリストファが二人を見つけますが、二人の愛が強固であることを知り、逃げる二人をあえて見逃します。しかし、路銀のつきた二人は……

スウェーデンでは有名な心中事件のようですが、二人が愛しあうようになった経緯や駆け落ちに至る決断は一切語られず、愛の日々と心中までを描いています。ボー・ヴィーテルベリは、スウェーデンではイングマール・ベルイマン、ヤン・トロエルと共に三大巨匠と云われており、リアリスティックなタッチと詩的ムードを美しい映像で見せています。劇中で流れるモーツァルトの「ピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467」とヴィヴァルディの「ヴァイオリン協奏曲・四季」が映像にマッチ。音楽効果で詩情豊かに描いた作品で~す。