昼下りの決斗とモンテ・ウォルシュ | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

西部劇が衰退していくのに合わせるかのように、時代遅れの西部男を主人公にした西部劇が1960年代後半から70年代初めに作られていきます。その先駆けとなったのが『昼下りの決斗』(1962年/監督:サム・ペキンパー)と云えるでしょう。

かつての名保安官スティーブ(ジョエル・マクリー)が、昔の相棒だったギル(ランドルフ・スコット)と若造のヘック(ロン・スター)を助手にしてシェラ山中の鉱山から採掘された金を運ぶことになります。鉱山に行く途中で、恋人ビリー・ハモンド(ジェームズ・ドルーリー)との結婚のために厳格な父(R・G・アームストロング)に反抗して家を出てきたエルザ(マリエット・ハートレイ)を同行します。道中でヘックはエルザに惹かれ、エルザもヘックを好きになります。ビリーはエルザを兄弟共有の女にしようとしており、ヘックが助け出したことからスティーブたちはエルザを家に連れて帰ることにします。金を引き取った帰路、ギルとヘックが金を狙っていることを知ったスティーブは武器を取り上げますが、そこにハモンド兄弟が襲ってきて……

ペキンパーの映画監督2作目で、傍役で出演しているR・G・アームストロング、ウォーレン・オーツ、L・Q・ジョーンズ、ジョン・デイビス・チャンドラーは、その後のペキンパー映画には欠かせない存在。ジェームズ・ドルーリーとジョン・アンダーソンはこの映画だけですが、ペキンパーが監督した『ライフルマン』のエピソードには出演しており、当時はペキンパーの好みだったのでしょう。ジェームズ・ドルーリーは『バージニアン』で人気となり、ペキンパーとは縁のない存在となってしまいましたけどね。

ところで、この作品は私がランドルフ・スコットをリアルタイムで観た最初で最後の作品。ランドルフ・スコットの西部劇は名作じゃないので、名画座でもリバイバルでも上映されることがなかったんですよ。そして西部劇の老優となったジョエル・マクリーとランドルフ・スコットが時代遅れの老ガンマンを好演。銀行家との仕事の契約でマクリーは身なりを整えているのですが、上着からのぞいたシャツの袖口はボロボロで、説明しなくても金に縁のない生活を送ってきたことがそれだけでわかります。このような細かい演出が随所に見られ、登場人物像を膨らましています。アクションばかりが中心になって、人間が描けていない最近の映画にはない魅力ですよ。それにしても、人生のたそがれとなった男を描かせたらペキンパーは巧いなァ。

 

『モンテ・ウォルシュ』(1970年/監督:ウィリアム・A・フレイカー)は、時代の波に取り残されたカウボーイの物語。

西部開拓時代末期、モンテ・ウォルシュ(リー・マービン)とチェット(ジャック・パランス)は仕事を求めて昔馴染みの牧場主ブレナン(ジム・デイビス)を訪ねます。牧場は東部の企業に売られていましたが、ブレナンは牧場の責任者として残っており、二人は雇われてカウボーイ生活。モンテは酒場の花形だった昔の恋人マルチーヌ(ジャンヌ・モロー)とよりを戻し、チェットは金物屋の後家と親しくなります。しかし、時代の流れは厳しく、牧場は人員整理することになり、若者ショーティ(ミッチ・ライアン)は馘になり、チェットはカウボーイの足を洗って金物屋の後家と結婚することを決意。酒場が不景気になり、マルチーヌは遠くの町に去ります。同じように馘になったルーファスとパウダーとヤケ酒を飲んでいたショーティは、誤って連邦保安官を射殺して逃亡。チェットの結婚式に出たモンテはマルチーヌに逢いに行きます。マルチーヌは酔いどれの半病人。モンテはマルチーヌと結婚の約束をして帰ってきます。ショーティは無法者になり、牛泥棒をしてモンテがショーティの仲間ルーファスを射殺。モンテは昔のよしみでショーティを許してやりますが、ショーティはパウダーとチェットの金物屋を襲います。パウダーがチェットに殺されたことからショーティはチェットを射殺。モンテがショーティを追跡した時、マルチーヌが危篤という知らせがはいり……

最後の西部男たちを描いた“たそがれウエスタン”。キャンプ、喧嘩、柵の修繕、スタンピード(馬の暴走)、荒馬ならしなどカウボーイの日常がきめ細かく描かれている良質の西部劇。監督がカメラマン出身のフレイカーなので、しんみりした画調で、西部の挽歌を演出。西部劇初出演のジャンヌ・モローはこれまでのキャラと異なり、退廃していく可愛いフランス女役で新たな魅力を感じました。劇中で3回流れてくるママ・キャス・エリオット(ママス&パパスのメンバーの一人)の主題歌がしみじみとしていて、心に残りますな。ちなみに、原作はジャック・シェーファー。