折れた矢とアパッチ | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

公開当時、古色蒼然たるステレオタイプを打ち破り、インディアンを新しく同情的に描いた作品として評価された西部劇に『折れた矢』と『アパッチ』があります。

『折れた矢』(1950年/監督:デルマー・デイビス)は、実在のアパッチの酋長コチーズと友情で結ばれ、インディアンと白人の架け橋になろうとする男を描いた物語。

1870年のアリゾナ、トム・ジェファード(ジェームズ・スチュアート)は傷ついたアパッチの少年を救ったことから酋長コチーズ(ジェフ・チャンドラー)と知りあいます。アパッチは白人と争っていましたが、コチーズはトムの誠意だけは信じ、トムも機会あるごとにアパッチの集落を訪問。そうしているうちに、トムはアパッチの娘ソンシアレイ(デブラ・パジェット)と愛しあうようになり結婚。アパッチとの和平を望むハワード将軍は、トムを介してコチーズと会見し、休戦条約を結びます。コチーズのやり方に不満を持つジェロニモ(ジェイ・シルバーヒールズ)が駅馬車を襲いますがコチーズが救援。しかし、アパッチを敵対する白人がトムとコチーズを襲い、ソンシアレイが銃弾をうけ……

史実にもとづいたエリオット・アーノルドの小説『血をわけた兄弟』を原作にした西部劇。従来の西部劇と異にし、本格的にインディアンの立場から白人を描いた最初の映画ということで公開当時好評だった作品です。どの世界にも良い人間と悪い人間がおり、良い人種と悪い人種があるわけではない。コチーズを平和に向けて努力する指導者として描いた理想主義にあふれた映画で,現実はそんな甘いものじゃないのですけどね。

私が最初に観たのはテレビの洋画劇場。ジェフ・チャンドラーの精悍で威厳のあるコチーズをカッコよく思ったものです。その後30年前に、観たばかりだった『ダンス・ウィズ・ウルブズ』と比較しようとビデオで再見。白人サイドからみた理想的インディアン像を描いたにすぎないと実感しました。白人が演じるインディアン娘にも興味があって、デブラ・パジェットに注目。可憐なインディアン娘はグッド。ジミーでなくとも恋心を抱きますよ。ジミーを守ろうとして銃弾に倒れるデブラには、お涙頂戴です。通常は金髪に染めていますが、元々の髪の毛は黒。それでインディアン娘を演じることになったのですが、瞳はブルーなので茶色のコンタクトレンズをしたとのこと。その後、『最後の銃撃』でもインディアン娘を演じていま~す。

 

『アパッチ』(1954年/監督:ローバート・アルドリッチ)は、アパッチ最後の戦士を描いた作品。

最後まで白人に反抗していたアパッチの酋長ジェロニモが降伏し、戦士のマサイ(バート・ランカスター)もジェロニモと一緒にフロリダの収容所に移送されます。しかし、途中でマサイは脱走し、農夫として白人と同じ暮らしをしているチェロキー・インディアンに助けられたりして故郷に帰還。マサイはアパッチが自立するには農業が必要と、恋人ナリンリ(ジーン・ピーターズ)の父である酋長サントス(ポール・ギルフォード)を説得しますが、サントスは裏切って騎兵隊へ密告。再び捕らえられて護送されますが、わざと逃がして殺そうとするアパッチ嫌いのウェデル(ジョン・デナー)の逆をついて逃走。ただ1人山中に隠れて騎兵隊相手にゲリラ活動をし、ナリンリを拉致。マサイはナリンリが自分を裏切ったと思っていましたが、それが誤解だったことがわかり居留地へ帰そうとします。しかし、マサイを愛しているナリンリはマサイと行動を共にし、山小屋で結婚。騎兵隊スカウトのアル・シーバー(ジョン・マッキンタイア)と、ナリンリに恋しているインディアン兵士のホンド(チャールズ・ブロンソン)はマサイを執拗に追跡し……

インディアンのとるべき道は白人への同化と規定していたり、バート・ランカスターのワンマン映画だし、ローバート・アルドリッチの演出も後年の作品のような切れ味がなく凡庸。最初に観た時は、リアリティのない甘い作品だと思ったのですが、再見した時にはそれが心地良さになっていました。ジーン・ピーターズがランカスターに見せる情感にググッときたり、誕生した赤ん坊の泣き声でランカスターが戦いをやめるベタな展開を最近好きになっていましてね。