ありがとうとだいこんの花 | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

「善意の人々が助け合い、となり近所に感謝しながら仲良く生きていく」をテーマに始まったホームドラマが『ありがとう』(TBS系列で1970年から75年まで放送)です。母娘家庭を軸に淡々と日常を綴る内容で4シリーズ続きました。第1シリーズは婦人警官、第2シリーズは看護婦、第3シリーズは魚屋の看板娘、第4シリーズはカレー屋の娘とシリーズ毎に設定を変更。第3シリーズまでは、水前寺清子(主人公)、山岡久乃(母親)、石坂浩二(恋人)のレギュラー設定は変わりません。

でもって、第1シリーズ(70年4月2日~10月22日)ですが、主人公は東京下町の保育園に母親(山岡久乃)と同居している四方光(水前寺清子)。母親は幼稚園の栄養士として女手一つで光を育ててきましたが、光は母親が反対している警察官になりたくて嘘をついて警察学校に通い、婦人警官になります。このドラマのプロデューサー・石井ふく子は、ホームドラマの主人公の女性として水前寺清子が最適だと思いつきます。「四月新番組の主演者を誰にするかについて思いをめぐらせていたときに、たまたま、テレビの歌番組でチータ(水前寺の愛称)を見ました。爽やかで明るく、どこにでもいそうな親しみやすさにひかれ、どうしても出てもらいたくなった」と語っています。

水前寺は売れっ子歌手だったので、所属レコード会社には出演を断られたのですが、水前寺に直接交渉。石井の熱意に水前寺も承諾。美人というよりは庶民の代表のようなピチピチした現代女性、生活感覚の強い若い女性、遠慮会釈なく行動する積極性、こうした彼女のキャラクターを活かすヒロイン像として婦人警官を思いつきます。脚本はヒットドラマ『肝っ玉かあさん』で息の合った仕事をした平岩弓枝に依頼。水前寺が歌った主題歌は新曲が間に合わず、持ち歌の節々を急いで組み替えて作り直したもの。警察の同僚役で和泉雅子、恋人の刑事役で石坂浩二が出演。平均視聴率は25.8%。このドラマによって、当時は女性の仕事として知名度がなかった婦人警官にスポットがあたり、志願者が急増。スタッフが警視庁から表彰されます。

第2シリーズ(72年1月27日~73年1月18日)は、山の手にある総合病院が舞台に看護婦や医師、患者との人間模様が描かれます。看護婦があこがれの医師を射止めるというシンデレラ・ストーリーが視聴者に受けて最高視聴率56.3%を記録。第3シリーズ(73年4月26日~74年4月25日)は一転、水前寺は魚屋のいせいのいい5代目。石坂は八百屋の長男ですが美大を卒業してデザインルームに勤務しているスマートなエリート。同じマーケット内の魚屋・八百屋・肉屋の交流を軸に水前寺と石坂の恋模様が展開します。第2シリーズほどでないものの、視聴率は30%以上をキープ。

しかし、番組の人気とは逆に水前寺清子にとって弊害が出ます。水前寺のファンは歌手・水前寺よりも女優・水前寺に引きこまれていき、地方公演などで「チータ」と声をかけていた歌好きのファンまでドラマの役名で声をかけるようになる仕末。これがレコードの売上に影響し、売れ行きが悪くなります。「歌番組では着流しで歌っている私が、テレビドラマではミニスカートをはいている。これは、レコードを買ってくれているファンに、かけ離れたイメージを与えてしまったのでしょう」と水前寺は語っています。レコード会社も水前寺の出演を喜ばず、水前寺は降板を決意。

でもって第4シリーズ(74年5月2日~75年4月24日)は、佐良直美と京塚昌子のコンビでリニューアル。神田のカレー屋を舞台に近所のパン屋、下宿屋の学生たちとの交流を描きました。「水前寺・山岡が落花生の味なら、今回はマシュマロコンビ」がうたい文句。主題歌は佐良が自ら作曲して歌っています。残念ながら視聴率は落ち、このシリーズが最後となります。石油ショックで世の中は変わり、もう“ありがとう”とばかり言っていられる時代でなくなっていたんですね。

ちなみに、『肝っ玉かあさん』についてはココヘ⇒意地悪ばあさんと肝っ玉かあさん | 懐古趣味親爺のブログ (ameblo.jp)

 

『ありがとう』が母と娘なら、『だいこんの花』(NET=テレビ朝日系列で1970年から77年まで放送)は、父と息子の家庭を描いたドラマ。ずっこけ頑固親父と独身のハンサム息子、世代断絶時代に一石を投じたホームドラマで5シリーズ続きました。

元巡洋艦長の忠臣(森繁久彌)は、だいこんの花のように清楚で美しかった亡き妻(加藤治子)が忘れられず、息子・誠(竹脇無我)に常々「結婚するならだいこんの花のような女性」と言っています。誠が結婚する相手は第1と第3シリーズが川口晶、第2シリーズが関根恵子、第4と第5シリーズがいしだあゆみです。相手が変わる毎に職業も、設計技師、雑誌記者、出版社の編集者に変更。

私は第5シリーズを少し見ただけ(第1シーズンの亡妻役だった加藤治子が小料理屋の大坂志郎の妻役だった)なのですが、ストーリーは淡々と日常を綴る王道パターン。控えめな竹脇無我に対して、なにかというとすぐ軍隊のことを持ち出して説教し、誰にも相手にされないと小料理屋でオダをあげる森繁の面白さ。嫁を理想の女性に育て上げようとはりきるあまり、“嫁いびり”に走ってしまうのもケッサクでしたな。脚本は、『七人の孫』で森繁久彌のツボを知りつくしている向田邦子で~す。

ちなみに、『七人の孫』についてはココヘ⇒七人の孫 | 懐古趣味親爺のブログ (ameblo.jp)