次郎長三国志(東映) | 懐古趣味親爺のブログ

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村上元三の『次郎長三国志』は何度も映像化されていますが、最高傑作と云われているのが、マキノ雅弘が1952年~54年に東宝で作った9部作の『次郎長三国志』。それを東映で、4部作でセルフリメイクしたのが、今回紹介する作品。

『次郎長三国志(第一部)』(1963年)

桶屋の鬼吉(山城新伍)、関東綱五郎(松方弘樹)、大政(大木実)を子分にした次郎長(鶴田浩二)が、江尻の大熊(水島道太郎)の妹・お蝶(佐久間良子)と所帯を持ち、和田島の太左衛門(香川良介)と津向の文吉(原健策)の喧嘩仲裁で売り出しますが、後始末のために旅に出ます。法印大五郎(田中春男)と増川仙右衛門(津川雅彦)が子分に加わり、沼津の佐太郎(藤山寛美)とお徳(千原しのぶ)の世話になりますが、佐太郎夫婦は貧乏暮らし。仙右衛門と佐太郎が資金稼ぎに次郎長たちの着物をカタに博打をしますが、負けてスッテンテンとなり、裸で旅立つところで第一部は終わり。オリジナルの1~2部にあたります。

手馴れた演出で、テンポよく物語が進行していきます。役者たちの個性をひきだして、活き活きと演じさせるのは、マキノ雅弘の手腕ですね。次郎長もののお馴染みのストーリーでも、繰り返し観ても飽きません。

 

『続・次郎長三国志』(1963年)

裸で旅立った次郎長(鶴田浩二)たちは、仙右衛門(津川雅彦)とおきね(御影京子)の結婚を父親(進藤英太郎)に許してもらい、着物の手当てもしてもらいます。仙右衛門に遺恨を持っている赤鬼一家と喧嘩となり、その時、見物していた森の石松(長門裕之)が次郎長に惚れます。再会を約束し、旅を続ける石松は追分三五郎(大村文武)と道連れになり、賭場での投げ節お仲(丘さとみ)の艶な壷さばきに幻惑されてメロメロ。小川武一(近衛十四郎)の家で世話になっていた次郎長たちは、武一が開いた賭場が役人の手入れを受け、武一の身代わりとなって牢屋へ。その頃、清水港では黒駒勝蔵の身内の祐天仙之助(加賀邦男)が大熊(水島道太郎)の縄張りを狙っており、大熊の子分・駿吉(堺駿二)がそのことを知らせにきます。次郎長たちは百叩きの刑を受けて清水港へ。

第一部が公開されたのが10月19日で、この作品が公開されたのが11月10日です。マキノ雅弘:著の『映画渡世』によると、製作日数40日という会社の要請に対して34日間で仕上げたそうで、早撮り名人のマキノ監督にとって、そんなのは当り前だったんですね。早かろう悪かろうでなく、水準以上の作品にするところが凄いです。だけど、時間をかければ最良の作品になるかといえば別で、時間があるとマキノ監督はいじりすぎて悪くなる傾向があります。早撮り作品に傑作が多いんですよ。他の監督には見られない、天才マキノの特長で~す。

 

『次郎長三国志・第三部』(1964年)

清水港に帰ってきた次郎長(鶴田浩二)一家に石松(長門裕之)と追分三五郎(品川隆二)が、行き倒れの力士・八尾ヶ岳久六(遠藤辰雄)一行を連れてきます。彼らを助けるために相撲興行を計画し、同時に花会を催すんですな。黒駒勝蔵(丹波哲郎)が花会に訪れ、子分の大岩が遺恨のある三五郎を見つけます。大熊(水島道太郎)に遺恨のある勝蔵の身内の祐天仙之助(加賀邦男)が大岩と次郎長一家に殴り込みしようとするのを知った三保の豚松(佐藤晟也)が次郎長一家へ。次郎長一家は祐天たちを返り討ちにしますが、黒駒一家との関係が険悪になります。甲州にある大熊の賭場を荒らしまわる黒駒の身内・猿屋の勘助(石山健二郎)の様子を探りに行った投げ節お仲(丘さとみ)が勘助に捕まったという小政(里見浩太郎)の知らせで、お仲救出に次郎長一家は甲州へ。

大政が大木実から中村竹弥に、三五郎が大村文武から品川隆二になりました。二人とも役者としては悪くないのですが、シリーズ途中からキャストが代わるのは違和感があります。特に今回のように続けて観ている時はね。小政でもってシリーズ中の次郎長一家が勢揃いしたのですが、多彩な登場人物がバランスよく、調和のとれたアンサンブルを作り出しているだけにキャストは固定して欲しかったですねェ。

 

『次郎長三国志・殴り込み甲州路』(1965年)

猿屋の勘助(天津敏)に捕まった投げ節お仲(安城百合子)を救出するために甲州に向かった次郎長一家の援軍に江尻の大熊(山本麟一)がお蝶(佐久間良子)を伴って駆けつけます。次郎長一家は勘助を倒しますが、お蝶を連れての兇状旅となるんですな。お蝶は病に倒れ、力士時代に救ってやった八尾ヶ岳、今はヤクザとなった保下田の久六(遠藤辰雄)のところへ身を寄せますが、久六は二足ワラジで、次郎長を裏切り、代官と結託して次郎長を捕まえようとします。小松村の七五郎(待田京介)のおかげで難を逃れた次郎長一家は七五郎の家に厄介になりますが、お蝶は病死し、憎き久六を叩き斬ってシリーズ終了です。

オリジナルの1部「次郎長売出す」と2部「次郎長初旅」が第一部、3部「次郎長と石松」が第二部、4部「勢揃い清水港」と5部「殴込み甲州路」の前半が第三部、5部話「殴込み甲州路」の後半と6部「旅がらす次郎長一家」が本作品で、オリジナルは以後、7話「初祝い清水港」、8話「海道一の暴れん坊」、9話「荒神山」と続きます。監督自らがリメイクしており、シリーズ個々ついてはオリジナルよりストーリーが整理されていてテンポが良いんですが、本作品でキャストを大幅に変えたことで、シリーズ作品としては不満が残ります。大政が中村竹弥から大木実に戻ったのは是ですが、お仲が丘さとみから安城百合子へ、関東綱五郎が松方弘樹から曽根晴美へ、増川仙右衛門が津川雅彦から矢野圭二へ、大熊が水島道太郎から山本麟一へとマイナーチェンジです。オリジナルの魅力は役者たちの一体感にあったのですが、このシリーズでは最後でガタガタね。当初から四部作で製作する予定だったシリーズとのことで、オリジナルのようにキャストは固定して欲しかったで~す。