燃ゆる白虎隊と天皇の世紀 | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

歴史時代劇には名前を借りただけで殆どフィクションのようなものもあれば、歴史番組の再現ドラマのようなドキュメンタリーのようなものもあります。幕末を舞台にした『燃ゆる白虎隊』は前者で、『天皇の世紀』は後者。

『燃ゆる白虎隊』は、国際放映製作のテレビ映画で、1965年5月4日~7月27日にTBS系列で放送。モデルとなる人物はいるものの、主要登場人物の名前は変えてあり、お話は殆どフィクション。

鳥羽伏見の戦いで敗れた会津藩は、藩主・松平容保(中村竹弥)と家老・西条頼母(佐々木孝丸)は船で江戸へ逃げ、日新館館長・日向外記(中村竹弥の二役)と家老・梶原大作(神田隆)は陸路で会津を目指します。官軍の追手が迫っており、梶原はケガ人をおいていくと先を急ぎ、外記は日新館で学ぶ若侍・篠田雄三(清川新吾)や梶原の息子・和馬(三田明)たちとケガ人を守って官軍と戦いますが、足手まといになることを恐れたケガ人たちは自決。第1話から悲劇のエピソードね。その後も、和平の道をさぐる日向外記や西条頼母に好戦派の梶原が暗殺をしかけたりするような1話完結のフィクション・エピソードばかりです。

レギュラーは上記の他に、外記の妻・志保(加藤治子)、篠田に恋している外記の娘・美音(佐々圭子)、日新館の教授・河原田健吉(天野新二)で、エピソード毎に神山繁や二木てるみといったゲストが出演。

クライマックスの12回と最終回は、松平容保に従って滝沢峠に出陣した日向外記は、戸ノ口原の戦線がピンチということで白虎隊を率いて救援に行きます。しかし、外記に本陣に来るようにとの連絡が入り、深傷を負った梶原の代わりに容保を護衛して帰城。城を枕に討死にしようとする容保に、生きて汚名をはらすように説得し、白虎隊を捜しに戻ります。白虎隊が飯盛山に向かったことを知り、駆けつけますが白虎隊は既に自決。外記も自決してエンドです。

主人公の日向外記のモデルは白虎隊士中二番隊の隊長だった日向内記(ひなたないき)なんですが、日新館館長でもなければ末席家老でもありません。戦前は飯盛山で自刃した白虎隊を見捨てて城へ逃げ帰った卑怯者と云われていましたが、戦後は色々な資料によりこのドラマに近いのが真相と云われています。自決はしませんでしたけどね。脚本家の鈴木兵吾は、映画やドラマでは無能な上官として描かれる日向内記の汚名をはらしたかったんでしょうなァ。

ちなみに、ドラマにも出演していた三田明が主題歌を歌っています。

 

『天皇の世紀』は、1971年に朝日放送の開局20周年記念として9月4日~11月27日に放送された連続ドキュメンタリー時代劇。原作は大仏次郎の史論で、幕末から明治維新にかけた激動の時代を中心になる主人公を設けるのでなく、テーマに沿って描いています。1話ごとに完結していくわけです。

1話「黒船来航」は、ペリーと交渉する阿部正弘(田村高広)と川路聖謨(木村功)の物語。

2話「野火」は、黒船に乗って密航をくわだてる吉田松陰(原田芳雄)の物語。

3話「先覚」は、西洋砲術の先覚者・高島秋帆(中村翫右衛門と反射炉を作った江川太郎左衛門(高橋昌也)の物語。

4話「地熱」は、幕政の改革を訴える橋本左内(田村正和)の物語。

5話「大獄」は、井伊直弼(中村竹弥)と長野主膳(天知茂)による安政の大獄。主要人物として吉田松陰と橋本左内も登場。

6話「異国」は、咸臨丸による渡米。主要人物は木村摂津守(津川雅彦)・勝海舟(中山仁)・福沢諭吉(大出俊)。

7話「黒い風」は、過激な尊王攘夷派をとめようとする尾高長七郎(露口茂)の物語。

8話「降嫁」は、皇女・和宮の嫁入りの物語。主要人物として岩倉具視(伊丹十三)と田中河内介(丹波哲郎)が登場。

9話「急流」は、寺田屋騒動の物語。主要人物として有馬新七(滝田雄介)と島津久光(佐藤慶)が登場。

10話「攘夷」は、生麦事件から薩英戦争までの物語。主要人物として奈良原喜左衛門(日下武史)と岩下左次右エ門(新克利)が登場。

11話「決起」は、禁門の変の物語。主要人物として久坂玄瑞(田村亮)と高杉晋作(原田大二郎)が登場。

12話「義兵」は、吉田東洋暗殺の物語。吉田東洋(志村喬)・武市半平太(細川俊之)・坂本龍馬(山口崇)が主要人物。

13話「壊滅」は、水戸天狗党の物語。主要人物として藤田小四郎(峰岸隆之介)と武田耕雲斎(加藤嘉)が登場。

しっかりとした役者ばかりでなく、スタッフも豪華です。音楽は武満徹で、脚本には石堂淑朗・早坂暁・新藤兼人が参加しており、演出しているのが山本薩夫・今井正・蔵原惟繕・三隅研次・篠田正浩・佐藤純彌・吉村公三郎といった映画界のそうそうたる監督たち。“大政奉還”などの幕末後期の史実がなく、視聴率が低くて途中で打ち切られた感じがします。内容的には優れていますが、歴史を正面から見据えたため、娯楽的面白さがなかったからでしょう。歴史好きには好評だったんですけどねェ。