無用ノ介(2) | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

隠れた名作だと思っている『無用ノ介』(日本テレビ系列で1969年3月1日~9月20日放送)の第4話~8話を紹介。

第4話「無用ノ介・将棋・無用ノ介」

甲州の宿場町を荒らす将棋六花撰と呼ばれる凶悪犯がいて、無用ノ介(伊吹吾郎)は六花撰を追ってひとりずつ倒していきます。角兵衛・羅漢飛車を倒すものの深傷を負って療養。六花撰は首領ひとりを残すだけになっていましたが、無用ノ介と名乗って5人分の賞金を受け取った者がいるんですね。無用ノ介は自分の賞金を横取りした偽の無用ノ介をおびき出しますが……

屋根に上がった六花撰の瓦攻撃を防ぐために、大八車の下に潜り込んで捕り方が近づくシーンや、刀の鞘に仕込んだ刃物で相手の油断をついて無用ノ介が羅漢飛車を倒すシーンなど殺陣に工夫があって面白いのですが、映像面では全体的にひとりよがりが目立ちます。

六花撰の中では、常田富士夫が存在感ありました。アニメ『日本昔話』のナレーションと同じ口調なんですが、意外と不気味感が出ているんですよ。首領の御木本伸介は、これまでの個性派悪役と比べて今イチ。

 

第5話「夕日と弓と無用ノ介」

旅の途中で無用ノ介は、弓による果し合いを目撃。敗れた武士の仲間が勝った武士を襲うのを見て、無用ノ介はその武士に助太刀。無用ノ介が助けた武士は水堂(岡田英二)と名乗り、土砂崩れの峠の山道を百姓たちと修復しています。峠道が通れないので、無用ノ介は水堂たちが寝泊まりしている小屋に泊まりますが、胡散臭い浪人たちもいて……

冒頭の果し合いでの矢が首を貫くシーンと、ラストの弓と刀の決闘シーン(無用ノ介が弓の名人に対して、崖の上から坂を一気に滑り降りて接近する)は見応えがあります。

無用ノ介が野良犬と歩いていくエンドシーンに流れるのが、主題歌「ひとり行く」のB面「無用ノ介」(作詞:さいとうたかを、作曲:佐々永治)です。♪~破ればかまに、まつわる犬も、俺の目を見て、横をむく~。好きなんですよ、この歌。

 

第6話「剣につばする無用ノ介」

無用ノ介に追われた賞金首が心形刀流の道場に逃げ込み、無用ノ介は引き渡してくれるように頼みますが、老当主は賞金稼ぎを剣士にあるまじき行為とみなして無用ノ介に剣を捨てるように強制。そして、剣の道が何たるかを教えるので立ち会えと言います。無用ノ介は売られたケンカと考え試合をしますが、道場剣法に不慣れなため師範代の伊庭七郎(中村梅之助)に敗北。七郎は無用ノ介をそのまま帰しますが、刀を取りあげなかったことに不満を持つ門弟たちが無用ノ介を襲撃。真剣勝負においては無用ノ介の敵でなく、七郎は道場剣法を“竹ザオ遊び”と言った無用ノ介と真剣勝負を行う決意をし……

中村梅之助がメチャ巧いです。真剣勝負をしない剣客として一生過ごすつもりでいた七郎が、常に白刃の下に身をおいた生活をしている無用ノ介に興味がひかれ、墓荒らしをしている4人の浪人を一瞬のうちに斬り伏せ、真剣勝負に自信を持っていく心の変化を実に自然に表現しています。無用ノ介と七郎が対峙したまま、夕方~夜~朝と背景の色が変化していくのはカラーならではの演出。勝負の結果は、刀は重いのだよ。

 

第7話「無用ノ介、世直し不動にあう」

赤熊・中駒・大番という三組のヤクザが対立している宿場町へ、無用ノ介は南波兎角という賞金首を捜しにやってきます。南波兎角は也源流の剣の達人で、身体に刀傷があるということしかわかりません。無用ノ介は手掛かりを求めて大番の虎三(原保美)の用心棒になります。町民たちがヤクザの横暴に困り果て、窮状を番屋の役人(安井昌二)に訴えると、不動明王の仮面をつけた謎の怪覆面が現れ、ヤクザ退治を開始。最初に赤熊が世直し不動に殺され、次に大番が襲われます。そして、中駒が世直し不動に斬殺されるところを目撃した無用ノ介は、その太刀筋が也源流であることに気づき……

黒澤明の『用心棒』のようなタッチで始まり、あとはチャンバラ、チャンバラの連続。ラストの無用ノ介と世直し不動=南波兎角の対決まで、チャンバラの面白さが満喫できます。世直し不動の殺陣は、顔がわからないのを幸いに、殺陣師か殺陣の上手い斬られ役が演じているようで見応えがありました。このやり方は、チャンバラを面白くする方法として現在でも使えますね。

 

第8話「雨に消える無用ノ介」

盗賊団に襲われた槍の一平の死に際の頼みで無用ノ介は、一平の母に50両の金を届けることになります。その光景を目撃した東條造酒(大友柳太朗)は、無用ノ介が猫ババすると考え、山分けを要請。無用ノ介は、ちゃんと届けると言って断るんですが、造酒はしつこくついてきます。一平の故郷にやってきた無用ノ介は、休息のために立ち寄ったボロ小屋で役人に取り調べられている女おきぬ(左幸子)を目撃。やがて、おきぬが一平の母親とわかり……

六部の群れから無用ノ介が現れるオープニングと伊吹吾郎のナレーションが編集により少し変更。前回までの方がよかったです。

今回は左幸子が重要な役どころで出演。これまでは女優不在のエピソードばかり(少年マガジン掲載のマンガが原作なので当然か)でしたが、“子どもの命と金”がテーマで、複雑な母親の心理を見事に演じていました。それと、大友柳太朗がグッド。悪役なんですが、複雑なキャラクターを上手く表現しています。この頃の大友は年季が入って演技に幅が出ていますな。ラストの無用ノ介との立ち回りも、大友らしい殺陣を見せてくれま~す。

長くなったので、続きは次回で。