無用ノ介(1) | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

学生時代、行きつけの定食屋で飯を食べながら読んでいたのが『少年マガジン』です。その中で、梶原一騎の『巨人の星』『あしたのジョー』と並んで貪り読んでいたのが、さいとうたかをの『無用ノ介』ね。賞金稼ぎの浪人・無用ノ介の活躍は、西部劇(それもマカロニウエスタン)タッチで人気を集めました。当然テレビ化(日本テレビ系列で1969年3月1日~9月20日放送)されましたが、それほど評判にはなりませんでした。だけど、私は隠れた名作だと思っています。

第1話「虎穴にはいった無用ノ介」

30両の賞金首・赤砂多十郎(小松方正)を追って、無用ノ介(伊吹吾郎)が砂塵吹きすさぶ宿場町にやってきます。無用ノ介が多十郎の手下を片付けている隙に、老賞金稼ぎの地獄自斎(山形勲)が多十郎の首を獲ります。自斎は無用ノ介に300両の賞金首・押崎三兄弟(南原宏治・大前均・根岸一正)退治を一緒にやらないかと提案。自斎の押崎三兄弟への個人的恨みであることがわかり、無用ノ介は断ります。自斎はひとりで押崎三兄弟と対決しますが捕えられ、自斎の息子から事情を聞いた無用ノ介は自斎を救うために押崎三兄弟の隠れ家である古寺に乗り込みますが……

70年代安保を翌年に控え、鬱々とした気分が若者に漂いはじめた頃、無用ノ介がブラウン管に登場。「無用の子に生まれた用なし犬、この世に無用の悪を斬る。流れ流れの無用ノ介、どうってこたぁねぇんだ。どうってことは……いや、違う!」

伊吹吾郎のオープニング・ナレーションは当時の私の心情に食い込みました。本作を監修した内田吐夢が、主人公を評して「無用ノ介はチョンマゲをつけた現代の若者」と言っていますが、まさにその通り。主演の伊吹吾郎は、100人以上の候補者から選ばれただけあって原作のキャラクターにピッタシ。演技は未熟でしたけどね。共演者が個性的で、物語を面白くしました。山形勲の刀が小松方正を貫いた時、方正の顔面の刀傷がパッと赤くなるんですが、マンガチックの悪党の方正だからピタッときます。

「お前さんは強いよ。だが、甘い。その甘さが命とりになるぞ」と山形勲が無用ノ介に言うセリフは、山形勲にピッタシ。大前均が無用ノ介をどつきまわし、半殺しにするのも役柄にピッタシ。極めつけは南原宏治。原作そのままの格好で、不気味な可笑しさがありました。それに、居酒屋のオヤジ役が中村是好という絶妙のキャスティングです、ちなみに、原作もこれが第1話で~す。

 

第2話「無用ノ介の首500両也」

無用ノ介は、商家に押し入った盗賊“闇の狼”を追いかけますが、“闇の狼”の拳銃によって負傷し、祖父(吉田義夫)と暮らす少女(吉沢京子)に助けられます。ヤクザの鬼達が“闇の狼”の一味とわかり、無用ノ介が鬼達一家に乗り込んだ間に、鬼達一家の用心棒(伊丹一三)によって少女と祖父が殺され……

1969年は、カラーテレビはそれほど普及しておらず、カラー番組も少なく、カラー番組はカラーとわざわざ表示していました。民放の連続時代劇の初カラー化は、フジテレビの『大奥』(新シリーズ)でしたが、1週間遅れで『無用ノ介』もカラー時代劇として登場。カラー作品ならではの演出がされています。

第1話の小松方正の顔もそうですが、第2話でも無用ノ介が真っ赤な夕陽に顔を照らされるシーンがあります。モノクロだと全然印象に残らないでしょうね。無用ノ介の刀の鞘が赤いのもカラーを意識したからでしょう。

第2話は、“闇の狼”の正体が最後までわからないミステリータッチの作品。とは云っても、あまり重要でない役をアレレという役者が演じていたのですぐにわかりますけどね。第2話では、用心棒役の伊丹一三(当時は十三)が抜群。表情ひとつ変えずに、吉田義夫と吉沢京子を斬ってすてます。居合の名人で、無用ノ介と互いの動きを読みあいながら、路上ですれちがうシーンはゾクッとしましたよ。ラストの対決は、原作よりも伏線を活かしており、ドラマの方が優れていま~す。

 

第3話「吹雪が無用ノ介の肩で舞う」

無用ノ介が賞金首を峠の小屋で待伏せしていたら、弓を背にした少年がやってきます。外は吹雪で出ていけとは言えず、一緒に小屋で過ごすことになるのね。やってきた賞金首を無用ノ介が倒した時、少年が両親の仇を討とうとしていることが判明。無用ノ介が仇討ちの愚かさを諭し、少年を故郷に帰そうとした時、少年の仇である瀬降り兄弟が現れ……

悪役が悪役らしい顔で出てきます。賞金首・鑓道の銀三の佐藤京一は悪人顔だけでなく、チャンバラをさせると流石にうまいです。無用ノ介が銀三をやっとのことで倒し、喉の渇きを癒すため雪を貪り食らうシーンは実感として迫ります。瀬降り兄弟の福山象三と戸上城太郎の人相の悪いこと。これぞ悪役。とても少年の手におえる相手ではありません。結局、無用ノ介が助太刀することになります。

♪~生きていくのが、さすらいならば~の美空ひばりが歌う「ひとり行く」(作詞:石本美由紀、作曲:小野透)が、主題歌としてこの回から使われます。私はこの曲よりもB面の第2主題歌が好きなんですが、それはまた後で…… 

長くなったので、続きは次回で。