『五人の野武士』は、日本テレビ系列で1968年10月8日~69年4月1日に放送された三船敏郎がテレビ初出演した三船プロ制作による戦国時代劇。前回は三船敏郎出演のエピソードを紹介したので、今回はそれ以外。
5人の野武士は、利南八郎太(宝田明)・伴右近(中山仁)・伊賀良五平衛(人見明)・忍びの三太夫(高橋俊之)・甘楽主水介(松山省二)らしいのですが、5人揃って登場は11話と最終回だけ。
準レギュラーとして堺佐千夫の四方弁之進が第1話・2話・3話・10話・24話に登場するんですが、最初は彼が5人の野武士のひとりだと思っていましたよ。
第11話「少年ゲンと野武士」は、家来になりたいという少年ゲン(穂積ペペ)につきまとわれる右近が、八郎太・主水介・三太夫・五平衛と農民を守って悪領主(沢村宗之助)と戦う物語。八郎太は女(中原早苗)と気楽に暮らしており、ラストで戦いに参加です。農民の長役で徳大寺伸が出演。最終回は前回アップずみ。
八郎太と右近がリーダー的存在で、二人揃って登場するのは第2話・11話・最終回しかなく、どちらかが主演となって活躍。主演クラスでは、田村正和の新見新八郎が第10話・14話・16話に登場。
第10話「狼火砦にあがる」は、主水介と三太夫が織田から徳川へ運ぶ鉄砲200挺を奪い、炭焼きの市助(岡田英次)と娘たみ(嘉手納清美)の家に隠します。そこに、父の仇を捜す新八郎が、野田砦の侍(佐藤京一)に乱暴されそうになったたみを救って出現。五平衛と四方弁之進(堺佐千夫)もやってきて鉄砲を売る算段をし、五平衛と弁之進が武田軍に鉄砲を売りに行きますが失敗。弁之進が鉄砲傷を負います。武田軍にいた右近が二人に気づき、彼も合流。市助が弁之進の治療をするのを見て新八郎は、市助が父の仇であることに気づきますが、右近が止めにはいります。たみを誘拐して鉄砲を横取りしようとする野田砦の領主を新八郎たちが成敗。
第16話「野望に賭ける」は、新八郎・三太夫・五平衛・主水介は、黒田軍と赤星軍が対立している土地にやってきます。赤星将監(田崎潤)に雇われている女野武士・紫乃(土田早苗)の誘いで新八郎と三太夫は赤星軍へ、黒田軍の侍大将・植草大蔵(土屋嘉男)の誘いで五平衛と主水介は黒田軍へ。しかし、新八郎と敵将・植草の間に友情が芽生え、雇った野武士たちを利用した後、赤星が彼らを殺そうとしていることを知り、新八郎たちも黒田軍に味方します。
第14話は前回アップずみ。
他に印象に残るエピソードは……
第3話「女をつれて地獄へ行け」
豪商(香川良介)の娘(清水まゆみ)を誘拐した一味の女ボス役で沢村貞子、豪商の娘を好きになる女ボスの息子役で山田真二が出演。沢村貞子の武器は吹き矢。
第4話「隠し砦の決闘」
九頭竜玄蕃(戸上城太郎)に滅ぼされた土岐家の姫(吉村実子)に雇われた八郎太は、三太夫・主水介、それに山猫の甚太(大泉滉)と土岐家の残党が籠る隠し砦に行きます。残党を率いる典膳(今井健二)は八郎太に敵対心を持って対立。大泉滉が真面目な演技をしていて面白みなし。
第5話「おん大将のおん首」
苦戦している岩城康正(三津田健)に、八郎太・主水介・五平衛は自慢の腕前を売り込みにいきますが、出された条件は敵の侍大将を捕えてくること。途中で昔馴染みの野武士・孫兵衛(谷村昌彦)が加わり敵陣に潜入。侍大将の護衛についていた三太夫も味方に加わります。八郎太が侍大将の下女(小川真由美)と恋仲になったり、蚤を使った珍作戦を展開したりと、コメディタッチのエピソード。
第6話「地獄の釜の美女」
人買い商人(安部徹)に雇われた八郎太・三太夫・五平衛が商人の運ぶ金塊を横取りしようとする物語。五人の野武士でなく三人の野武士です。
第8話「戦乱に咲く」
戦場で負傷した主水介は農民の娘(御影京子)に介護されますが、傷は悪化しており、右近は医者(大友柳太朗)のいる村へ行きます。村の貯蔵米が野盗(田中浩)に狙われており、医者の娘(香山良子)が主水介を治療。野盗が村を襲います。野盗相手に見せる大友柳太朗の殺陣は一味違いますね。見ていて惚れぼれしますよ。中山仁たちは刀を振りまわしているだけ。
第9話「忍法“忍び返し”」
役者なりたての伊吹吾郎が城方の侍で出演していました。セリフはほんの少しですがヘタクソ。
第21話「陰謀」
領主が殺され、護衛役だった八郎太が犯人にされます。領主の息子(久保明)が八郎太を追って城を出た留守に家老(名和宏)が謀反。五平衛・主水介・三太夫は、家老に言い寄られる姫(磯野洋子)を守って八郎太と合流。四人の野武士が息子と姫のために城を取り返します。領主を暗殺した敵国の忍者役で加賀邦男が出演。
第23話「忍者の砦」
忍者の山に預けられている姫(生田悦子)を守る甲賀忍者と姫の幸せを願う八郎太・五平衛・三太夫との対決。殺陣師の久世竜が脚本を担当。
第25話「礫(つぶて)」
凄腕の武芸者を利用した後、殺そうとする悪領主を八郎太・五平衛・三太夫が成敗。片腕を失い、必死の修行でツブテ打ちの達人となった武芸者役で夏八木勲が出演。悪領主は須賀不二夫。
個々のエピソードには面白いものがあっても、シリーズドラマとしては破綻しています。謳い文句は、若き野武士たちの反抗と、野望を豪快に描いた戦国時代劇。当初は、誰もが1国1城の城主になりうる戦国時代が舞台ということで、5人はそれぞれに「我こそは……」という野心を抱いていてまとまりに欠けているところが面白かったのと、正義感はあっても、有利な敵に寝返ったり、攻め入った城の金を盗もうとしたり、盗賊の金を横取りしようとしたりして野武士のロクでなさが魅力だったのが、途中から弱い者に味方し、城主になるより自由に生きる道を選ぶという普通のさすらい浪人になってしまいました。
5人のキャラも、ころころ変わっています。萩原遼・内出好吉・山田達雄・西山正輝・田中寿一・丸輝夫が監督し、笠原良三・高岩肇・白坂依志夫・松浦健郎・広沢栄・石松愛弘・津田幸夫・馬渕薫・宮川一郎・藤木弓・川西正純・岡本喜八・八住利雄・久世竜が脚本を担当。船頭が多すぎますね。確固たるテーマがなく、中心となる脚本家もいなかったせいだと思われます。
同時期に稲垣浩監督による三船プロ制作の大作映画『風林火山』が撮影されており、馬の流用だけでなく、テレビ班も同行させて本作に活用しており、迫力のあるシーンが多いのですが、久世竜の殺陣は一本調子。宝田明の殺陣は三船のコピーで、ぎこちなさが目立ちます。欠点の多いドラマですが、人も物もない現在では作ることができない戦国時代劇ということで特筆できま~す。