剣(1) | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

「俺は名刀だ。すくなくとも自分ではそう思っている。しかし、銘がない。そのため、持ち人つねに定まらず。よく斬れるがゆえを以て、持ち人さらに定まらず」という小沢栄太郎のナレーションで始まるのが『剣』というオムニバス時代劇です。1967年4月17日から68年2月26日まで日本テレビ系列で放送(全45話)されました。黒沢映画の脚本家である小国英雄・井出雅人・橋本忍・菊島隆三が企画し、脚本も担当。篠田正浩・工藤栄一・中川信夫・加藤泰などが監督し、製作費も1本あたり7~8百万円かけており、レベルの高い作品が揃っています。

第1話「天下一の剣豪」(監督:渡辺祐介、脚本:橋本忍)

苦労して“終生大名人”の称号を得た剣豪が、名もなき旅の武芸者にアッサリ負ける物語。刀の持ち人は、剣豪・戸沢一刀斎(丹波哲郎)です。

戸沢一刀斎は、“天下一の剣豪” の名を守るために、織田信長(木村功)の要請で次々に挑戦者を破るんですが、事前に弟子(待田京介)を使って相手の調査をしているんですな。自分に有利な条件をつけて決闘に臨むのが面白い趣向。お姫さまを口説くスケベーなニセの一刀斎(西村晃)も現れるようになり、それを羨ましく思った一刀斎は、信長より“終生大名人”の称号をもらってストイックな生活から足を洗うと決めます。念願かなって湯治場で療養する一刀斎の前に、“終生大名人”を馬鹿にする武芸者(鶴田浩二)が出現。戸沢一刀斎と名乗ると、武芸者が「これまで戸沢一刀斎を3人斬ったが、お前は何人目だ」と応えます。「本物の腕前を見せてやる」と立ち合うのですが、アッというまに叩き伏せられ、名を聞くと宮本武蔵なんだってさ。時代が違うよォ。

 

第2話「山犬ともぐら」(監督:小野田嘉幹、脚本:早坂暁)

山犬のような野武士ともぐらのような百姓が味方の砦に脱出する駕篭を守って旅する物語。刀の持ち人は、畑の中で刀を見つけた百姓(緒形拳)です。

案山子に突き刺したら、カラスが刃に吸い寄せられて真っ二つ。刀を持っているだけで、百姓は強くなるんです。敵国に攻められ味方の砦に駕篭を運ぶ一行を襲った野武士(三國連太郎)が、逆に武将(志村喬)から駕篭の護衛を頼まれます。駕篭の中は城主の子を宿している愛妾(春川ますみ)で、砦に送り届けたら謝礼を出すとのこと。襲った時に野武士は駕籠かきまで斬ってしまったので、百姓を駕篭かきとして雇います。もう一人は武将の従僕(藤原釜足)がかつぐことになり、『隠し砦の三悪人』のごとく敵地脱出となるんですな。しかし、やっと辿り着いた砦は敵方に寝返っており、武将主従(実は敵をごまかす為に、藤原釜足が主人で、志村喬が従僕)は殺されてしまい、二人は愛妾を連れて逃げます。愛妾は産気づいて子どもを生みますが、赤ん坊を置いて何処かへ。野武士は追手と戦って死に、百姓は母(浪花千栄子)の待つ家に赤ん坊と戻ってきます。

ストーリーの面白さだけでなく、キャストも豪華で~す。

 

第3話「刀狩り」(監督:土井通芳、脚本:井出雅人)

刀狩りに来た武将と百姓たちの攻防を描いた物語。刀の持ち人は、刀狩りに来た城方の武将(石山健二郎)です。

落ち武者狩りで金を稼いでる百姓たちは、武将たちの命令でも素直に武器を出しません。それで、副将(南原宏治)があれやこれやの策をろうして武器の在処を探るのですが、百姓(山崎努)たちも武将たちの腹を読んでいます。最後の手段として庄屋(志村喬)を捕まえて処刑しようとしたところ、城が敵方に攻められて落城。刀狩りにきた侍たちは落ち武者となり、百姓たちは隠していた武器を持ち出して、落ち武者狩りを始めるので~す。

 

第4話「大阪夏の陣」(監督:土井通芳、脚本:国弘威雄・橋本忍)

徳川家を放逐された武将が怨みを晴らすために大阪方に加わる物語。刀の持ち人は、武将・塚田景清(田村高広)です。

塚田景清は石田家の家臣だったという理由で、秀忠(高橋昌也)の目に留まった妹を殺され、不当な扱いを受けて家康(島田正悟)によって放逐されます。大阪方に招かれて大阪城に入った景清は、淀君(山田五十鈴)を煽って徳川との戦いに駆り立てるんですな。真田幸村(岡田英次)は、そんな景清を不審に思うのですが、城方の誰もが景清を支持します。大阪方の和平対策は崩れ、夏の陣となって豊臣は滅ぶのですが、徳川に戻った千姫は大名になった景清を目撃するのね。景清は家康から、豊臣滅亡への戦を導く密命を受けていたので~す。

 

第5話「蝉時雨」(監督:小野田嘉幹、脚本:菊島隆三)

恋人のために侍となって出世を望む百姓の物語。刀の持ち人は、百姓の与吉(中村嘉津雄)です。

蝉時雨の夏の日、旅の琵琶法師(中村鴈治郎)が村の娘(九重佑三子)から死んだ恋人・与吉の話をききます。食べ物を盗みに来た夜盗が持っていた刀を手に入れた与吉は、侍になろうと考えるんですな。何気なく放り投げた刀が竹をスパッと切って、その切れ味に惚れこみます。足軽として参加した合戦で、落ち武者となった相手方の副将(佐藤慶)を運よく倒し(ムチャクチャに振り回した刀が木を切り倒し、副将に当たる)、首をとった手柄で足軽頭になります。しかし、恋人に報せに村へ帰る途中、今度は大将(遠藤辰雄)と出会い、二匹目の泥鰌を狙いますが逆に斬られてしまうので~す。

 

第6話「鰯の頭」(監督:中川信夫、脚本:小国英雄)

道場ではメッポウ強いのに、真剣勝負に恐怖心を持っている剣客の物語。刀の持ち人は、剣客・秋吉新八郎(加藤剛)です。

百姓が鉈代わりに使っていた刀を道場主(志村喬)が手に入れます。その道場に悪名高き道場破りの一団がやってきますが、病気の道場主に代わって弟子の秋吉新八郎が打ち据えるのね。道場主は新八郎に娘(伊藤弘子)を娶らせて、道場の後継者に考えているのですが、道場を狙っている師範代(菅貫太郎)が道場破り一味と結託して道場主を殺します。娘の仇討に新八郎が助太刀することになりますが、刀恐怖症で真剣では戦えないんですな。新八郎の母親(東山千栄子)が娘の持ってきた道場主の刀を、恐怖心がなくなる宝剣と暗示をかけ、新八郎に自信を持たせます。“鰯の頭も信心から”なんですねェ。志村喬は、2話・3話・5話にも出演しており、幅の広い演技を見せています。

 

第7話「待伏せ」(監督:篠田正浩、脚本:菊島隆三)

仇討に助勢することになった浪人の物語。刀の持ち人は、浪人・今戸の新六(平幹二朗)です。

新六は峠の茶屋で仇を待ち受けている姉弟と知り合います。仇(井川比佐志)には槍の達人(横内正)他2名が助勢についており、新六は金で助勢を持ちかけますが、姉(岸田今日子)は断るのね。むざむざ殺させたくないと、新六は仇たちが道を変えるように、多勢で待ち伏せていると彼らに報せるのですが嘘がバレて袋叩きにあいます。でもって、やられた仕返しに、無償で姉弟に助勢し、仇を討たせてやるのです。井川比佐志と横内正は、まだ有名になる前で、珍しく悪役。

 

第8話「夕映え侍」(監督:渡辺祐介、脚本:下飯坂菊馬・井出雅人)

父の仇を討つことになった暴力嫌いの侍の物語。刀の持ち人は千波竜之助(津川雅彦)です。

父(藤原釜足)を柴田孫兵衛(西村晃)に殺された竜之助は、仇を捜して旅に出ます。江戸で気楽に暮らしていたところへ、親類の藤田一衛(加藤武)から孫兵衛を見つけたという報せ。仇討なんかしたくない竜之助は、何やかやと理由をつけて延ばしているうちに、孫兵衛に逃げられてしまいます。それからしばらく経って、箱根の湯治場で竜之助はおこう(水谷良重)とネンゴロになるのですが、おこうが贔屓にしていた按摩が孫兵衛だったんです。偶然顔を合わせた二人は、おこうのとりなしで仲良くなります。そこへ、孫兵衛を追ってきた一衛が現れ、孫兵衛は一衛と相討ちで死んでしまうのです。夕映えの中、一人佇む竜之助。津川雅彦は女好きのいいかげんな侍がピッタリですね。藤原釜足は、1話(剣豪の従者役)、2話(武将の従者役)、5話(足軽役)、7話(茶店のオヤジ)と、志村喬と並ぶ、このシリーズの常連となっています。

 

第9話「檜谷の決斗」(監督:工藤栄一、脚本:菊島隆三・広沢栄)

落ち武者と村人との戦いの物語。刀の持ち人は村長の結城康政(志村喬)です。

戦にかり出されていた檜谷の農民が村に帰ってくるのですが、三人の落ち武者(岡田英次・青木義朗・蜷川幸雄)が村長の家を襲って、村長の娘を人質に家に立てこもります。家の中から、いかにして誘き出すかがポイント。娘の許婚者(新克利)を道案内人にして、援軍を求める隣国への使者となった蜷川幸雄を途中で新克利が隙をみて殺し、村人たちは援軍がきたように騙して、迎えに出た青木義朗を竹槍でグッサリ。そして、志村喬が岡田英次を斬り倒すのです。村長は、元は武士だったのだよ。

 

第10話「鷺と烏」(監督:土井通芳、脚本:菊島隆三・広沢栄)

国定忠治と名乗ったばかりに、本物に仕立て上げられるヤクザの物語。刀の持ち人はヤクザの広太郎(長門裕之)です。

娘を売った金を奪われて首を吊ろうとしている老人(三井弘次)を救った広太郎は、奪ったのが娘を買った女郎屋の山形屋(多々良純)と知り、国定忠治と名乗って金と娘を取り返します。日照りで年貢の取り立てに困っている百姓たちがその噂をききつけ、広太郎に名主(藤原釜足)との交渉を依頼。広太郎が忠治になりすましているうちに、周りから本物の忠治にされてしまいます。皆が認めたら烏も鷺になるんですな。八州回りの役人は、ニセの忠治と知りながら手柄が欲しくて広太郎を本物の忠治として捕えますが、本物の忠治(佐藤慶)を乗せた籐丸駕篭が通りかかり……

 

第11話「灯」(監督:小野田嘉幹、脚本:小国英雄)

仇として狙われる燈明台番士の物語。刀の持ち人は、番士の葛巻又十郎(三國連太郎)です。

島の燈明台の番士になっている又十郎を討つために姉弟がやってきます。姉のお市(渡辺美佐子)と又十郎とは婚約者だったのですが、又十郎は二人の叔父である家老を斬って逐電。しかし、腕が違いすぎて、いつでも討たれてやると言って、一緒に暮らすことになります。一緒に暮らしているうちに、又十郎が島民に慕われていることがわかるんですな。二人は仇討する気がなくなってきます。藩主の命令で新たな6人の討手が島にやってきますが、その中の黒木隼人(東千代之介)は又十郎より斬られた家老の方に非があったことを知っているので、やる気なし。又十郎に5人が斬られ、隼人は又十郎が討手との相討ちで死んだことにして帰って行くのです。常連の藤原釜足が又十郎の下僕役で、志村喬が村の住職役で出演しています。

 

第12話「残雪」(監督:高井牧人、脚本:安藤日出男)

剣豪と彼を仇と狙う娘の恋物語。刀の持ち人は、剣豪・片桐空鈍(木村功)です。

空鈍を訪ねてきた柳生十兵衛(内田良平)が、空鈍と知らずに墓守から空鈍が剣を捨てて世捨て人になった経緯をききます。挑戦してきた武芸者(小林昭二)を仕方なく斬った空鈍のもとに武芸者の妹・なみ(園まり)が入門。なみの目的は、空鈍の隙をついて兄の仇を討つこと。空鈍は笛を吹くなみを見て、含み針の秘術を教えます。その修行を通じて二人は愛しあうようになるのですが、武芸者の一門が空鈍を襲うんですな。空鈍はなみが手引きしたと思い問い詰めますが、なみは黙って自害します。なみの真実の愛を知った空鈍は、剣を封印して世捨て人に。十兵衛は墓守が空鈍と気づき一太刀浴びせますが、身を躱した空鈍は十兵衛の胸元に縫い針を突き刺して去って行きます。画像は園まり。歌手として人気絶頂の頃で、演技者としても魅力にあふれていましたねェ。

13話以降は次回へ