剣(2) | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

黒沢時代劇のような作品、ユーモアあふれたチャンバラ・エンターテイメント、歌舞伎や講談ネタを巧く捻った作品など、バラエティにとんだエピソードで楽しめる『剣』の13話以降を紹介。

 

13話「追分の風来坊」(監督:石川義寛、脚本:小国英雄)

元旗本の旅鴉が追分宿の悪ヤクザをやっつける物語。刀の持ち人は、旅鴉の又三郎(中村賀津雄)です。

追分宿にやってきた又三郎は、馬子稼業をしている佐兵衛(藤原釜足)一家を訪ねます。又三郎は旅先で佐兵衛の息子(入川保則)を斬ってしまい、お詫びのために息子に頼まれたと言って永代供養に貯めた30両を渡して立ち去るつもりでしたが、佐兵衛が病気なのをいいことに馬子稼業を独占しようとしている悪ヤクザの源右衛門(石山健二郎)が嫌がらせをしてくるので留まって戦うことになるんですな。慕う女(林美智子)を振り切り、悪を倒して去って行くのは股旅ものでは定例パターン。西部劇にもありそうな筋立てです。主人公は元旗本で、剣は強いし、柔の心得もあり、医術に通じ、笛は名取というスーパーヒーローで、1968年に『風来坊』という題名で独立したテレビシリーズになっています。中村賀津雄主演のテレビ時代劇なんて珍しいし、小国英雄が脚本を書いているみたいで、私の観たい未見の時代劇で~す。

 

第14話「天一坊と伊賀亮」(監督:土井通芳、脚本:橋本忍

有名な天一坊事件の物語。刀の持ち人は主人公の天一坊(津坂匡章)でも伊賀亮(島田正悟)でもなく、家来の赤川大膳(最上竜二郎)です。

本人は偽物だと思って徳川に一泡吹かせようと大芝居をうったのですが、本物のご落胤だったという皮肉な結末。軽薄だけど、どこか陰のある天一坊のキャラは津坂匡章(現:秋野太作)にピッタリでした。大岡越前の岡田英次と伊賀亮の島田正悟の対決もね。最後に捕り方相手に大立ち回りをする最上竜二郎は新国劇の役者かなァ。

 

第15話「あだ花」(監督:山田達雄、脚本:井出雅人・永井素夫)

想いを寄せる旗本家の娘に翻弄される下僕の物語。刀の持ち人は、下僕の伝七郎(ハナ肇)です。

当主が死んで跡取りのいない旗本家を断絶させない為に叔父(加藤嘉)が、旗本家の娘ぬい(しめぎしがこ)に婿をとらせることにします。ぬいは父が死んでも遊びまわっている奔放な女で、婿入りする相手が気に入らず、家の金と刀を持ち出して伝七郎と旅に出ます。ぬいに想いを寄せている伝七郎はぬいの言いなりなんですな。ぬいはそれを知っていて伝七郎を翻弄します。金を盗まれ、旅にも飽きたぬいは、伝七郎にかどわかされたと役人に訴え、伝七郎から逃げようとしますが、裏切られたと知った伝七郎は……

画像は、しめぎしがこ。テレビドラマや映画(大映)では悪女役ばかりね。変わった芸名だったので記憶に残っている女優で~す。

 

16話「居合必殺」(監督:小野田嘉幹、脚本:伊上勝・小国英雄)

荷駄隊の護衛を引き受けた二人の剣豪の友情と対決の物語。刀の持ち人は、左文字鬼十郎(山崎努)から木暮主水正(田村高廣)へと移ります。

道場破りをして刀を奪った鬼十郎に間違われて主水正が4人の武芸者に襲われますが、あっさり峰打ちで相手を倒し、迷惑料をふんだくります。そして、鬼十郎を見つけた武芸者たちは、鬼十郎にアッサリ斬られてあの世行き。二人のキャラと腕前がわかり、最初からひきつけられます。二人は腕を見込まれて、主水正は日当3百貫、鬼十郎は仕官を条件に同盟国に運ぶ荷駄隊に雇われるんですな。敵国から何度も襲撃を受けますが二人の活躍で同盟国境近くまでたどり着きます。そして、荷駄隊の目的が荷駄隊に紛れて道中する姫の同盟国への輿入れとわかり、鬼十郎は姫にムラムラとくるんです。敵国の襲撃で、主水正は鎖鎌の達人(安部徹)との戦いで刀を折ってしまい、鬼十郎から刀を譲り受けます。自分を仕官させる気がないという荷駄隊長と姫の会話を聞いた鬼十郎は隊長を斬り、姫を自分のものにしようとして主水正と居合対決。一瞬の勝負は西部劇の雰囲気です。全体的にも『ヴェラクルス』に似ていて、西部劇タッチの時代劇といえます。シリーズの中でも傑作のエピソードで~す。

 

第17話「珍説天保水滸伝」(監督:篠田正浩、脚本:橋本忍・伊勢野重任)

笹川と飯岡の大利根川原の大喧嘩の原因を与力が調査する物語。刀の持ち人は与力・石川金三郎(藤田まこと)です。

江戸町奉行(仲谷昇)から喧嘩の発端となった責任者を調査するように命じられた金三郎が関係者を尋問していくんですな。飯岡助五郎(松村達雄)も笹川繁蔵(三井宏次)も自分に責任はなく、相手のせいだと言いはり、結局、縄張り境界にいるチンピラヤクザ(砂塚秀雄と江幡高志)のケンカが発端とわかります。そのケンカも風が吹いて目にゴミが入ったことから始まっているんですね。“風が吹けば桶屋が儲かる”を逆手にとったコメディです。

 

第18話「四谷怪談」(監督:山田達雄、脚本:小国英雄)

お馴染み四谷怪談を少し捻った物語。刀の持ち人は、民谷伊右衛門(木村功)です。

貧乏旗本の伊右衛門は妻のお岩(北林早苗)に頭があがらない恐妻亭主。大金持ちの油問屋の娘・お梅が伊右衛門を見初めたことから、伊右衛門の悪仲間の直助(南原宏治)と宅悦(花柳喜章)が伊右衛門をたきつけてお梅をものにします。お梅は伊右衛門に夢中になりますが、伊右衛門は金だけが目当て。お梅と伊右衛門を一緒にするために宅悦がお岩を殺しに行きますが、逆にお岩に取り押さえられ事情を知られてしまいます。宅悦からお岩を殺したと聞かされた伊右衛門は生きているお岩を幽霊と間違えて殺してしまうのね。小心者で臆病な伊右衛門は気が狂って捕り方に捕まるのです。

画像は、北林早苗。従来のお岩さんと異なり、毒を盛られてお化け顔になることなく、綺麗なままです。最近は通販のコマーシャルでよく見かけます。

 

第19話「くノ一三度笠」(監督:石川義寛、脚本:小国英雄)

弟の藩の内紛を解決するためにお姫様と大目付の名代が活躍する物語。刀の持ち人は、剣術名人の綾姫(梓英子)です。

弟から藩の内紛の報せを受けた綾姫は旅の途中で大前田栄次郎(品川隆二)を捜す女侠客お粂(宮園純子)と知り合います。この二人に幼少の頃に生き別れた兄を捜す女盗のお新(深山ゆり)が加わり、股旅姿で悪党退治。藩は悪家老(小山源喜)が牛耳っており、家老と結託した悪ヤクザが町民を泣かせています。大目付名代の与三郎(津川雅彦)は姿を変えて、大前田栄次郎を手伝って家老と結託した悪ヤクザ退治。家老の不正を訴えて牢に入れられたお新の兄を助け出し、悪家老の罪を暴いてメデタシ、メデタシ。

 

第20話「宗龍寺の反乱」(監督:石川義寛、脚本:井出雅人)

家督相続をめぐり藩と対立した若手藩士の物語。刀の持ち人は、藩士・海野順平(緒形拳)です。

病気持ちの嫡子を廃して他家から養子を迎えようとする家老・柴山佐渡(辰巳柳太郎)に反抗して順平たち20人の若手藩士が宗龍寺に立て籠もります。討伐隊が襲撃しますが、堅い守りに時間ばかりが経過するのね。藩士たちの方にも打開策がなく、順平は佐渡を殺すために佐渡の屋敷に単身斬りこみます。しかし、失敗して捕えられ、佐渡から「お前は殺したくない」と刀を渡され、仲間を説得するように促されて解き放たれるんですな。この騒ぎは幕府に知られ、御家取潰しの危機となります。立て篭もった藩士たちは順平が生きて戻ったことから疑心暗鬼に陥って分裂し瓦解。藩士役の一人に石橋蓮司が出演していました。新国劇の連中が立回りをしており、集団対集団の殺陣は見応えがありましたね。

 

第21話「旗本と町奴」(監督:篠田正浩、脚本:橋本忍)

御存知、水野十郎左衛門と幡随院長兵衛の物語。刀の持ち人は水野十郎左衛門(丹波哲郎)です。

旗本と町奴は犬猿の仲、旗本白井家の刀が無くなり、旗本たちは町奴の頭領・幡随院長兵衛(芥川比呂志)が口入れした中間が盗んだと因縁をつけるんですな。長兵衛は中間から刀を盗んだのが、白井家の息子・権八ということを訊きだします。旗本と町奴が権八を捜しますが、見つけた時は権八が芸者・小紫のために刀を売り払った後。刀は巡り巡って旗本白柄組の頭領・水野の手に。長兵衛は水野の屋敷を訪ね、互いに認め合うのですが、水野の子分(南原宏治)が長兵衛を騙し討ちにします。水野は責任をとって切腹。お馴染みの登場人物ですが、従来の話と異なり、刀をめぐる内容に変えています。

 

第22話「大もの小もの」(監督:土居通芳、脚本:井出雅人)

大塩平八郎の乱に加担することになった若侍の物語。刀の持ち人は若侍・相馬仙太郎(太田博之)です。大塩平八郎(中村竹弥)を崇拝する仙太郎は平八郎の塾に入門しますが、平八郎からは軽んじられ、仲間からは馬鹿にされます。実際、仙太郎はマザコン青年で、何にでも同調する軽い男。平八郎に気にいってもらうために刀を献上するのですが、平八郎はその刀を他の塾生に下げ渡します。平八郎に信用されるものの、平八郎が乱を起こすことを知った仙太郎は母親に相談し、日頃の不満もあって奉行所に密告。大塩平八郎の乱が、意外なことから露呈するので~す。画像は、太田博之。子役から都会的甘さをもった青春スターとして人気がありました。

 

第23話「岡場所の女」(監督:若杉光夫、脚本:野上龍雄・井出雅人)

二人の男の間で心が揺れる女郎の物語。刀の持ち人は、女郎おひさ(吉行和子)のもとに通う与力の息子・兵馬(伊藤孝雄)です。

おひさには愛人の七之助(佐野浅夫)がいるんですが、毎日やって来る兵馬に心が惹かれていきます。七之助が嫉妬して、兵馬が惚れている証拠を見せろとおひさに言ったことからおひさは兵馬の刀を盗んで七之助に渡します。おひさは兵馬が笑って許してくれると思ったのですが、激怒しておひさを罵倒するのね。七之助は兵馬の父(芦田伸介)から女房を寝取られた代償として刀をネタに50両せしめます。父から厳しく叱られた兵馬は、おひさを愛していることに気づき、おひさを足抜けさせようとしていた七之助を斬るのですが、おひさの心は既に兵馬から離れているんですな。劇団民芸が全面協力しており、これまでとは色合いの異なる人情時代劇になっています。大滝秀治もチョイ役で顔だけ見せていましたよ。

 

第24話「吉良の用心棒」(監督:土居通芳、脚本:菊島隆三)

腕前はかっらきしダメなのに吉良の付け人になった浪人の物語。刀の持ち人は、吉良の用心棒・鬼塚又十郎(山崎努)です。

愛する女(野川由美子)と所帯を持つために付け人を募集している吉良家を訪ねた又十郎は、家臣と立ち合うことになります。腕に自信がないので負けるつもりで無心に構えていたら、相手が勝手に怖れてギブアップ。用心棒として吉良家に雇われます。赤穂浪士の討入が予想され、お金をもらったらサッサと逃げ出すつもりでしたが、吉良上野介(辰巳柳太郎)に気にいられズルズル過ごすことになります。辰巳柳太郎の吉良が結構愛敬があって憎めません。浅野に会った時から何となく虫が好かなくて、意地悪したというのね。別に悪気があったわけじゃなく、軽い気持ちだったのに、浅野は深刻に受けとめて刃傷におよんだというわけ。結局、又十郎は討入で命を落とすので~す。

25話以降は次回で……