文五捕物絵図 | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

『人形佐七捕物帳』『池田大助捕物帳』に続くNHKの金曜時代劇第3弾が『文五捕物絵図』(1967年4月7日~68年10月11日放送)です。

主人公の文五(杉良太郎)は、隠居した父・文五郎(東野英治郎)の跡目をついだ若い岡っ引き。同心・長谷源八郎(中村竹弥)の下で、よき相談役の父・文五郎、しっかり者の下っ引・丑吉(露口茂)、配下となって働いてくれる小間物屋の与之助(東京ぼん太)・大工の三次(松川勉)・板前の矢七(常田富士男)たちの協力のもとに難事件を解決していきます。原作は松本清張の『文五捕物帳』ですが、江戸時代の天保年間に、神田明神下で起こった話にするという設定だけを借りて、さまざまな清張作品を時代劇に置き換えてドラマ化。時代劇というよりは現代的な社会派ドラマを意図して制作されました。この社会派的な時代劇をドラマ化するにあたり、当時新進気鋭の脚本家と演出家を起用。脚本家では、倉本聰・杉山義法・佐々木守など、演出は当時NHKの精鋭であった和田勉と安江泰雅が中心となって担当。1年の放送予定が好評だったので半年延長されます。

和田勉はヒットの要因を次のように解説。「第1は、新人俳優を思い切って起用し、ワキを達者な俳優で固めたこと。第2は、1時間ドラマが少なかったときに、1時間たっぷり放送したこと。さらに、前後編を組み合わせた2時間ものにして、じっくり取り組んだ。第3は、倉本・和田、杉山・安江など、脚本家と演出家がコンビを作り、協力体制を敷いたこと。そして第4は、大物ベテラン俳優が毎回ゲスト出演したこと。以上4つの要因が挙げられる」とのこと。

『文五捕物絵図』は、従来の捕物帳の概念を変え、毎回、捕まえる側のレギュラー陣中心の話でなく、ゲストである捕えられる側の話が主軸で、あくまでも犯人側の人間的リアリティを追究。「張り込み」を原作にした「武州糸くり唄」では岩崎加根子と天知茂、「菊坂町路地裏」では南田洋子と高橋悦史、「献上御神事太鼓」では島田正吾と緒形拳、「突風」では山田五十鈴と中村翫右衛門がゲスト出演しています。

主役の文五には竹脇無我が予定されていましたが松竹に断られ、次に栗塚旭に交渉しますが、『俺は用心棒』の撮影に入っており断念。それで、大工の三次役で出演が決まっていた杉良太郎に白羽の矢が当たります。歌手として売れず、俳優として東京12チャンネル(現:テレビ東京)の『燃えよ剣』(1966年1月14日~4月2日放送)の沖田総司役でレギュラー出演したものの、杉としては実感がわかないうちに放送終了。「俳優として再出発するのだったら、大工役よりも主役のほうがいい。ぜひ、文五役をやらせてほしい」と頼みこんだそうです。容姿が時代劇向きであったこと、意欲的に取り組む姿勢などに好感が持たれたことなどから、杉は主役の座を獲得。スタート時は満足に衣装もつけられなかった杉でしたが、積極的に発声やセリフ回し、殺陣の指導をうけ、終わる頃には時代劇スターとしての魅力な俳優になっていました。NHK大河『竜馬がゆく』で時代劇初出演した高橋英樹がテレビ時代劇のトップスターになっていったように、杉良太郎もテレビ時代劇のトップスターになっていくのです。画像は、杉良太郎と原作者の松本清張。

そして、私にとって、このドラマを印象深いものにしているのに、冨田勲のテーマ音楽があります。若い岡っ引きが、はちきれるように跳ね回っている感じのダイナミックで軽快な曲は、私の大好きなテーマ曲のひとつで~す。

ちなみに、『人形佐七捕物帳』『池田大助捕物帳』についてはココヘ⇒人形佐七に池田大助 | 懐古趣味親爺のブログ (ameblo.jp)