映画のサザエさん(1) | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

長谷川町子の『サザエさん』といえば、今(2022年6月現在)でもフジテレビ系列で放送している日曜夜6時30分のアニメが一般的ですが、江利チエミが主演した東宝のシリーズが忘れられません。1956年から61年にかけて全部で10本作られており、リアルタイムでは2~3本しか観ていないのですが、強く印象に残っています。東宝作品の前に1948年と50年に各一本作られています(前者はマキノ製作・松竹配給、後者は東洋スタジオ製作・大映配給)が、話題になりませんでした。

そそっかしくて失敗ばかりしているが明るく朗らかなサザエさんを江利チエミが好演し、サザエさん=江利チエミというくらいピッタシのキャラ。メインストーリーにサザエさん一家の4コマ漫画的ギャグを入れ、夢想シーンで江利チエミの歌を聞かせるという構成はバラエティのノリで、ヒットシリーズになりました。ちなみにサザエさん一家の、藤原釜足の父・波平、清川虹子の母・フネ、小泉博のマスオさんはシリーズ通して変更ありませんでしたが、弟・カツオと妹・ワカメは途中で子役が交代しています。

『サザエさん』(1956年/監督:青柳信雄)

高校を卒業した後、家事手伝いをしていたサザエさん(江利チエミ)は、友人のキミ子(若山セツ子)の紹介で、出版社で働くことになりますが同じビル内にある山高商事へ間違って入り、フグ田マスオ(小泉博)と知り合います。出版社は小説家(花菱アチャコ)の原稿取りに失敗して1日でクビ。マスオさんの紹介で、今度は探偵社に勤めます。山中老人(柳家金語楼)が持って来たノリスケ(仲代達矢)の見合い相手がノリスケの素行依頼にやってきてサザエさんが調査開始。ノリスケはサザエさんの親友ミチコ(青山京子)と恋仲であることがわかり、見合いをつぶします。サザエさんもマスオさんに恋心が芽生え……

仲代達矢のノリスケというのが見ものでしたね。カツオは小畑やすしで、ワカメは松島トモ子です。

『続サザエさん』(1957年/監督:青柳信雄)

同窓会で友人たちが結婚してノロケ話ばかりを聞かされたサザエさんは、マスオさんが忘れられません。サザエさんが胸の内をマスオさんに打ち明けるとマスオさんも同じ気持ち。北海道から上京する母親にマスオさんはサザエさんを紹介することにしますが……

カツオのいたずらに、ワカメの勘違い、サザエのお転婆ぶりに振りまわされる母と父、それに下宿人のノリオ(藤木悠)が加わってサザエさん一家の4コマ漫画的ギャグが展開します。夢想シーンには江利チエミの歌ね。前作ではダークダックスが近所の店員役でしたが、三河屋の三吉(由利徹)に代表される店員役は脱線トリオ(他に南利明・八波むとし)に代わり、ダークダックスのバックコーラスはなし。隣家に小説家の伊佐阪難物(三木のり平)が越してきて、アニメでも御馴染みのキャラが揃ってきました。

『サザエさんの青春』(1957年/監督:青柳信雄)

山中老人の仲人でマスオさんとの婚約が決まったサザエさんは花嫁修業をはじめます。お母さんに代わって一家の家事をするものの失敗ばかり。ノリスケ君とミチ子さんは結婚して赤ちゃんが生まれ、サザエさんも育児の勉強。家計が自分の失敗で赤字となったサザエさんはデパートのパートタイマーになります。偶然、お父さんの会社の専務(益田喜頓)夫人に親切にしたことから専務の息子(江原達治)と見合いする羽目になり……

この作品からカラーになり、江利チエミとダークダックスが歌っていた主題歌も変わり、江利チエミのソロに。カツオ役も小畑やすしから白田肇に代わりました。

『サザエさんの婚約旅行』(1958年/監督:青柳信夫)

祖父の33回忌に父に代わって九州・若松の伯父さん(坂東蓑助=8代目三津五郎)のところへ行くことになったサザエさんは福岡で単身赴任している婚約者のマスオさんに逢えるので大喜び。夏休みということでカツオがお供についてきます。法事は失敗ばかりで、大阪の叔母さん(浪花千恵子)から行儀作法の修行を命じられます。休暇を取ったマスオさんと北九州旅行をするのですが、マスオさんの下宿先の娘・悦子(安西郷子)と出会い、その親しい態度にサザエさんはヤキモキ。旅行を終えて見送りに来たマスオさんから大阪転勤のことを告げられたサザエさんは大阪の叔母さんのところで花嫁修業をします。何かと失敗の多いサザエさんですが、叔母さんの娘・ユリ子(環三千世)と恋人(山田真二)が結ばれるのを手伝ったりして……

この作品よりスタンダードからワイド(東宝スコープ)になりました。4コマ漫画的ギャグと江利チエミの歌で物語が展開しますが、若松→長崎→雲仙→佐世保→唐津→福岡→大阪の名所案内を兼ねた観光映画になっています。若戸大橋は完成しておらず、道路も殆どが未舗装。蒸気機関車が走り、九州まで一昼夜かかった時代で、観客は映画を見て観光気分に浸ったんですな。

映画に出てくる大阪の叔母さん(波平の妹)の息子がノリスケで、他にサザエさんの家に下宿している大学生のノリオ(藤木悠)と受験勉強中のノリキチ(頭師正明)がいます。叔母さんの主人が花菱アチャコです。

『サザエさんの結婚』(1959年/監督:青柳信雄)

父と母が銀婚式の祝いで日光へ旅行に行ったサザエさんの留守宅へ大阪の叔母さん夫婦が訪ねてきます。サザエさんの家に下宿している息子のノリオの様子を見に来たのね。ノリオは学友のハマ子(横山道代)とラブラブで学生結婚するつもりです。大反対する叔母さん夫婦とノリオをサザエさんが巧く調停。大阪に転勤になっているマスオさんが、社長(志村喬)の息子(平田昭彦)と結婚する友人の悦子(安西郷子)の披露宴に出席するために東京に来ます。サザエさんはマスオさんの東京転勤のことを聞くために、ノリオの後の下宿人・平目スナ子(雪村いづみ)と人間ドックで入院している社長と直談判。マスオさんの東京本社勤務が決まり、サザエさんはマスオさんと晴れて結婚へ……

ワカメ役が松島トモ子から猿若久美恵に替わりました。雪村いづみが東宝のニューフェースという役どころで、東宝スタジオでのミュージカルシーンがあります。加東大介や司葉子が本人役でカメオ出演ね。ラストの結婚披露パーティーのシーンではこれまでの作品に登場した伊佐阪先生の三木のり平や山田真二たちが出演、賑やかな顔ぶれになっていま~す。