おトラさん | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

柳家金語楼のキャラクターが、主人公のおトラさんのイメージとピッタリ一致して大人気となったテレビドラマ(KR=現TBSで、1956年4月6日~59年10月25日放送)が『おトラさん』です。原作は西川辰美の4コマ漫画ですが、金語楼が有崎勉のペンネームでドラマ化しました。

おトラさん(柳家金語楼)は、奥様の馬子(水之也晴美)が日野江家に嫁いだ時に一緒にやってきた女中で、身体の弱かった奥様に代わって何もかも一人で切り回し、今では日野江家の主のような存在です。子どものトリ江(川田孝子)やタツオ(日吉としやす)は実の親のように慕い、御主人の牛三(有島一郎)もおトラさんには頭があがりません。お豆(小桜京子)やおヤエ(若水ヤエ子)たち近所の女中仲間や、焼き芋屋の長さん(柳沢真一)たち商店の御用聞き連中のリーダー格でもあります。カエルを見ると引き付けをおこす癖がありますが、いつも明るく元気です。アメリカの“ニューズウィーク”誌に和製メードドラマとして紹介され、話題になったこともあるんですよ。

映画の方は、東宝で1957年から58年にかけて小田基義監督で、全部で6本製作されています。

『おトラさん』(1957年・東宝/監督:小田基義)

おトラさんは、テレビ局に入社したトリ江のことが心配で、弁当を届ける口実でテレビ局を訪問して大騒ぎ。しかし、“瓢箪から駒”で新番組が企画され、そこでもおトラさんは大活躍。それを見ていた小西得郎さんが、おトラさんの縁談を持ってきます。周りの強い勧めもあって嫁ぐことを決意した留守中に、おトラさんの妹・こトラ(平凡太郎)なる女性が現れて……

トリ江のテレビ局勤務と、おトラさんの縁談というストーリーを、4コマ漫画に近いショート・コントで繋いでいく構成になっています。回想シーンで、おトラさんの初恋相手として天津敏が出演していますよ。

『おトラさんのホームラン』(1958年・東宝/監督:小田基義)

空き巣に入られて、しょげているおトラさんは、新聞配達の少年と知り合います。少年は病気の母親のために新聞配達をして働いているんですな。そのため、修学旅行に行くことができない少年のためにおトラさん一肌脱ぐことになり……

物語構成は前作と同じで、シリーズ共通です。親孝行な新聞少年の美談に懐かしさを感じます。前作に続いて、小西得郎さんがゲスト出演。小西さんが野球解説者ということを知っているのは、現在では70歳以上の人になるかな。小西さんの野球解説は話芸になっていましたね。「何と言いましょうか、打ちも打ったり、捕りも捕ったりとでも言うのでしょうか……」小西ブシは、野球を観る楽しさを満喫させてくれました。

『花ざかりおトラさん』(1958年・東宝/監督:小田基義)

焼き芋屋の長さんの家の二階に美人の小唄の師匠(坪内美永子)が引っ越してきます。彼女が日野江家の御主人・牛三のお妾という噂が流れ……

昭和30年代前半までは貸間が一般的だったんです。プライバシー云々なんて言っていたら生きていけない時代ね。皆が助け合って生活する時代。鬱陶しいことも多かったですが、懐かしく思い出されるのは、精神的豊かさが今よりあったからじゃないですかね。

『おトラさんのお化け騒動』(1958年・東宝/監督:小田基義)

郷里の潮来からおトラさんへ、父親の33回忌の電報がきます。久しぶりに郷里に戻ったおトラさんは日本舞踊の先生と間違われ……

本作品からシネスコになりました。住職になる左卜全の怪演と、脱線トリオ(由利徹・南利明・八波むと志)の三人が笑わせてくれます。

『おトラさんの公休日』(1958年・東宝/監督:小田基義)

おトラさんの働きすぎを心配した牛三と馬子は、おトラさんに公休日を与えます。しぶしぶ了承したおトラさんは、女中仲間と東京見物に出発。おトラさんは途中と仲間と離れ離れになり、自転車屋で働く孤児と知り合います。不景気で自転車屋を辞めなきゃならないという少年のために、おトラさんは一肌脱ぐことになり……

1958年は、それまでの神武景気が終わってなべ底不況になった年です。弱者から切り捨てられたのね。前作に続いて東京見物に来た潮来の高校生役で脱線トリオが出演して、暗い世相を吹き飛ばす笑いを見せてくれます。

『おトラさん大繁盛』(1958年・東宝/監督:小田基義)

トリ江が若い男(佐伯徹)と親しくしているのを心配したおトラさんは、こっそり女中仲間と後をつけます。その若い男はトリ江の友人・妙子(河内桃子)の恋人で、妙子の父親(小川虎之助)が結婚に反対しているので、相談にのっていたのね。おトラさんは、二人の結婚を認めさせようと妙子の父親に会いに行きますが……

シリーズ最終作。柳沢真一に代わって藤村有弘がホットドッグ屋で登場したのと、八波むと志に代わって渥美清が由利徹・南利明とトリオを形成しています。人気の出てきた八波むと志が単独で仕事をすることが多くなって、まだ売れていなかった渥美清がピンチヒッターとして出演した感じです。それと、天津敏が猪ノ原村の木こり役で出演。第1作目と違ってセリフがありましたよ。こんなのを見つけるのも楽しいものです。

昭和30年代前半の東京の風景や生活に郷愁を感じま~す。