七色仮面 | 懐古趣味親爺のブログ

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幼少期(1950年代)から成人期(1970年代)までの私の記憶に残っているものを網羅。

『七色仮面』は、NET(現:テレビ朝日)系列で1959年6月3日から60年6月30日まで放送された東映が製作したテレビ映画です。原作は『月光仮面』の川内康範。映画版『月光仮面』を製作した東映が新たな連続テレビ映画の企画を川内に依頼し、当時片岡千恵蔵の人気シリーズだった“七つの顔の男”をモチーフにして作り上げました。川内の仏教思想をとりいれ、七色仮面は菩薩像をモデルにした仮面になっています。七色に輝くのは人間にとって最も大切な、智・仁・愛・力・徳・忍・義の七つの心を表しているんですよ。

高らかな笑いとともに七色仮面は現れ、牧師・ピエロ・異国人などに姿を変えて悪人たちを愚弄し、パッと消えて別の場所に現れる。銃弾を浴びても平気の平左。「七色仮面は不死身だ!」の一言で片づけて、二挺拳銃が火をふきますが殺すことはせず、相手の拳銃をはじきとばすだけ。「おぼえていろ!」と言って逃げる悪人を追いかけず、悪人たちに反省の機会を与えるんですな。

七色仮面の正体は、警察(山本警部)に協力して事件解決にあたる名探偵・蘭光太郎だと思われます。蘭光太郎も変装の名人だし、七色仮面と蘭光太郎は同時に現れませんからねェ。

『新・七色仮面』まで含めたエピソードは全部で7部。全7部のエピソードは、『コブラ仮面』『キングローズ』『レッドジャガー』『スリーエース』『龍虎の地図』『毒蜘蛛に手を出すな』『日本は狙われている』で、第4部までは風小僧と同様にブローアップ版のフィルムに編集して東映特別娯楽版として劇場公開されています。当然のことながら、漫画化もされ、一峰大二によって月刊誌『ぼくら』に連載されました。

「第1部:コブラ仮面」は、海賊コブラ(安藤三男)が自分を裏切って財宝を奪った裏切者への復讐と奪われた財宝を探す物語。不気味な蛇笛の音とともに殺人事件が発生します。財宝の隠し場所を互いが裏切らないように各人が分かれて情報をもっているため、コブラ仮面は裏切者と手を組んだり、裏切者同士が仲間割れをおこしたりと、子供向けドラマにしては複雑なストーリーになっています。七色仮面の変装(七変化)は、悪党たちをビックリさせるだけで、あまり意味はないのですが、子供たちにはそれが楽しかったのです。

「第2部:キングローズ」は、貨幣局の現金輸送車を強奪したキングローズの犯罪と正体を蘭光太郎と七色仮面があばく物語。第1部でコブラ仮面の罠にはまり、拳銃で撃たれた上に列車に轢かれて死んだと思われた蘭光太郎が金有左門(藤山竜一)の探偵事務所に現れます。「生きていたんですか」で皆納得ね。東京だけでなく、札幌に神戸、さらに香港と、地域的広がりをみせる物語展開で、七色仮面の移動手段は自ら操縦する自家用ジェット機ですぞ。

第1部に出ていた蘭光太郎の助手・大八少年(藤倉伸也)は登場せず、お役御免。新東宝映画などでアクの強い悪党ぶりを見せた大友純(謎の資産家役)がキングローズだと思わせて、資産家の執事(陶隆)がホンモノの首領だったという凝った内容でした。陶隆は、第1部ではせこい小悪党役だったので視聴者は騙されます。

「第3部:レッドジャガー」は、世界を経済面から支配しようとするレッドジャガー(沢彰謙)の他に、西側諜報機関シャドーライトや東側諜報機関ゴールデンアロー、右翼の大物といった様々な組織が入り乱れ、もつれにもつれた事件を蘭光太郎と七色仮面が解決する物語。悪党同士がつぶしあうので蘭光太郎と七色仮面が活躍する場面は少ないです。スパイものとしての面白さを狙ったんでしょうけどね。新人時代の曽根晴美、波多伸二、応蘭芳、八代万智子が出演しています。

「第4部:スリーエース」は、元特務機関員が戦時中に横領した金塊をめぐって発生する犯罪を七色仮面が解決する物語。蘭光太郎の乗った飛行機が時限爆弾で墜落、さらに二人の名探偵が殺されるという事件が起こります。金有探偵は川上記者(田口耕平)の紹介で葵(堀みどり)を助手にして、大富豪・姉小路実盛(曽根秀介)の交通事故死を調査。山本警部(河合絃司)の捜査で姉小路の死は殺害されたものわかります。姉小路の葬式の日に、隠し子だったという男(潮健児)や死んだ運転手の妹という女(岡田敏子)、屋敷をうかがう怪しい男(安藤三男)が現れます。安藤三男は蘭たち3人の探偵を殺したスペード仮面、潮健児は姉小路を脅迫していたダイヤ仮面、岡田敏子は姉小路の隠し資産を知るハート仮面。三人は、戦時中に姉小路がSG教会のダコタ神父(片山滉)と組んで隠匿した金塊を狙って協力します。姉小路の正体は元特務機関員で戦時中に横領した金塊のことがバレそうになり、スペード仮面を雇って3人の探偵を殺させたのですが、そのことをダイヤ仮面にかぎつけられたんですな。運転手と執事を殺し、自分も死んだことにして姿を消し、SG教会に隠れます。スペードとダイヤは姉小路の娘を誘拐、ハートはSG教会に潜入して金塊の在処を訊き出そうとしますが……

悪人たちの描写に重点を置きながら物語は展開し、神父やバタ屋などに変装して彼らの様子を探る七色仮面を見つけては襲うのですが、七色仮面の二挺拳銃の前に悪人たちはいつも退散。色仕掛けで悪党たちを仲間割れさせて金塊を独り占めしようとするハート仮面なんて大人向けキャラです。蘭光太郎(七色仮面なので当たり前だが)は死んでおらず、ラストに現れて事件の謎解きをするので~す。

新・七色仮面については、次回で……