おじいちゃん、おばあちゃんが入院した途端に急にボケて(痴呆のように見える)しまって、自分がどこにいるのか、あるいは今日が何月何日かさえもわからなくなってしまったっていう経験はないだろうか?
このような事はよくある事なのである。
いわゆるせん妄といわれるもので認知症になってしまったわけではなく元に戻るため安心してよい。
せん妄とは、あらゆる状況で発症しうる可逆的な注意と意識の障害を主症状とするもので以前説明した精神病の分類では①器質疾患というところに当てはまる。



器質疾患なのでどんな症状をとってもよい。
また安心していいといってもきちんとした対応をとらないと痛い目にあってしまう。
そもそも入院患者における高齢者のせん妄有病率は10~40%である。さらにせん妄を伴う入院患者の死亡率は25~33%と高い。

 せん妄の病態生理には不明な部分も多く、臨床徴候によって定義されたものであるため評価が難しい。主な基準としては①精神状態の日内変動が急激に出現し、変動制の経過をたどっている(急性発症と変動性の経過)②注意を集中し、維持・転導する能力の低下を認める(注意力の欠如)③首尾一貫しない無秩序な思考の証拠がある(無秩序な思考)④意識が清明・緊張・嗜眠など変動する(意識レベルの変化)の四点についてその有無を検討する。

診断をつけた後には直接な治療方法はないため環境的介入、身体的介入を行い改善をはかる。

せん妄を悪化しうる促進因子を低減するための環境的介入はスケジュールをボードに書いたり場所・時間・状況を伝えたりとなるべく現在の状況をはっきりと理解できるようにしてあげる事が大切である。

次に直接因子となる原疾患の治療のため身体的介入を行う。
せん妄は数ヶ月もの間持続することもあり、長期間持続し再発率も高い場合はその背景にある原因を十分治療できていない可能性があるために、その時々で評価を繰り返すことも重要である。
薬物によるものは見逃されやすいため注意が必要。

よくせん妄に対しては薬で眠らしてしまおうという対応がみられるがこれは最後の手段。
根本的解決にはならない。
アスペルガー症候群、これまた最近よく聞く言葉である。
巷では鉄道にものすごく詳しかったり秋葉原に通ったりしている人たちの事をアスペルガーっぽいねなどと言ったりする事をよく耳にする。

もともとは1944年、オーストリアの小児科医ハンス・アスペルガーによって「自閉的精神病質」と報告されたが当時はあまり注目されていなかった。
その後、1981年、イギリスの医師ローナ・ウィングがアスペルガー症候群の発見を紹介し、1990年代になり世界中で徐々に知られるようになった概念である。

それではこのアスペルガー症候群とはどのようなものなのだろうか。
しつこいようだが人間の認知の仕方を再びみてみよう。

ひとは物事を考えるときに4本のヤリをもっていると考えて欲しい。
この4本のヤリの考え方は非常に大事である。
この4本のヤリは何を表しているかというと何を考えているかである。
1本のヤリで「今日の夕飯の事を考え」
1本のヤリで「恋人の事を考え」
1本のヤリで「趣味の事を考え」
1本のヤリで「仕事の事を考え」と行っている。
これら4本のやりはバランスよく自分で使いこなしている。同時には1つの事しか考えないが人はこのような大体4つの事を自由に使い分け、切り替え可能である。

この考え方、アスペルガー症候群でいうとほぼ1本の太っいヤリだけで物事をみている状態と考えて欲しい。
境界性人格障害の際にのべた「2本ほどのバランスの悪い太いヤリ」と似ていると感じることであろう。
しかし大きな違いは2本ほどではなくほぼ1本であるという事と、バランスが悪く揺れる境界性人格障害の場合と異なりズンと安定しているという事の2点である。

この1本の太っいヤリだけだとどうなるかというと、次のような特徴をもつ。
まず1つの事に異様にこだわるようになる。
これは趣味であればひとつの事にもの凄く詳しくなるというメリットがあるのだ。
それゆえ最初のほうで述べた鉄道が好きだったり電気系に詳しかったりするのである。これはすごく大きなメリットでありそうでないいろいろと興味がいくヤリの持ち主にはなかなかマネできない芸当なのである。
ビルゲイツもこのアスペルガーなのではないかと言われているし、有名な哲学者ヴィトゲンシュタインもおそらくアスペルガーであろう。

次にヤリがバランスよく動かせないのでその場に合わせた対応が苦手であるといった特徴ももつ。
これは相手の空気を読めないなどと言われ本人も落ちこんでしまう場合が多々ある。
しかし本人が悪いのではないし、全く読めないのではないが1本の太いヤリを自由に動かす事はなかなか出来ないため時間もかかるしその場にそぐった発現が困難になってしまう。
本人は小さい頃から周りから少し疎外されているように思ってしまうため守りでひたすら丁寧にしゃべろうとする。つまり空気を読まず失礼になるよりも、丁寧になりすぎてしまえば怒られはしないと考えるのである。
それゆえ、アスペルガーの人たちの話し方はやたらと丁寧である場合が多いし少し不自然な敬語になる場合が多い。
それゆえ少し空気が読めないよね、何かオタクみたいといって仲間はずれにされてしまう場合がある。
そのような事から彼らはうつ病になってしまう場合が多い。

しかし彼らにすごく大きな才能や長所がある事を忘れてはならない。

摂食障害も比較的最近になり出てきている病気である。
一般的に痩せているほうがより良いとする社会風潮の影響を受けていると言われてる。
また、世界的には、2005年に拒食症で死去したモデルのアナ・カロリナ・レストンの事件も有名であろう。
命の危険をおかしてまだ痩せようとするのだろうかという疑問は自然と湧いてくる。
しかしことはそう単純ではないのである。
それでは摂食障害とはどのような病気なのだろうか。

摂食障害とは主に拒食、過食と両方の事を言うがそもそもこの2つにあまり明確な区別はできず、拒食からはじまって過食に移行していくパターンが多い。
そもそもこの摂食障害はどのような心理が働いているのだろうか。
体重が20kg台にも関わらず「もっと痩せたい」、「自分は太っている」と語る。
一見するとなぜそう思うのかわかりにくい部分が多い。

ここで「痩せ=美しい」という考えのみから摂食障害になるという考えは捨ててもらいたい。

彼・彼女らは「摂食障害で居続けようとする」という事がキーワードなのである。

極端な話、摂食障害とは自分で作り出せる病気なのである。
食事を取らない、痩せるという事を続けていくとそのうち肝障害が起こり白血球は減り、電解質のバランスは崩れと血液検査でも明らかな病気になってしまうのである。

私の知っている範囲内で自分で血液のバランスを崩す事はできない、そういう意味で自分で作り出せる病気なのである。

誤解をしてもらいたくない事はこれは病気ではない、自分で作り出せるから本人が悪いと言っているわけではない。後で述べるが一度なってしまうと自分でもなかなか抜け出せなくなる恐怖の病気なのである。

それでは、なぜこのように自分で作ってしまうのであろうか。
それは痩せる事にメリットがあるからである。
最初のきっかけは過剰なダイエットだったり芸能界やバレエやスケートなどのスポーツで痩せる必要があったりする場合もあるだろう。

そこで一度がくっと痩せた時に両親からすごく心配されるといった経験をする。
そうすると無意識のうちに痩せる事に対してポジティブな感情をもつ。

特に長女だったりこれまでしっかりしてきた人たちはここでこれまでには経験した事のない心地よさを感じるのである。
要するに甘え下手でしっかりものの子がなりやすいのである。

甘え方を知らなかった子が痩せる事で無意識に甘えるようになるパターンが多いのである。
無意識であるため本人も気づいていない。そこがまた厄介なのである。

そして厄介な事がもう1つある。

体重が減りすぎると脳が萎縮していくのである。

そうなるともう思考も回らなくなり、(これは私の予想だが)認知症のように何も考えずに

痩せる=いい事

という回路ができてしまうように感じる。

もうここまで来ると何度精神療法を行っても無駄なのである。

そしてさらに痩せるといった悪循環に陥るのである。
それゆえ単純に「モデルなどに憧れて痩せようとしているだけの病気」とみると死に至る病として取り返しのつかない事になってしまう。