今回はうつ病ってどういうものなのかといった事を説明する。

うつ病っていうと日本では非定型うつ病、新型うつ病など含め社会問題になっている病気なので知らない人はいないと思う。
そして他の精神疾患と比べ比較的どのような病気かも知られている。

言うまでもなく

「落ち込む病気」

である(具体的な診断方法は最後に述べる)。
しかし誰でも落ち込むし落ち込まない人なんていない。
それではこの落ち込むという事とうつ病という疾患ではどのように違うのだろうか。
まず、落ち込むという状態を説明する。

以前述べたヤリをここでまた思い出してもらいたい。

ひとは物事を考えるときに4本のヤリをもっていると考えて欲しい。
この4本のヤリの考え方は非常に大事である。
この4本のヤリは何を表しているかというと何を考えているかである。
1本のヤリで「今日の夕飯の事を考え」
1本のヤリで「恋人の事を考え」
1本のヤリで「趣味の事を考え」
1本のヤリで「仕事の事を考え」と行っている。
これら4本のやりはバランスよく自分で使いこなしている。同時には1つの事しか考えないが人はこのような大体4つの事を自由に使い分け、切り替え可能である。

これが人間の考え方と理解する。

それではここで失恋をした時の落ち込みを例に説明している。

このうつ状態では4本のヤリのひとつが失恋という不安な事に向かってしまっている状態なのだ。
ヤリが失恋してしまった事に向かってしまっているため他の事を考えられないのである。

これが気分が落ち込んでいる状態である。

しかし、このような場合失恋という場所にあるヤリを別のところに向けてやる事で解決する。
例えばやけ酒だったり他の趣味だったりといった感じである。


それがうつ状態ではどうなるのであろうか。
これはさっきの気分の落ち込みと違い4本のヤリともこの失恋という不安な事に突き刺さってしまい抜けない状態なのである。

これを解消するためにごはんを食べても趣味をしても何をしても抜けないのである。

抜けないので趣味をしても楽しくない、そこにヤリが向かないのである。
すべてのヤリが失恋に向かっておりそれゆえ生理現象にも向かわなくなるため食欲もない、おいしくもない、眠れない、性欲も出ないといった状態になる。

4本のヤリが熊手のようになってしまい抜けない。

これがうつ病の状態だと考えて欲しい。

最後に臨床の場面ではどのように診断するかというと下の5つ以上満たし、かつ(1)抑うつ気分または(2)興味または喜びの喪失のいずれかがある場合にそういう。

1.その人自身の訴えか、家族などの他者の観察によってしめされる。ほぼ1日中の抑うつの気分
2.ほとんど1日中またほとんど毎日のすべて、またすべての活動への興味、喜びの著しい減退
3・食事療法をしていないのに、著しい体重減少、あるいは体重増加、または毎日の食欲の落ち込みまたは増加
4.ほとんど毎日の不眠または睡眠過多
5.ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または制止
6.ほとんど毎日の易疲労性、または気力の減退
7.ほとんど毎日の無価値感、または過剰であるか不適切な罪責感
8・思考力や集中力の減退、または決断困難がほぼ毎日認められる
9・死についての反復思考、特別な計画はないが反復的な自殺念虜、自殺企図または自殺するためのはっきりとした計画


人間生きていると辛い事のほうが多いとはよく聞く言葉である。
あの徳川家康も「人生は重荷を背負っていくが如し」といった事は有名である。
心理学でも人間は悲しい、痛い、寂しい、辛いなどネガティブな事に対しては反応する感情はたくさんあるが、ポジティブな感情はあまりないとされている。
それも動物はネガティブな感情もち生きていく上で避けるものを敏感に察知しているといった事からも仕方のない事だろう。
しかし、やはりポジティブな感情のほうが求めたいものである。
ただこのポジティブな感情を追求しすぎると依存といった形になってしまう。
アルコールや薬物をはじめ過食嘔吐もある種の依存である。

そもそもポジティブな感情はどのようにして生じるのであろうか。
専門的には報酬系としてまとめられている。
この報酬系、ドーパミンが司っていると言われているが実際はもう少し複雑である。

少し専門的に説明してみる。

ドーパミンは期待された報酬と現実に得られた報酬との差を信号として伝えている。
この機能は腹側被蓋野(VTA)のドーパミン作動性ニューロンにあるのだが、3つのタイプの型に分かれている。
I型(52%)は、報酬予測誤差符号化の理論と合致する、報酬を予測させ、報酬に一過性興奮を示した。
残りの半数は、結果の価値によってポジティブに調節されるもの(II型;31%)と、ネガティブに調節されるもの(III型;18%)とに分かれる。
I型のニューロンの活動は、実際の結果に対し感受性があり、ここにドーパミン作動性ニューロンは含まれる。
II型とIII型の活動は、報酬の予測で決まっており、GABA作動性ニューロンはすべてII型であった。
この事から、VTAのGABA作動性ニューロンが、期待される報酬の信号を伝えドーパミン作動性ニューロンが計算していると考えられる。

アルコールやベンゾジアゼピン系の薬物がなぜ依存に関連しているかみえてくるのではないだろうか。
依存のある薬物の主な効果はVTAのGABA作動性ニューロンの阻害である。もしVTAのGABAニューロンが報酬予測誤差の計算に関係していたら、依存薬物によるGABA作動性ニューロンの阻害は薬がどういうものかわかっていても報酬予測誤差が正常に機能せず薬物摂取の強化に行き着いてしまう。

GABAは最近巷でも気分が安定すると言われ話題の物質である。
ベンゾジアゼピンが抗不安薬という名前であるという事からもそれは事実であろう。
しかし、このように報酬系だけみるとそれを狂わしてしまう危険性が考えられる。

幻聴というとすぐに統合失調症なんではないかって結びつける傾向がある。
しかし幻聴そのものは以前「妄想について2」で述べたようにシュナイダーの一級症状には入っておらず(対話型幻聴のみ)必ずしも統合失調症といえるわけではない。
しかし、実際の臨床の場でも、幻聴がある=統合失調症ではないか?と考えられそのように診断が下ってしまう場合が多い。
これで特に困る問題としては統合失調症と診断が下ると抗精神病薬が半永久的に始まってしまう。
薬を飲み続ける事は副作用のリスクもあるのでそんなに嬉しい事ではない。

体験した人がいるならばわかるかもしれないが幻聴は必ずしも統合失調症だけでは起こらない。
よく起こりやすいもので言えばアスペルガー症候群、境界性人格障害、解離性障害でも起こりやすい。
頻度は減るがそれ以外のひと、何も病気のない人にも起こりうる。

僕の経験では例えば、摂食障害の方で大きくストレスがかかった際に一過性に幻聴がでた例などもある。

それではなぜこのような事が起きるのだろうか。
これはこれまで「かみくだいて理解する~」で述べてきた項目の中で共通点を考えるとなんとなく理解できる。

統合失調症の項では、「周りからの情報が一気に流れ込んでくる状態」と説明した。
アスペルガー症候群の項では、「ひとつの事に対して拘りが強い事」を太いヤリと例えてと説明した。
境界性人格障害の項では、「ふたつぐらいの事に対して不安定で強い拘り」という事を太い2本ぐらいのヤリと説明した。

これらに共通することは、「狭い範囲内の情報を多く入手する」という事である。

横断面だけでみるとこれらの症状は似ている。というのもどれも1点ではひとつの事について強く情報を得ているという点で共通しているからである。
(そうなるとどうして幻聴が生じるのかはわかっていない事も多いがひとつの事に拘りすぎるとこれまでとは異なった認知機能が働きまわりの声や自分の考えなどがあたかも他人がしゃべっているように聞こえてくるのではないかと予想されている。)

これだけみると、ひとつの事に対しての強い情報という事であるとなにも病気のない人にも起こりうる事がわかる。

それを裏付ける研究もある。オランダでは病院にかかっている人以外にも幻聴があるかどうかを調査した研究があり一定の数それを認めるという結果が示されている。

この研究では病院にかかる人とかからない人の違いはポジティヴな幻聴が生じている人は病院にかからないといった結果を報告している。

結論からいうと幻聴とは誰にでも起こる可能性がありそれだけで統合失調症と診断してはいけない。それゆえ横断面のみでなく生育歴なども含め総合的に判断しなければならない。
もちろん、統合失調症に特徴的な幻聴の形式もあるのだがそれはまた改めて述べる事とする。