この結婚はどうせ
うまくいかない
【28話】
レビュー考察
イネスの想い


この話は、カッセルとの子作りの話から、イネスの毒母との話、エミリアーノの話、ラウルの雇用…など盛りだくさんです。パートごとに考察していきます。



【28話】

昨夜の激しい長時間の行為により、身体がボロボロのイネス。


カッセルによると、昨日は軍の訓練をサボったらしく、気力・体力・精力が有り余っていたそうで、今後は気をつけると。


あれでも普段は、セーブしていたのか…と愕然とするイネス。


イネスの計画では、カッセルが拒否して別れるシナリオのため、求められるとイネスには拒否権は無いし、子供を産む必要もある。


頻度を減らすためには、事前に何かルールを作っておく必要があり。


そこでイネスは、他の貴族のように『子作り』に最適な妊娠しやすい日だけ性交することを提案します。


これは、他の話でも、婚前契約で決めておく、とかよくありますよね。


貴族の結婚において、性交は、愛とか欲望よりも、後継者づくりが最優先なんでしょうね。


イネスは、そういう貴族ルールを分かり切った上で提案しているけれど、カッセルは、『子ども?』と驚いたような顔です。


さらにカッセルは『君は最善を尽くす気がないのか。手を抜くことばかり考えている』


『君も楽しんでいるだろう?昨日は特に』と。


結婚前の会話もそうだけど、カッセルはこういうイネスとの問答では、無意識に強いですよね。


基本的にカッセルは、貴族らしくないような、体裁とか気にしない、嘘の無いストレートな発言をするので、
別に攻撃的なわけでもないんだけど、貴族的な価値観で生きていて、しかも言えない隠し事だらけのイネスには反論できないような、率直なパワーがあるような気がしますね。

結局、人間て、正直に本音で生きることが、本当の心の強さのような気がしますね。

しかも率直だけでなく、イネスをからかったり、皮肉っぽいようなやり取りもできるので、イネスの扱いをわかっているというか、頭に柔軟性があるというか、人として器が大きいんでしょうね。



結局、減らしたいイネスと、足りないカッセルの双方の意見を汲んで、毎日一回で済ませると、カッセルは決めてしまいます。


結局は毎日することが、ルールになってしまい…


イネスに制服の襟を正してもらうと、『手伝ってくれてありがとう』とイネスの頭に親密なキスを残して、カッセルは出勤していきました。


こんな展開マズイ…と、脱力するイネス。


この辺、イネスには悪いけど、読者的にはとても面白い展開ですよね。


                        *


午後になり、イネスの荷物をカッセルの実家エスポーサ城に運んできたラウルが現れます。


そしてペレスから、イネスの毒母の手紙を預かってきます。


前世で母が自殺未遂を起こす前に、子供達への恨みを込めて書いた『遺書』を見てからというもの、イネスは母の手紙は読まずに燃やすことにしていたそうです。


皇太子妃時代、流産した娘に暴言を吐いたりした過去の恨みもあり。


今世では6歳で『回帰』してからは、母の干渉を拒絶し、暴れたり、髪を美しく整えようとすると、自分にハサミを向けて脅迫したり…


それから母は、直接の干渉はあきらめて、家の中でも『手紙』を書いて躾けてくるようになったそうです。


今の感覚からすると、虐待だなと思いますが、基本的人権なんて認められていない昔だと、もっと酷かったんでしょうね。


しかも、貴族社会のルール的には、必ずしもイネスの母の考え方が間違っているとは世間も捉えないのではないかと思います。


ただ同じことをやるのでも、ちょっとイネスの母は神経質で強制的だったような気がします。


イネスも、それも母は母なりの『愛』であると気付いてしまった時からは、無駄な抵抗はせず、無視するのみにしたそうで。


今世でなんとか逆らえたのも、2回の前世での失敗を経験したイネスだからこそ、そんな大胆な抵抗ができたのだと思います。


相変わらず、子供を産むことを強要する内容の手紙だったようで、朝までは子供を作る気まんまんだったのに、一気に、子供が欲しくなくなってしまうイネス。



誰でも強要されすぎて育つと、内容云々よりも条件反射のように、母の言うこととは全部、反抗してやりたいような気持ちになりますが、イネスは気持ちを抑えて、冷静に『計画』をすすめることを決意します。


イネスは人生3回目だけあって、本当に人生を冷静に俯瞰して見ていますよね。



何度人生をやり直しても、基本的な家族構成が変わるわけではないので、一回でもうんざりなのに、人生を巻き戻すたびに毎回、母のキツイ干渉を受けるなんて、母の存在はイネスの中では、繰り返される『呪い』のようなものかもしれませんね。


                        *


ラウルが、イネスが匿名でスポンサーとして後援している数名の画家達の近況を報告します。


最後に画家『エミリアーノ』の近況が報告されます。


ビルバオの大司教の目にとまって、ビルバオ大聖堂の修復に関わるよう依頼が来ているとのこと。


エミリアーノとの関係を知らないラウルがその名前を事務的に言うだけで、その時だけはエミリアーノが本当に生きていることを実感することができるイネス。


そうですよね。


今回の人生では、イネスの生活圏で無名の画家である『エミリアーノ』なんて人名が自然に話題に上るわけもないで。


前回の人生で結婚していたことなんて、誰にも言えないし、誰も知るわけのない夢の中のストーリーみたいなもので。



原作によると、今世では、会うことはできないけれど、17歳のエミリアーノを無視することはできず、善良で世渡りの下手なエミリアーノを助けるために、カモフラージュの他の何人かの画家とともに、匿名でスポンサーになることを決意したそうです。


ビルバオの大司教と画商、エミリアーノを繋いだのは、偶然ではなかったようで。


しかし、ここまでで。


エミリアーノは前世と違って、豊かな人生を送るだろうし、イネスはイネスで1人で平坦な余生を生きる。


イネスは壊れないし、誰も壊さないことに決めたので。



たぶんエミリアーノには前世の記憶がないはずだし、万一、覚えていても、会ったらどうなるのか、わからないですしね。


どちらにしても合わないのが正解であろうと。


とにかく何かあって、また再び不幸な死をとげることになれば、『回帰』することになるし、とにかく『平坦』な余生を送り静かに死にたいと。



私達は、ここまでのイネスのエミリアーノに関する心情をよく知らないから、『昔のことなんか忘れて、カッセルと幸せになればいいのに』って気楽に思ってしまうけれど。


イネスにとっては、もう恋愛はエミリアーノと果たしたし、その甘い結果が、どんな最期を迎えたかも知ってるし、『幸せな人生』なんて贅沢は言わないから、ただ平坦に静かに『余生』を生きて死にたいだけなんでしょうね。


カッセルは、その『平坦』な人生を送るために、一時的に借りた花のようなもので、ちゃんと元通りにして返すから、赦してください、と。 


カッセルもどうか、一時的にイヤイヤ結婚させられた、義務的な妻のことなど忘れて、本来求める自分の自由な人生を生きて、幸せになってくださいと。


『誰の人生も壊さない』その謙虚な想いに触れると涙が出てきます。


まるで、出家する前に、髪をおろしながら、静かに手を合わせている源氏物語のお姫様のような境地ですよ。


この境地にいるイネスに、どうやって本当に『生きる』ことを、イネス・ヴァレスティナとして生きる喜びを思い出させることができるのか、これからカッセルの勝負どころです。


カッセルには記憶がないから、いつもコメディモードで、イネスの想いなどおかまいなしに進めていける脳筋さがあるから、そこがイネスの固い心をほぐしていく、陽のパワーとなることでしょう。


                     *


そしてイネスは、ラウルを屋敷の『従者』として雇うことをカッセルに伝えます。


私が調べると『従者』と言うのは、主人が直接、雇用契約をするスタッフであり、『執事』が雇って雇用管理するスタッフとは立場が違って、ある意味、主人の指示には従うけど、執事の指示にはしたがわなくても良い立場だそうです。


だからこそ、それなりの経験・実績がいるようで、カッセルが反対しているのは、嫉妬だけじゃなくて、そう言う意味もあるようです。


カッセルは、ラウルが初めて屋敷に来た時、イネスの過去の情夫じゃないかと疑ってましたが、今では、単なる『ペット』みたいな存在だとはわかっています。


それでも、とにかく、年の近い男がイネスのそばにベッタリなんて許せないし、行動の全てが気になる。


そこで執事のアルフォンソに、ラウルの監視を命じます。




今日は1話でこんなに長くなりましたが、イネスの想いというのは、深く考えるほどに、多方面に渡って、いろいろ複雑ですよね。


漫画では、短い言葉と絵だけで全てを物語っていますが、読者には推し量れないイネスの気持ちが表れているような、いろんな想像の余地があるような、文学的、詩的な漫画ですよね。



…という感じで、今日はここまで。


では、次回またお会いしましょう。



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