この結婚はどうせ
うまくいかない
【テーマ考察】
『2週間の結婚』
計画を徹底解説 

※このブログはネタバレありなので、閲覧ご注意ください。

 

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※記事を誤削除したため再掲記事です。


今日は、カッセルが実行した『2週間の結婚』という、とてつもない計画について語っていきたいと思います。 


モデルになっている18世紀スペインの歴史的な常識を調べるほどに、カッセルの非常識かつ大胆な計画の全貌が見えてくる… 


原作者はこれらを綿密に調べて、それを応用して、このストーリーを作っていったんでしょうね。


 何気ない場面一つでも、そこには重要な意味があったりして、これを知ってから漫画を読み返すと、カッセルを見る目がちょっと変わるかも。 



 ​17年間の婚約 

皇后の決定により、6歳で婚約した2人。


婚約時には、莫大な持参金や領地などの細かい契約が交わされ、その契約を結婚するまで更新していきます。 


2人は17歳で結婚する予定が、カッセルの士官学校進学や軍役により契約が延期されましたが、こうしたケースはあり得ることだったようです。 


しかし、カッセルは嫡男であり、必ずしも軍に入る必要性も無く、その間、遊びまくっていたことから、世間では『結婚から逃げるために入隊した放蕩息子』くらいに思われていました。 


​突然の求婚と『軍事作戦』 

カッセルは結婚を思い立った後、ヴァレスティナ公爵に求婚の手紙を送りますが、2週間後の結婚ですから、公爵の返事を待つまでも無く、『決定事項』として様々な計画を一方的にしていたはずです。 


 通常、大貴族の結婚は数ヶ月から1年ほど準備に時間がかかるそうで、ましてや皇后の指示による国家レベルの結婚ですから、早めに言えば、軍も休暇を融通してくれるはずでした。


 しかし、軍と言うのは非常事態に備える組織ですから、数カ月前に申請していないと無理なようで、しかも長い休暇を取った直後の、突然の思いつきのような結婚計画には、軍も2週間しか捻出できなかったんでしょう。


 権力を使えばなんとかなったかもしれませんが、カッセルはそれに従い、ある意味それを利用して、敢えて2週間で全てを行うことにしたのです。 


それは、イネスを自分の妻として手元に置くための、最短確実な『軍事作戦』だったのです。 


ヴァレスティナ側も、納得いかないけど、『国家の軍務のため』と言われれば反論できないし、イネスの年齢的にもこれ以上先延ばしにできないのはわかっていたから、渋々この『スピード婚』に応じたのでしょう。


 ​全ての手続きをぶっちぎる 

当時のカトリック社会の結婚では、結婚前に最低でも3週間ほどの公示をしないと結婚式をできなかったそうで、それを短縮するには皇室レベルから司教に手を回して『特別許可証』を得る必要があったようです。 


カッセルは『皇后の甥』と言う立場をフル活用して、教会に手を回して数週間の手続きを1日に短縮したと思われます。 


そして皇室や他の貴族達への報告や招待の手順やらを、全部省略して、軍の伝令のように『決定事項なんで、よろしく。軍務のためです』くらいで押し切ったのでしょう。 


後で会った時に、その美しい顔でお詫びすれば、それでおさまるでしょうしね。


 そして皇室とグランデス・デ・オルテガ17家門のみで行われた結婚式も、時間が無くて仕方なく小規模になったとも言えますが、裏を返すと『そのメンバーだけに挨拶しとけば、それでいいよね』と言う、最高の傲慢さの現れでもあるのです。


 普通の貴族だと、いろいろお世話になった人とか、これからひいきにしてもらいたい人とか、力を持ってそうな人とかに挨拶しないわけにはいかないからです。 


そして、本来は、結婚式後も数週間をかけて、何度も場を設けて、たくさんの貴族たちに挨拶をするのが慣例らしいのですが、それらを全てぶっちぎって、婚礼の翌々日から軍に出勤と言う超スピード。


 皇室と公爵家、それ以外には何もする必要がないと言う、自分の立場を完全に自覚した上での、カッセルの戦略的計画なのです。 ​


家臣達の苦労 

突然の跡取りの結婚ですから、エスカランテ家もヴァレスティナ家も大騒ぎで準備を進めたでしょうが、準備をする家臣達の苦労も相当なものだったでしょう。


 これは『グランデ』と言う立場の大貴族・自治権を持った王のような大領主でなければ、生産・加工・流通の全てを抑えて、突貫工事で進めることはできなかったことでしょう。 


領民たちの熱い忠誠と、トップダウンの徹底した連携ネットワーク、これらがあって初めて成立する計画です。


 しかし、カッセルはそれさえも仕組みを知り尽くしているから『やれば、できなくはない』と判断したんでしょう。


 カッセルは軍人ですから、熱血スポーツ少年の『やれば、できる!!』とは違って、客観的に『できる』と。


 その指示を各方面に伝える、アルフォンソの苦労はとんでも無かったことでしょう。 


その上、カルステラの家の引越しまで加わり。


 放蕩息子カッセルの暴挙とも言える強引な決定によって、エスカランテ・ヴァレスティナの使用人達全員が、両公爵の指示の下、結集して不眠不休で働いたのでしょう。


 ​婚礼衣装もお古?

 突然の結婚式で、イネスのウェディングドレスや披露宴のパーティードレスも、27年前のお母さんのお古をきることになったそうで。 


流行やセンスに敏感なイネス的には『時代遅れ』と感じる豪華な衣装を『家門の伝統だ』と言うことで体裁を繕ったわけですが、カッセルの衣装も、たぶん家の伝統的な衣装のお直しだったはずです。


 彼らの婚礼衣装というのは、宝石とか、宝物レベルの高級なものだったようで、代々保管して引き継ぐことも珍しくなく。


 財力のある彼らなら新調できるのですが、当時の流通や技術では、その短時間で最高級の新品を作ることは不可能だったようです。 


そもそもが宝物のような衣装ですから、『家門の伝統を守って』と言われれば、時代遅れだろうと、彼らに文句を言える人など誰もいません。


 軍服ベースのカッセルの衣装の方が短時間でできるようですが、結婚式の白い衣装の細かいアラベスク模様などは、現代でも2週間で仕立てることは難しいようで、家伝統の儀礼服を専属の仕立て屋が不眠不休でお直しした可能性が高いです。


 披露宴で着ていた紺色の軍服のような衣装は、軍の『大礼装』と言われる最高位の正装なようで、当時は軍服もフルオーダーで自前で準備していたそうなので、こういう華やかな場のための特別なものを事前に用意していたのかもしれません。


 ​肩掛け上着の位置の違い 

カッセルの結婚式の白い衣装と、披露宴の紺の衣装では、肩掛けのマントのような上着(ペリースと言うらしい)の位置が左右違うのにお気づきでしょうか? 


漫画の読者コメントでは、『作画の人が左右を書き間違えたの?』などと言われていましたが、Cheong-gwa先生の名誉のため、ちゃんと説明しておきますね。


 本来、この上着は、軍人が剣を右手で抜きやすいように、右側を空ける意味で、左肩のみに羽織ったようで、左側で盾のように使うことも想定されている、軍人の利便性を考えた正装だそう。 


で、結婚式のような司教の前では、戦わない神聖な場での恭順の意味で、右側にかけるようです。 


一方、結婚後、正式な夫となり、一人前の男として、騎士として妻を守るために剣を抜く決意のために、左肩にかけるそうです。


 また、新婦との立ち位置や、ダンスで新婦を右手でホールドしたり、ワインを持つなど、社交的な目的の場合でも左肩にかけるのだそうです。


 諸説あるようですが、いずれにしても、作画の間違いではなく、むしろ、先生が、原作にもない情報をそこまで綿密に調べて、漫画を書かれているんだな、と脱帽ですね。 


そして、このペリースに飾られた煌めく勲章の数々が、結婚式用の『飾り』などではない、カッセルが実力で勝ち取った戦功を物語る、軍人としての最高の盛装になるわけです。 


ヴァレスティナでの披露宴

 スペインの歴史的には、エスカランテの嫡男・次期公爵の結婚式ですから、エスカランテ家で披露宴も初夜も行うところですが、 原作によると、この作品の世界観では、新婦の実家で行う慣例という設定になっています。 


そして、娘が生まれた時に植えた葡萄で作ったワインを振る舞う伝統があるようです。


 その中でも、新郎新婦の飲むワインは、その中で最高級のもので、他のゲストのものとは違います。 


2人に注いで、余った一杯を、参加者の中で最も地位の高い人や、特別お世話になった人に分けることもあるようです。


 皇太子オスカルがイネスのグラスに残ったそのワインを飲もうとしますが、カッセルが『妻のグラスはダメです』と阻止して残りを全部自分が飲み干したのは、妻の尊厳を守るとともに、結婚の聖域を守る騎士道精神が発揮された瞬間でもあるのです。


 そういう夫婦の神聖な領域のルールを知っていて、なお、奪おうとするオスカルには、信仰心も倫理観のカケラも無く、皇太子として臣下のものを奪う傲慢さと、カッセルからイネスを奪おうとする魂胆がより浮き彫りになりますね。 ​


イネスを連れ去る計画

 通常の大貴族の結婚では、結婚前に、2人の新居の場所なども両家で取り決めて合意して契約するのだそうです。


 婚家の親と領地に同居したり、どちらかの領地の城を与えたり、など。 


イネスの場合は、おそらく結婚後はエスカランテの領地エスポーサ城で暮らす契約になっていて、イネス自身も、両親もそのつもりだったのでしょう。 


通常の軍人の結婚は、夫のみが軍の赴任地で暮らし、妻は領地を守ったり、首都で社交界の立場を守ったりする役割があります。


 ましてや、次期公爵夫人として社交界を率いるはずのイネスが、赴任地の田舎に暮らすなど、両家でも考えられなかったことでしょう。


 しかも、ヴァレスティナの娘が住むとは思えない、木造の小さな家。


 親達の反対も、契約違反になることもわかった上で、『求婚の手紙を送った時から、その計画は決まっていた』とのうのうと言うわけですから、カッセルは相当な策士です。 


求婚と同時に、イネスのためにカルステラの新居を用意しながら、カッセルは綿密な『イネス強奪計画』を練っていたのです。 


カッセルは、初夜の前に、イネスを待って1人で寝室にいる時間に『無事にこの夜が終わり、イネスをエスカランテの家系図に載せ、ヴァレスティナ公爵の手の届かないところへ連れ去る。2人っきりでいられるカルステラの新居へ』なんてことを考えています。


 これは、とりあえず、エスポーサで暮らすと嘘の結婚契約をして、結婚式をして、初夜まで終わらせて、ヴァレスティナ公爵に後戻りできない既成事実を作った上で、約束違いのカルステラに、イネスを連れ去るという大胆不敵な計画なんです。


 まるで、従順な婿であるかのように、ヴァレスティナ邸で、初夜を迎え、よく朝、イネスの両親と朝食をとり、最後に堂々と、カルステラへとイネスを強奪していったわけです。 


イネス自身にも、両親にも、考える隙を与えず、何の手も打てないように、そこまで秘密裏にことを運んだわけです。 


この独壇場、ちょっと凄くないですか? 


いや、周りは迷惑なんですけどね。


 遊び人の放蕩息子と侮っていたカッセルの作戦に、してやられたヴァレスティナ公爵は、悔しがりながらも、ちょっとカッセルの手強さを見直したかもしれません。 


​カッセルの本心 

そこまでの計画と行動力、普段は使わない、自分のスペックの全てをこの日のために自覚的に使い切ったカッセル。


 イネスを手に入れるために、あらゆる手段を使ったカッセルは、結婚後はイネスのためにあらゆる手段を使ってイネスを守る男になっています。 


カルステラの新居も、自分だけが幸せになるためではなく、この家の『魔法』がイネスの心を開いて、イネス自身を幸せにしてくれることを願ったのでしょう。


 カッセルの目から見ても、イネスが社交界や家や名誉や権力よりも、そこから抜け出した『自由』のようなものを求めていることは、なんとなくわかっていたのでしょう。


 カルステラがカッセルを、家や皇室とのしがらみから自由にしたように、きっとイネスも、カルステラのその小さな素朴な家を気にいり、自由に暮らせるはずだという、無意識の確信、潜在意識に眠る遠い記憶が、彼を突き動かしたのでしょう。


 『俺が幸せにしてやる』なんてカッコつけた無責任な言葉よりも、例え、今は好きではない結婚相手でも、イネスが自由に呼吸し、自分らしく生きられる環境そのものを提供することで、自然に心を通わせていくことを願ったのです。 


それが、独占欲や執着も混じりつつも、自分1人のためには決してやらない、カッセルなりの無意識の愛の行動だったのではないでしょうか。


 カルステラについた夜のバルコニーでの会話の場面。


『計画なら十分に立てたさ』

『結婚式も無事に終わり君もここにいる。特に問題はないと思うが?』 


カッセルの短い言葉が、2週間を完璧に計画し、思いを実現させた男の満足と考えれば、この男の肝の太さと器の大きさみたいなものがわかりますよね。 


イネスの計画を打ち破れるのは、このカッセルの、本心に率直な、ハートからの情熱と、それを実現する冷静さ、重戦車並みのパワーと無敵感、イネスの細かさを無視する鈍感さだけだと思うんですね。

 


…ということで、今日はここまで。

 次回またお会いしましょう。

 

 

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